愛し的、年末

2009年の年末夢です!
連載【愛しの夢の旅】の設定です・・・が、甘くもなんとも無い(;゚∇゚)
ヒロインちゃんとお友達しか出てきませんが、それでもよければどうぞ・・・





「大掃除だ」




「・・・・・へ?」







いきなりの言葉に、私は声の聞こえてきた方を振り返った。


この部屋にいるのは私とリオ。


私は何も言ってないし、ドアの開閉音もしていない。


だからもちろん振り返った先にはリオがいた。



しかしその表情は大真面目そのもので、声をかけるのを一瞬戸惑うほどだ・・・







「・・・えっと、リオさん?

今何と仰いました?」




「大掃除だ大掃除。

マイ、大掃除するぞ!」




「・・・・・ここ、宿何ですけど」







現在、エルリック兄弟と旅をしている私達。


当然旅から旅への根無し草だ。


この宿にだって先ほどチェックインしたばかり。


そもそも・・・








「何で急に大掃除?」








部屋はいたって綺麗そのもの。


掃除しないと汚くて寝れないって事はない。


首を傾げる私に、リオはズイッと携帯をつきつけて来た。







「見ろ」




「・・・・・ブラハ、ですね。可愛い」






携帯の待ち受けには、リザさんが飼っている犬のブラハが映し出されていた。



しかもどアップ・・・



ここまでアップだと一瞬何が映っているのか分からなかった。


だからブラハだということが分かっただけでも褒められていいと思う。


でも私の答えにリオは不服そうに首を振った。







「違うだろ!

いや、ブラハは可愛いが・・・

うちの言いたいのは日付だ!!!」




「日付?

・・・・・・・・・・あぁ、なるほど」








12月31日。


年末も年末。


今年は最高に素敵な一年でした!









「って事で大掃除だ!」




「えぇ〜〜〜!!!」







確かに年末には新年を新たな気持ちで始めるって事で大掃除するけど・・・







「さっきも言ったけど、ここ宿だよ?!

もう十分綺麗だよ!!!」







私達がわざわざ掃除するまでも無いと思う。


そもそも何日かすれば次の町に行って、また新しい宿に泊まるんだ。


ある意味常に新しい気持ちだよ。







「ここはさ、今年一年にあった素敵で甘〜い記憶を振り返らない?」




「パス!

そりゃー腹立つ事思い出して、エドをぶん殴りに行ってもいいならそれでもいいぞ?」




「・・・大掃除しましょう、リオさん」




「だよな!」







満足そうに頷くリオにこっそり溜め息をつく。


思い出してみれば、毎年大掃除には妙に気合を入れるリオだ。


こうなったら諦める方が早い・・・








「で、大掃除ってどこを掃除するの?

何度も言うけどここ宿だよ?」







綺麗な部屋は、見回してみても特別掃除が必要そうな所は無い。


後するとすればどこになるだろう?



荷物の整理とか?



でもそもそも荷物は必要最低限の物しかないし、宿を移るたびに整理しているから散らかっていない。


特に、先ほどチェックインしたばかりの今は・・・








「ねぇ〜リオ?

どこを掃除するつもり?」







首を傾げる私に、リオはニィッと笑った。


そして短く答えを口にする。









「この中だよ」




「・・・えっ?!」


















「・・・リオさーーーん!

これ絶対に終わらないよ〜」







量が多過ぎて、思わず泣きつくようにリオへと視線を向ける。


しかしリオは、私には目もくれず作業を続ける。









「お前が馬鹿みたいに増やし過ぎたせいだろ?

諦めるな。

やってたらいつかは終わる。」




「そのいつかが来る前に新年が来てしまうと思うんですけどー!」




「ならいっその事全部捨てちまえ!

綺麗サッパリ、しかも軽い気持ちで新たな年を迎えられるぞ?」




「それはイヤーーー!!!

そもそも捨てる物なんて無いよ!

私にとってはどれも貴重なものなの!!!」




「うちからして見ればどれも似たような物にしか見えねーけどな・・・」









呆れたようなリオの視線がこちらへと向けられる。




私とリオの手には・・・・・・・・携帯。




今私達は携帯で撮った写真の整理をしている。


しかし・・・








「やっぱりどれも捨てる事なんて出来ないよ!

どのエドもカッコ良くて可愛くて、ほんと永久保存レベルなんだから!!!」




「その永久保存レベルの写真の数を言ってみろ!

今日中に整理しきれねーって泣く位あるんだろーが!!

しかもどれもこれもエドばっかりでよ・・・

いー加減似たようなもんは捨てちまえ!!!!!」




「似てるけど微妙にどれも違うの!

コート着てるか着てないかとか、顔の向きとか光のあたり具合とか!」




「何だよ光のあたり具合って!?

んなの気にしてるから捨てれねーんだよ!

うちみたいに割り切って捨ててみろよ!」




「って、リオさん?!

さっきから消してるの全部大佐の写真ばっかりじゃ・・・」




「あ?

あーーーだってこれ、あいつが勝手に写ってきたやつなんだぜ?

うちがブラハ撮ろうとしたら急に割り込んできやがって・・・・・

・・・・・・全部消してやる」








カチカチと凄い勢いで、何の迷いも無く消去を繰り返すリオ。


その姿に、必死に写真に写ったのだろう大佐の努力を思うと少し泣けてきた。








「・・・・・リオさん、来年の抱負は『大佐にもう少し優しく接する』にしたらいいと思うよ?」




「・・・・・マイが『ちょっとした事でエドエド騒がねぇ』にするなら考えてやってもいいぜ?」







数秒の沈黙・・・


そしてお互い同時に溜め息をついた。







「「 まぁ来年もこんな調子でヨロシク 」」






お互い、もっと現実性のある来年の抱負を考えようと思いつつ写真の整理を再開した・・・



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