死んだ魚は水槽の底に沈み、何匹もの仲間達につつかれていた。
哀れだと思った対象は、死んだ魚か群がる仲間か。


「何か、意味があるの」
何の脈絡も無く突然問われる。明らかに言葉数が足りない問いでも、それが何を指しているのかはすぐに分かった。狭いベッドの上で、暫し無言で見つめ合う。
意味は、無い。非生産的と言えば正にその通り。でもそんな事はとうの昔に分かり切っていた事じゃないか。君の問いには答えずに、ごまかすように唇を合わせた。

「僕が死んだら、僕の骨は君にあげるね」
狭い墓の中は嫌だからと、又しても何の脈絡も無い話題が振られる。生の話から今度は死んだ後の話か。

灰にして風に飛ばす?海に流す?それともこの部屋に飾ってくれる?
にこりにこりと笑いながら、自分の骨の行方を話す君を、ごまかす為じゃなく、きつく抱きしめる。

「……骨は、俺が食う」
異常なまでに震えていた自分の声に一瞬驚く。でも君はそんなの気にしないみたいに、それはいいねと笑った。

濡れた頬を拭ってくれる君の体温が酷く優しくて、また一つ涙が零れた。
その日から、もう何も残っていない水槽の底を見てもそれが哀れだと思う事は無くなった。

ひとつになるということ

 
2010/09/26

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