02.


 みょうじが負傷して運ばれた、という連絡を受けたのは隊舎がやっと落ち着きを取り戻しはじめた夕刻だった。頭で理解するよりも先に体が動いた。部下に各々自分の原稿を確認したら俺の許可なしに次へ進むようにと告げ、四番隊隊舎へと急ぐ。瞬歩で移動するその僅かの間すら、もどかしく思える。

「九番隊の檜佐木だ。みょうじなまえがどこに運ばれたか分かるか?」

「みょうじさんですね、ちょっと待ってください−−……」

 四番隊に着くや否や、近くを歩いていた隊員を捕まえる。その隊員に案内された部屋は小さな個室で、中央に据え付けられたベッドにみょうじが横たわっているのが分かった。

「幸い命に別状はないみたいです。ただ、出血が酷かったので今日いっぱいは目を覚まさないかもしれませんね。」

「そうか。」

「それでは僕はこれで。」

「あぁ、手間かけて悪かったな。」

 自分を案内した隊員が去ったのを確認してからゆっくりとみょうじのもとへと歩み寄る。腕や足だけでなく頭にも包帯が巻かれている。寝ている顔があまりにも綺麗で、もうこのまま起きないのではないかと考えてしまうくらいだ。

「ごめんな、みょうじ」

 大事な人は自分の手で守るとあの日から決めたのに。結局俺はあの日からなにも成長できていやしない。あとになって悔やむのでは意味がないと知っている。忙しかった、なんて言い訳にもならない。

 手を握ると、繋いだ手のひらから確かに温もりが感じられ、安堵する。まだ、取り返しがつかないわけじゃない。

「生きててくれて、ありがとう。」

 目が覚めたらずっと伝えたかった想いを打ち明けよう。同期という居心地のよさに甘えてしまっていて、長年言い出せずにいたけれど。

 日が沈み、月明かりが差し込んでくる部屋で一人、心に決めた。






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