捧げ物 | ナノ


愛の病 前編
「お邪魔します」
亜美は小さくそう呟きながら大気から貰った鍵を使ってライツマンションの彼らの住まいへと入る。
大気以外は出かけていて、さらにその大気は寝ている事は承知していたが、癖のようなものだ。

案の定電気はついておらず、人の気配は感じられない。
亜美はなるべく音を立てないように扉と鍵を閉め、靴を脱いで揃えると静かに廊下を歩きリビングへと足を踏み入れる。
電気を点けるとキッチンへ入ると手にしたエコバッグのみをそこに置き、バッグは持ったまま大気の部屋へと向かい、小さくノックをしてからそっと扉を開き中を覗き込む。

「いらっしゃい、亜美」
聞こえてきた大気のかすれた声に亜美はギョッとして傍に寄る。
「大気さん!?どうして寝てないんですか?」
驚いている亜美に部屋の主である大気がくすりと笑う。
「たまたま目が覚めたんですよ」
「そう…ですか。えっ…と、具合はどうですか?」
「朝に少し食事をして薬を飲んだので今はマシです」
そう言う大気の額に亜美の手のひらがそっと触れる。
大気はああ言ったが、やはり少し熱い。
「ん…。とりあえず大気さんは寝ててください」
「分かりました」
「あたしはキッチンにいるので、何かあったら起きてこないで携帯鳴らしてください」
「はい」
「ちゃんと寝ててくださいね?起きてお仕事とかしちゃダメですよ?」
「分かりました」
大気は星野と夜天からされた忠告を亜美からもされた事に苦笑しながらも頷くと素直にベッドにもぞもぞと入っていく。

薬の効果もあったのか、大気はすぐに寝息を立て始める。
亜美はもう一度、大気の額にそっと触れると冷たい氷水で絞ったタオルをのせて彼の寝顔を見つめる。



『すみません…風邪をひいてしまったようで…朝起きたら熱があって…“デートしましょう”と私から誘ったのに……』
朝に大気が少しかすれた声で電話をかけてきた。
亜美は驚きつつもすぐにお見舞いに行くと申し出た。
『風邪がうつるから来ないように。と言っても来ますよね?』
そう言われた亜美は「もちろんです」と即答した。
少し困ったように笑った大気の気配を感じながら「何か食べたい物ありますか?」と聞いてみた。
すると『亜美が作ってくれたゼリーが食べたいです』と言われたため、朝からハープのレッスンを終えた亜美はそのままマンションへ向かう途中で果物屋とスーパーへ寄ってきた。

「ゆっくり休んでくださいね?」
亜美は優しい声音で囁き、大気の部屋を出てキッチンに向かう───途中、ふとソファに目をやると、綺麗にたたまれている淡いピンクの“何か”が置いてある事に気付く。

「……美奈子ちゃん…」

家を出る前に美奈子から電話があった。
『大気さんが風邪引いたからここはナース亜美ちゃんの出番よ!』
相変わらずの突拍子もない美奈子の発言に亜美は軽い目眩を覚えた。
『美奈ちょっと貸して!もしもし水野?美奈の言う事は無視していいからね。
まぁ、着れば間違いなく大気は喜ぶだろうけど?僕なら彼女がナース服で看病してくれたらすごく嬉しい』
「着ません!///」
夜天の真面目な発言に亜美は真っ赤になりながら応えた。
『亜美ちゃんが着てくれるって…あたし、信じてるっ!』
「……夜天君、制裁おねがいしてもいい?」
『まかせて。じゃあ悪いけど大気の看病お願いしていいかな?』
「えぇ。あ、キッチン借りてもいいかしら?」
『うん。もちろんいいよ。さっき買ってきたスポーツドリンクがあるから飲み物はいらないからね。
あ、美奈がナース服置いていくって聞かないから…え?美奈なに?』
『ナース服って萌えるわよね?あ・み・ちゃ・ん♪』
「……着ないわよ?」
『ふふっ…さっき大気さんの耳元で呪文のように“ナース亜美ちゃん”って三十回ほど唱えといたから安心して?』
「美奈子ちゃん」
『はぁい?』
「───覚悟しておいてね?」
『なにを!?亜美ちゃ〜ん』
「色々よ」
亜美はきっぱり言うと携帯を閉じた。

