どんまい、サスケ! 番外編

私が各地を放浪するため旅立ったのは数年前。
自来也の弟子であり、四代目火影でもある波風ミナトの息子、ナルトに粗方の修行を終えた後でだ。
まだアカデミーに通う前の幼い子供だとは思えないほどの吸収力でどんどんと力を付けていったナルト。
さすが四代目火影の息子とでも言うべきか・・・・・
いや、実質奴が火影として働いていた期間はわずかで、子が生まれてからはほぼ無理やり育休をもぎ取っていたが・・・

しかし時が流れるのは早い。
あんなに幼かったナルトもアカデミーを卒業して中忍になったらしい。
字からも窺えるナルトの元気な様子。
思わず口元が綻ぶのは、純粋に懐いてくれたナルトの事があの親馬鹿程では無いが可愛く感じるせいだろうか・・・
届けられた手紙を丁寧にたたんで懐にしまう。
さてなんて返事を書くかと文を用意しようとしたその時・・・


「・・・何の用だ?」

「綱手様に三代目火影より緊急の文を預かって参りました」


振り向けば、何度か見たことがある火影の護衛をしている男の姿があった。
元暗部所属なだけあって実力は確からしく、気配を察知するまでに時間がかかった。


「緊急?私にか?」

「はい。よろしければこの場で目を通して頂ければと・・・」


差し出された文に僅かに眉根を寄せる。
内容に全く心当たりが無かったからだ。
里に何かあったにしては、先ほど送られてきたナルトの文には何も書かれていなかったが・・・
それでもいつまでも受け取らないわけにもいかず、差し出された文を手に取ると素早く開いて中へと目を通す。
しかし私はその文の一行目で思わず固まった。
文の出だしにはこう書かれていたからだ。

『 わしはもう疲れた・・・・・ 』

・・・まるで遺書のような出だしだ。
思わず顔が引き攣る。
それでも何とか内容をそのまま読み進めた。
・・・簡単に内容をまとめれば、もう限界だから私に五代目火影になってほしいというものだった。
四代目火影が育休をもぎ取っているため、代理として火影の職に再びつくことになった三代目火影。
そうか、そう言えば代理をしてもう既に10年以上経つんだったな・・・
初めの頃は何度か四代目火影に復帰するよう言っていたらしいが、「何を言っているんですか!少し目を離している間にも僕の子はどんどん愛くるしく成長しているんですよ!それを見逃せと仰るんですか?!」と鬼気迫る様子で言われて引き下がるしかなかったらしい。
まぁ親馬鹿を極め過ぎて既に別の何かになっているような気がする奴だったからな・・・
自来也が娘のナルと共に旅に出た際も大変な目にあったのを鮮明に覚えている。
「僕の子が誘拐された!!!」と大騒ぎだったからな・・・
あの時は本当に里が滅びるかと思った。
とにかく、そんな状態の四代目火影に復帰を求めるなど諦めた方が早い。
三代目火影もそう悟って頑張っていたらしいが、どうやらついに限界が来たらしい・・・

先日行われた中忍試験。
そこでどうやらナルとナルトが何かやらかしたらしい。
異例の中忍試験やり直しだとか、木の葉病院はフル稼働しっぱなしだとか、涙ながらに綴られている。
もう無理だ、限界だ、早くわしをラクにしてくれと、最後にはまるで自殺志願者のような事まで書かれてあった。
これは相当、いやこれ以上無いほど追い詰められているようだ。
そんな思わず同情したくなるような内容が始終綴られた文は全部で28枚。
所々滲んでいるのは堪え切れなかった涙だろうか?
読み終わり顔を上げれば、護衛である男が深々と頭を下げている姿があった。


「綱手様、お願い致します。私には、私にはもうこれ以上あのような三代目火影の姿は見ていられませぬ!」


元暗部で、感情を殺す事に長けているはずの男の言葉が震えていた。
私は小さく溜息を吐くと、ナルトへの手紙の返事は直接言おうと男に了承の意を告げたのだった・・・
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