■my selfishness
「――燈馬君はさ、自分を我儘だと思う?」
 なんの脈絡もなく唐突に…と言えば、まったくもってその通りだったと思う。そんな私を燈馬君は思いっきり不審な目で見たあと、すぐに人あたりの良さそうな笑みを浮かべつつ、その笑顔とは裏腹な毒を吐いてくる。
「水原さんは自分にとても正直ですよね」
 表情だけを見ればとても爽やかだ。にこにこ無邪気に、という表現がしっくりくるような顔で、そうやって含みを持たせた言い方をするのは、いかがなものだろうか。
「なんだよ、それ! 私が我儘だって言いたいわけ?」
「僕は『正直ですね』と答えただけで、そんなこと言ってないですよ。でも、そう解釈するってことは、水原さんには心当たりがあるってことですよね」
 ムカッとした私が反論するのを見越していたらしく、しれっとした顔でそう返してきた。ついでにぼそりと続ける。
「自覚があるなら、少し控えた方がいいんじゃないですか?」
 ったく、ああ言えばこう言う。
 こいつは大抵の場合、いらぬ一言が多いのだ。『人のこと言えないだろ』と言われればそれまでだけど、そこはそれとして正当なる制裁は必要だと思う。
「燈馬君、知ってる? 口は禍のもとって言うよね〜」
 言いながら私も負けじと笑顔で鉄槌を下す。
「った…! そうやってすぐに暴力に訴えるのはどうかと思います」
 頭を擦りながら、不満げな視線を投げ掛けてくるのをスルーしていると、いつもの真面目な調子に返って続けた。
「誰しも我儘な部分はあるはずだし、そもそも、なにをもって我儘というのか曖昧じゃないですか。他人に迷惑をかけてまで我を通すなら、それは我儘だと言えるかもしれませんが、考えていたとしても、それを他人に要求したり外に出したりしなければ我儘とは言えないでしょ。思考そのものに関しては自由なんですから」
「そうだけど……って、そういう尺度の話をしたいわけじゃなくって!」
 なんと言えばいいのか、うまい言葉が見つからず言葉に詰まっていると、燈馬君はふうっと溜息を吐き、空を見上げた。
「まァ……思考に関してだけ捉えれば、僕も我儘だとは思いますよ――我儘だから、僕は此処にいるんだと思います」
 さらっとそう言ったかと思えば、ドキッとするくらい無邪気な子供のように微笑む。
「我儘だから、ここにいる?」
 燈馬君の言わんとすることがさっぱり分からず首を傾げていると、一体なにが面白いのかくすくすと肩を揺らした。
「それは、僕だけが知っていればいいんです」



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