(ホントに置いてあるなんて…あら?)
ナース服の上になにやら紙切れが置いてある。
『あたしから亜美ちゃんへのプレゼント♪絶対に亜美ちゃんにピッタリだから!これで大気さんもイチコロよ☆』
「……もぉっ…病人をイチコロにしてどうするのよ…」
美奈子には今度痛い目を見せようと心に決める。
ナース服は見なかった事にして、キッチンに行くと何事もなかったようにフルーツゼリーを作り始める。
まことのおかけで料理にもだいぶ慣れた。
てきぱきとゼリーを作り終え、冷蔵庫に入れてあとは完成を待つのみとなった。

亜美は再び大気の部屋に気配を殺しながらそっと入ると、彼はぐっすり眠っていた。
その様子にホッと息をつくと、額に置いてあるタオルを絞り直してのせると、氷水を作り直すために部屋を出ようとする。

「…っ、あみ…」
聞こえてきた小さな声にそっと様子を伺うが、大気の瞳は閉ざされてどうやら起きたわけではなく寝言だったようだ。
亜美は起こさなかった事に安心して部屋を出てから、ふと我に帰る。
「っ///」

『…っ、あみ…』

いつもとは違うかすれた声で、夢うつつに名前を呼ばれた事に今さらながら鼓動がドクドクと早鐘を打つ。
「〜っ//////」
亜美は頬に手を当ててうつむく。

(さっきの大気さんよりもあつい///)
大気が起きていなくて本当に良かった。
こんな状態を見られたら、きっといたずらっ子のような笑顔でからかわれるに違いない。

亜美はゆっくりと深呼吸をして自身を落ち着かせると、氷水を作って再び大気の部屋へと戻るとバッグから本を取り出す。
読書に集中しすぎてしまわないように大気の様子を伺い、途中で何度もタオルを絞り直しながら本を読む。



大気は額にひやりと冷たい感覚を覚えうっすらと瞳を開く。
「あ、すみません。起こしちゃいましたか?」
愛しく優しい声音に安心感を覚える。
「どれくらい寝てました?」
「えっ…と、二時間くらいですね」
「そうですか。退屈だったでしょう?」
「いえ、本を読んでいたのでそんな事ありません」
ふわりと微笑む笑顔に安心する。

「大丈夫ですか?」
ぼんやりと亜美の顔を見ていたためか、心配そうに声をかけられる。
「あぁ、すみません。大丈夫です」
大気は体を起こす。

さっきよりも熱は下がっているようで、少しの気怠さはあるがだいぶ楽になっている。
手に落ちた冷たいタオルは亜美がまめに絞り直してくれていたのだろう。

大気はじっと亜美を見つめる。
「何か冷たいもの飲みますか?」
「そうですね」
「分かりました。スポーツドリンクでいいですか?」
「はい」
「ちょっと待っててください」
亜美が部屋を出たあとふと氷枕の横に置いた携帯に視線をやるとメールランプが点滅している。

From:愛野さん
Subject:白衣の天使

お加減いかが?亜美ちゃんのナース姿は見れた?もしまだなら亜美ちゃんに言ってみてね。
着るの嫌がったら風邪引いた時の特権のワガママとしてお願いすれば亜美ちゃんはきっと聞いてくれるわ♪ファイトよ大気さん☆

-END-

「ナース?」
そう言えば何やら呪文のような言葉を聞いたような聞かなかったような…
「ナース…ですか…」
大気が呟いたのと当時に扉が開き、グラスに青いラベルのスポーツドリンクを注いだ亜美が戻ってくる。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
大気はごくごくと飲み干す。
「おかわりいります?」
「いえ、これで充分です」
グラスをサイドテーブルに置く。

「亜美」
「はい」
「ナースの格好、してくれませんか?」
「……はい?」
「おねがいします」
「いや、です」
「なぜ?」
「……大気さんこそどうして突然そんな事を言い出すんですか?」
「見たいからです」
大気は間を置かず即答する。
「いやです!恥ずかしいです///」
亜美の反応に大気がニッと笑うと、亜美は真っ赤になってふいと大気から視線を反らせる。

