01.


「おい、みょうじ!そっちの原稿どうなってんだ?」

「あともうちょっとで終わる……、と。できた! はいどうぞ。」

「さんきゅ」

「他になんか私でもできそうなことある?」

「あー、じゃあこの記事のチェック頼むわ。訂正あったら朱で印つけといて。」

「了解」

 その日は瀞霊廷通信の締切りが目前ということもあって九番隊は朝から蜂の巣をつついたかのようだった。自分の連載に加えて、隊員達が担当したコーナーや特集の最終チェック、他隊の隊長格からの原稿回収。やらなければいけないことが次から次へと出てくる。
 これはもう、徹夜覚悟かもしれないと思った時だった。これ以上ないほどの最悪のタイミング。これがあと一週間遅ければ。思わず自分が死神だということを忘れて神を呪いたくなるそんな時に限って現世への出動要請が下るのだ。

「こんなクソ忙しい時に……!」

 ガシガシと頭を掻き誰を向かわせるか思考を巡らす。俺自身が出向いてさっさと片付けてしまうのが一番手っ取り早いが、原稿へのGOサインはすべて俺に一任されているのでそうするわけにもいかない。

「私が行こうか? 担当分は大分目処がついてるし、その程度の虚なら私一人でこなせると思うけど。」

 俺がさっき渡した仕事はどうした、と思いきや、再び俺の近くにきたみょうじの手にはしっかりと朱が書き込まれた原稿が握られていた。院生の頃からこいつは容量よくなんだってこなす。流石に実技では俺が勝っていたが、筆記となると、いつも一緒にサボっていたはずなのにみょうじはいつだって俺よりも上位に名を連ねていた。

「でも本当に一人で大丈夫か?」

「なーに言ってんの、これでも一応第三席だよ。安心して任せなさい!」

 ぽん、とみょうじは自分の胸を叩くと、俺の返事を聞く前に執務室を後にした。そういえば久しくみょうじと二人で呑んでいない。この仕事がひと段落ついたら、呑みに連れてってやろう、そんなことを考えながら俺はまた机に向かった。










 今思えばもっと、何か他の手があったのかもしれない。少なくとも一人で行かせるべきではなかった。臨時とはいえ隊の中の長である俺の落ち度だ。



 でも、それでも、本当に、これ以上ないほど、最悪の、タイミング。

 そう思わずにはいられない。そしてそのせいにしてしまう自分がどうしようもなく情けなかった。






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