氷ロボットの内なる想い


「これで最後よ」
「はい」
「ありがとう、ロールちゃん」

ロールから出来上がった食事を受け取ると、アイス、そしてこの研究所でお手伝い用として生まれたロックマンは、居間のテーブルへとそれを運んだ。
色取り取りの食事が、まるで花畑のように美しく、そして香りが食欲を誘った。

ロックマンはお手伝い用ではあるが、同時に幾度にも渡って世界の平和を守ってきた存在でもある。
彼は、ブルースというライトが最初に生み出したロボットと結ばれていた。
ブルースは中々研究所に現れないが、ロックはそれを理解しており、皆が知らない間に愛を育んでいたりした。

「エレキ…遅いわね。ちょっと見てくるわ」

ロールはアイスとロックにそう告げると、居間を後にした。
食事が出来たことを知らせに行って欲しいとエレキに頼んだのだが、中々来ないからだ。

「…あの…ロック様」
「どうしたの?アイス」

居間に残ったアイスとロック。
アイスは今なら話しやすそうだとロックに声をかけた。
顔を傾げる彼に、続く言葉を告げる。

「…結婚する前、ロック様は結婚に憧れたでありますか?」
「え……?」

アイスの質問に、ロックは驚きを隠せなかった。
タイムがエレキにした質問にそれは似ていて。
反応も似ていた。

「…うん、憧れたよ。結婚したら、ブルースとずっと一緒にいられるんだって」
「ロック様…」
「でも、結婚してもブルースは忙しそうで中々一緒に居られない」
「……」

ロックがそう言いながら浮かべた表情がアイスにはとても寂しそうに見えた。
しかしそれが、嬉しそうな表情に変わったのは直ぐの事だった。

「でもね、僕はブルースと結婚出来て幸せだって思ってる。
結婚する前よりブルースは僕の所に来てくれるようになって、もっと…ブルースの事好きになった。
離れててもね、心が傍に居てくれてるって強く感じるようになったんだ」

頬を林檎のように赤らめ、幸せそうな笑顔でそう話してくれたロックを見て、アイスも頬を赤らめて幸せそうな表情を見せていた。

「ロック様…幸せなのでありますね。良かったであります」
「アイスもそろそろ…タイムともっと幸せにならないとだね?」
「ロ、ロック様っ!」

更に頬を赤らめてあたふたするアイスを見て、ロックはにこにこと笑った。
アイスは恥ずかしそうで、でも嬉しそうだった。

「何話してんだ?」

ガチャッと扉が開いた音がしたかと思えば、次々と現れた兄弟達。
ファイヤーの言葉に、アイスとロックは声を揃えて何でもない、と返した。
顔を傾げるファイヤーだったが、飯だ〜!と子供のようにはしゃぐなりテーブルへと向かった。

「アイス…何話してたんだ?」

同じ質問をしたのは最後に入ってきたタイムだった。
アイスは驚きながら、高鳴るコアを感じつつ声を出す。

「な、なんでもないであります…!」
「そう、か…?
「はっ、はいっ」

顔がこれ以上ないくらいに赤く染まったアイスを見て、タイムは顔を傾げる。
そんな二人を見ていたロックは、小声で頑張って、と口にしてテーブルへと向かった。
アイスはタイムの手を握ると、食べましょう、と言いながらテーブルへと引っ張る。
タイムは話していた内容が気になって仕方がなかったが、食事を目にすると空腹だと言うことを強く感じ、アイスと隣同士で座って食事を開始するのだった。

2015/4/4

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