ほのかな想い

そのナビは、僕よりも背が高いナビです。
青色の、熱斗君のナビです。
優しくて、しっかりしてて、太陽みたいにあったかいナビです。

――すごく、強いナビです。

「ロックマン!僕とネットバトルしてくださいです!」

ロックマンは、きょとんとした表情で僕を見たです。
僕はそんなロックマンから目を反らすことなく、ロックマンの瞳を見続けたです。

「うん、いいよ。じゃあ今熱斗君に…」
「熱斗君は呼ばなくていいです!」
「えっ?」

おかしい事を言ってるのは分かってるです。
ネットバトルはオペレーターとナビが力を合わせてするものです。
そのオペレーターを、呼ばなくていいって言ったです。
ロックマンはきっと、おかしく思ってるです。

「僕とネットバトルです!ロックマン!」
「う…うん…?」
「行くです!ロックマン!――ブリザード!」

僕の先制攻撃を素早く華麗に避けるロックマン。
分かってたです。
ロックマンに避けられてしまう事なんて。
この後、どんな技を出しても、ロックマンにはダメージを与えられないって事もです。

――そして、このネットバトルに負けるって事もです。

「――ロックバスター!」
「わぁぁっ!」

ログアウト寸前のヒットポイントになったです。
ロックマンは、それ以上攻撃をしなかったです。

――ロックマンは、すごく強いナビです。
たくさんの問題を熱斗君と解決してきたです。

そんなロックマンに、僕なんかが敵うわけがないです。
――僕には、ロックマンみたいな力がないです。

「勝負ありだね、アイスマン」
「うう…ま…まだ、です」
「これ以上戦ったらアイスマンはログアウトせざるを得なくなるよ。…一体どうしたの?
アイスマンからネットバトルを申し込んでくるなんて」

――強くなりたかったです。
ロックマンと同じくらい強くなって。

「……ロックマンと、僕は……」
「え?」
「…ロックマン!ネットバトルありがとうです!」
「あ、アイスマン!?」

プラグアウトして、PETに戻るです。
あの先の事を、言うわけにはいかなかったからです。

「…アイスマン、良かったの?」

僕を見て声をかけてくれる、僕のオペレーターの透くん。
僕は透くんを見て頷いて、背中を向けたです。

「…ロックマンには、たくさんのナビが付いてるです。僕は、その中の一人ってだけです」
「…アイスマン」
「それに、僕にはあきちゃんがいるです!透くん、僕インターネットシティに行くです!」
「う、うん。分かったよ」

――ロックマンと、一緒に戦いたかったです。
ロックマンの、助けになりたかったです。

それだけです。

――それ以上は、僕なんかが望んじゃいけないんです。

2015/05/15

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