痛、と小さく呟いた君は、僅かに顔を歪めて人差し指を舐めていた。
どうしたの、と尋ねると、どうやら包丁で指を切ってしまったらしい。確かに、見せてもらったそれには赤い雫が滴っていた。
だからあれほど気をつけてと言ったのに。
そして、ああ、やはり彼の血は赤いのか、と思い知らされた。
ガリ、と試しに自らの皮膚を破ってみるも、やはり出て来る雫は彼のように赤いものではなく、ただひたすらに透明なものだった。
彼の指を手に取り、代わりに指を舐めてみる。
こうして少しずつでも彼の血を舐めていれば、私の血も赤くなるだろうか。
彼と同じものが、私の中にも流れるだろうか。
不意に、彼が私を抱き締めた。
あったかい、彼はそう呟いた。
温かいのだろうか、それすらも分からなかった。
切り裂いた指先
2010/07/27
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