到底可笑しな話なのだ。自分を愛する事も出来ない自分が人を愛したいなど、高望みにも程がある。でもしかし、だからこそ、僕は君と時を共にしているのかもしれない。きらきらと溢れる愛情、紛れも無く僕だけに注がれている愛情を、そうして受けていればいつか貰ったそれを君に返す事が出来るのではと。ただの一度も、君を愛しいと思った事は無いのだけれど。

愛しいと思った事は無いけれど、愛したいと思う事は常にある。目下それが僕の悩みだった。どうしたらこんなにも僕を愛してくれている君に愛を返す事が出来るのか、と。輝く指輪も瞬く夜景も君は喜んで受け取ってくれたけど、その笑顔にはいつでも陰があった。恐らく彼女もとうに知っているのだろう、僕が人を愛せない事。他人どころか自分も大切に出来ない僕に愛し方を教えるようにして抱きしめてくれたあの夜を、一生忘れる事は無いだろう。どんなに豊満で艶かしい女と寝る事よりも、そうして彼女と夜を過ごす事の方が僕にとっては余程意味の有る事だった。どうして僕は人を、自分を、君を愛せないのだろう。寝る間も惜しんで考えに考え抜いても答えが出る事は無かった。だって僕は愛を知らない。誰かを愛しいと思う心を知らずに今まで生きて来たのだ。僕に擦り寄る女達のそれが愛と言うのならばそんな物は知らないままでいいとさえ思った。ただ一人、君に会うまでは。君を例えば愛しいと思う心と君を愛したいと思う心の識別の方法もまた、僕は知らなかった。

流星群を君と眺める。愛したい君と。僕を愛している君と。「この人とずっと一緒に居られますように。」両の手の平を組んで君は呟いた。
流れ星に願いをかけた。決して叶わぬと知りながら、諦め切れずに願いをかけた。ふりおちる涙をみて、僕は初めて罪を知った。君よ幸せを。そう願ったことが罪だった。
「愛しいこの方とずっと一緒に居られますよう」


 
2010/12/18

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