「───亜美」
そんな隙だらけな状態を大気が見逃すはずもなく、耳元で低く囁く。
「……っ!//////」
いつもよりかすれ気味の大気の声に亜美の感覚が一瞬で彼に支配される。
「っ///」
真っ赤になる亜美の反応に大気は心の内で笑うと、逃がさないように肩を抱き寄せそのまま耳元で囁く。
「ナース服…あるんですね?」
「え?」
「さっき亜美は“無理”ではなく“いやです、恥ずかしいです”と言いましたよね?」
「っ!?」
亜美がしまったとばかりに息を飲む。

「愛野さんが用意しておいたと見て間違いないですか?」
「……っ…はい」
「へぇ?」
「っ…で、でも着る必要ないですし」
「せっかく愛野さんが亜美のために用意してくれたのに、ですか?」
「うぅっ…どっちかと言えば大気さんのためだと思うんですけど…」
「じゃあ私のために着てください」
「ま、またの機会にでも」
「亜美はこの絶好のタイミングを逃してどこでナース服を着るんですか?」
「えぇっ…と…」
「亜美がナース姿で看病してくれれば、風邪なんてすぐに治りますよ」
「そ、そんな事は…ないと、思うんですけ…ど」
大気は亜美の反応からもう一押しだと悟る。

「そんな事ありますよ?“病は気から”って言うでしょう?」
「う…」
「それともまさか、私以外の男の前で着るつもりですか?」
「違いますっ!」
大気の言葉に即答してから亜美はしまったと思ったが、時すでに遅し…。

「じゃあ今、私の前で着て見せてくれますよね?」
「ーっ///」
「ね?亜美」
「っ…わかり、ました///」
“にっこり”と笑う大気の笑顔を見て、亜美はこれ以上の抵抗は無理だと諦める。

「楽しみにしてます」
部屋を出ようとする亜美に大気が微笑みかけると、ムッとした表情で可愛く睨まれる。
「大気さんのバカ…」
聞こえた小さな呟きに大気はくすりと笑う。
「亜美の可愛さには勝てませんからね」
「っ/// 着替えてきますっ///」
パタンと閉まったドアを見つめて大気はくすくすと笑うと、メール画面を開く。

To:愛野さん
Subject:Re:白衣の天使

ナース服の件わざわざ教えてくれてありがとうございます。
それと服の準備まで感謝します。
今度、何かお礼します。

-END-

送信ボタンを押すと、すぐに返信がある。

From:愛野さん
Subject:Re2:白衣の天使

きゃーっ(>▽<)大気さんたらやらしーんだから☆
お礼はナース亜美ちゃんの写真でっ!!

-END-

大気が美奈子とそんなやりとりをしているとは知らない亜美は脱衣所でナース服に着替える。
(どう考えてもスカートが短すぎる…)
美奈子が“特注”で用意してくれたナース服はスカートの長さが膝までなく、前にかがんでしまうと───たぶん見える。
おまけにニーハイソックスと聴診器まで用意されていた。

「…はぁっ」
亜美は大きなため息をつくと、着ていた服をたたむ。
(大気さんの看病に来たはずなのに、どうしてこんな事に……)
着替えをすませたものの、大気の部屋に戻る勇気がなく脱衣所でしゃがみこんで頭を抱える。
(あんまり遅いと大気さんが部屋から出てきちゃうわよね…うぅっ…でも…)
ぐるぐる考えていると、バイブ音が聞こえ亜美はポケットから携帯を取り出すと、美奈子からの着信だった。

「……もしもし?」
『はぁーい♪白衣の亜美ちゃんゴキゲンい・か・が?』
「美奈子ちゃん…大気さんに何か余計なこと言ったでしょ?」
『メールで“ナース亜美ちゃん見た?”って送っといたのよん♪』
美奈子の返事に亜美はうなだれる。
『さぁ!亜美ちゃん!大気さんの部屋に戻るのよ!大気さん待ってるから』
「…………」
『おや?亜美ちゃーん?聞いてる?』
「えぇ…聞いてるわ…」
『ナース服ピンクで可愛いでしょ?』
「スカート短すぎるんだけど?」
『やーね☆わざとよ?わ・ざ・と♪』
「……」
『ニーハイちゃんとはいた?』
「うん」
『亜美ちゃん…』
「なぁに?」
『今しゃがんでるでしょ?』
「え?えぇ」
『立って』
「う、うん」
言われた通りに立ち上がる。
『鏡見る!』
「え?」
『いいから!見てる?』
「うん」
『スカートとニーハイの間から見える白い肌…それが男のロマン───“絶対領域”なのよっ!』
「そう、なの?」
『そう!見えるか見えないかのチラリズムと同じくらい重要なのよ!見えるか見えないかのチラリズムと同じくらい重要なのよ!』
「なんで二回も言ったの?」
『大事な事だからよ!ナース亜美ちゃんを見れば大気さんもすぐに元気になるわよん♪』
明るく言い切る美奈子に亜美は呆れ交じりに小さく笑う。
いつでも美奈子はポジティブで、気が付けば彼女のペースに巻き込まれている。

