どんまい、サスケ! 番外編

異例の試験のやり直しを終えて中忍になった俺。
五代目火影の就任なんてものもあり、最近はずっとバタバタしていた。
それでも今日は任務の一つも入ってなく、これがアスマなりの気遣いなんだろうといつもより遅い時間に起床して欠伸を噛み締める。
朝飯も食って、予定も無いしのんびりするかとボンヤリしていれば親父から鹿の様子を見てきてくれと頼まれた。
口先ではメンドクセーと言ってみたが、確かに最近鹿達に会いに行っていなかった気がする。
予定も無い事だし久しぶりに行ってみるか・・・
そう思って腰を上げ玄関を開けて一歩外に出たが、そこで俺は動きを止める事になった。


「・・・・・・・何してんだ、サスケ」


玄関の外。
詳しく言えば家に面した道。
そこにサスケは膝をつき項垂れていた。


「頼みがある」

「いや、それより顔上げろ。つーか立て。
俺が変な目で見られるだろ」



少ないとは言え、全く人通りが無い道ではない。
そんな所でガクッと膝をつく人間を前にしていれば、俺が奇異な目で見られるのは確実だ。
俺は何とかサスケを立たせて、話を聞く体勢に持って行く。


「で、頼みって何だよ?」

「・・・薬の配合を学びたい」

「はぁ?」


思いもしなかった言葉に、思わず間抜けな声が出る。
確かに奈良家には現存の薬の効果の調査や新薬を開発するための薬剤研究所がある。
鹿の角から作った薬も良く効くと言われ、木の葉で薬と言えばまず名が上がるのは奈良家だ。
だから薬について学びたいとうちに来るのは理解できる。
だが何故サスケが?
そんな疑問が伝わったのか、サスケが口を開く。


「俺は医療忍者になるために綱手に弟子入りをした。
医療忍術は学び始めたんだが、薬なんかの知識に関しては五代目火影になったばかりで時間が取れないらしい。
独学にも限度があるし、何より実物を目にしないと話しにならない。
そこで・・・」

「俺の所に来たってわけか・・・」


話を引き継ぐように言えば、サスケは静かに頷いた。
様子を見れば本気さは窺える。
医療忍者の重要性は分かっているつもりだし、話をすれば親父も了承するだろう。
しかし、サスケが医療忍者を目指しているとは知らなかった。
・・・・・・・まぁあのナルと同じ班だしな。
動機はだいたい想像出来る。
そう言えば、先日火影室へ書類を提出しに行った奴が妙な事を言っていたな。
確か、『泣きそうな顔で魚に手をかざしてる奴がいた』とか何とか・・・
きっとそれはサスケの事だったんだろうと、ちょっと目頭が熱くなった。


「分かった。親父には俺から話しといてやるよ」

「本当か?!」

「あぁ。暇な時に研究所の方に行ってくれ。
親父にも時間がある時顔出すよう頼んどくからよ」

「っ!この礼はいつか必ずする!!!」


噛み締めるようにそう言われ、どこまで追い詰められていたんだと少し憐れになった。
このままではこの場で泣かれかねない。
そう思った俺はとりあえず話を変えようと、先日ナルから聞いた話を思い出して口を開く。


「そう言えばこの前イタチさんが帰って来たんだってな。
久しぶりの再会はどうだったんだ?」


話題の選択を誤ったと気付いたのは、サスケが目をこれでもかというほど見開きこっちを見た時だった・・・


「・・・イタチの事を、うちはの真実を知ってたのか?」

あーーー・・・・・
あぁ、ほら俺ってナルやナルトと昔からの知り合いだからよ」


サスケの様子からだと、本当に最近までうちは一族はうちはイタチによって滅ぼされたと思っていたらしい。


「俺はちょっと人より頭の回転が速くてよ、それをナルに気に入られて昔から暗部の暗号解読とか任される事があったんだよ。
で、その関係上イタチさんとも面識があったんだ」

「・・・・・・・他にも知ってる奴がいるのか?」

「他?
・・・・・あぁ、一つ上にテンテンって女がいるだろ?
中忍試験の時にヒナタの兄貴と同じ班だったお団子頭の。
あいつも知ってるぜ。
なんせ暗部で使う暗器は全部あいつの実家を通して仕入れてるからな」

「・・・・・・・・」


・・・完全に話題の選択を間違えたな。
衝撃を受けた様子で固まるサスケに、俺は悪い事をしたと溜息を吐いた。
しかし、まさか本当に何も聞かされてないとは思っていなかったんだ。
これはもう下手な事は言えね〜なとサスケに視線を戻した瞬間・・・


「邪魔だしーーーーー!!!!」


・・・・・サスケが吹っ飛んだ。

それはもう見事に頭部を蹴り飛ばされ、為す術も無く吹き飛んだ。
しかし蹴られる間際にチャクラで微かにだが防除していたように見える。
あれはもう意識的に行なったものではなく完全に反射的だった。
殺気を感知する力と、それに対する咄嗟の防除力は既に中忍レベルを遥かに超えている。
そもそも、サスケは俺達同期の中での実力はかなりのものだ。
本人は何故か完全に自信喪失、自分は駄目だと思い込んでいる節があるが・・・
まぁ常に一緒にいるのが常人離れした実力を持つナルやナルトなのだから仕方がないと言えるのかもしれない。


「・・・・・で、お前達は何しに来たんだ?」


サスケを吹っ飛ばした人物ナルと、その後をついてやってきたナルトに問いかける。


「シカに会いに来たってばよ!」


笑顔で答えるナルトの横では、サスケを指差しながら「プップー!道の真ん中に突っ立ってるとか超迷惑だしー!」とかニヤニヤ笑っているナルがいた。
いつも思うが見た目はともかく中身は正反対の双子だ。
俺は溜息を吐きたくなるのを何とか堪えてナルトへと視線を向ける。


「どうした?何か俺に用事か?」

「これ持って来たってばよ!!!」


そう言ってナルトが差し出してきたのは、甘栗甘と書かれた紙に包まれた大量の団子。
十班でもよく行く甘味処の人気商品だ。


「どうしたんだこれ?」

「今日はシカの誕生日だってばよ!
だからそのお祝いに買って来たってば!」

「ナー君がわざわざ早起きして買ったものだしー!
盛大に感謝して、心して食べるべきだしーーー!!!」


どうやら、この大量の団子は俺への誕生日祝いらしい。
そしてナルのナルト贔屓は昔からなので気にしない。


「ありがとよ、ナルト、ナル」

「誕生日おめでとうだってば、シカ!」

「ん、来年までしっかり生きるといいよ!」


とりあえず礼を言えば、返ってくる笑顔。
そして鹿達の様子を見に行くのはまた後にしようと決める。
今は、この大量の団子を久しぶりに同期を集めて食べるのもいいかもしれない。
きっと、ナルトとナルもそのつもりでこれだけの量を持って来たんだろう。
気絶したサスケを「大丈夫だってばサスケ?」と運ぶナルト。
「一人でこけただけだし平気っしょー」と笑うナル。
そんな二人の後をついて歩きながら、たまにはこういう誕生日も悪くねーかもしんねーなと俺は小さく苦笑を浮べた。


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