『ほら、早く部屋に戻らないと大気さんが心配して亜美ちゃん捜しに動き出しちゃうわよ?』
「う、うん…そうなんだけど…」
『どしたの?』
歯切れの悪い亜美の返事に美奈子が不思議そうにしているのがわかる。
「この格好で大気さんの部屋に戻るの恥ずかしくて///」
『亜美ちゃんたらホントに可愛いんだから♪』
美奈子がくすくすと笑う。

「もうっ!今度の勉強会美奈子ちゃんだけスパルタだからねっ!」
『えぇっ!?亜美ちゃんお願い!それだけはやめてぇっ!』
亜美のスパルタモードの怖さを知っている美奈子が本気で懇願するがはっと思い出したように亜美に話す。
『あ、そうだ亜美ちゃん。あのね大気さんの事なんだけど』
「なぁに?」

「それじゃあね」と言い残して携帯を切る。
「さて……ホントに戻らないと…ね…」
亜美は呟くと意を決して脱衣所から出ると、大気の部屋の前へと戻り進級をすると扉を小さくノックする。

───コンコン、カチャリ

「お、お待たせしました///」
そう言いながら顔だけをひょこっと覗かせる亜美に大気はくすりと笑う。
「早く見せてください?」
「うぅっ///」
恥ずかしがって部屋に入ってこようとしない亜美に大気は優しい笑顔を向ける。
「亜美、そこは寒いですし、亜美が傍にいてくれないと落ち着けませんから、早くここに来てください」
「は、はい///」
おずおずと扉の影から現れた亜美の姿に大気は思わず息を飲む。

白衣ではなく、淡いピンク。
スカートの長さは短くセーラーマーキュリーのコスチュームの時より心持ち長い程度で、ほとんど大差ない。
ナース服と同じ色合いのニーハイソックス。

そして“絶対領域”から覗く亜美の透けるような白い肌。

妙に艶めかしく───エロい。

「ーっ、亜美」
「はい///」
「こっち来てください」
手招きすると、おずおずと大気の元にやってくる。
「あ、あの///」
恥ずかしさで真っ赤になった亜美が泣きそうになっている。
「亜美」
「はいっ///」
「すごく可愛いです」
「っ/// あ、ありがとう、ございます///」
「可愛すぎて熱が上がりそうです」
「えぇっ/// やっぱり着替えてきます!」
「ダメです」
「でも」
「そのままでいてください」
「っ/// 恥ずかしいんです…けど///」
「私はそんな可愛い亜美を見られてすごく嬉しいです。風邪をひいて得しました」
「も、もうっ!大気さんは大人しく寝ててください!」
「もう眠たくないからイヤです」
「そんなわがままを…」
珍しい大気の子どもじみた言い方に亜美は少し驚く。

「さすがにもう眠るのにも飽きました」
「今は薬が効いてるから楽なだけですよ?また熱が上がったらどうするんですか?」
「その時は専属ナースがいてくれるので、ね?」
心配そうに自分の額にすっと手のひらを当て、熱が下がったかを確かめる亜美の碧い瞳を真っ直ぐに見つめ大気は“にっこり”と笑う。
「っ/// と、とにかく大人しく横になっててください。
あ、大気さんお腹は空いてませんか?」
亜美が言うと、大気はこくりと頷く。
「そう言われれば…そうですね。少しお腹が空きました」
「お粥でいいなら作れますけど?」
「お粥よりもゼリーが、食べたいんですが」
「あ…」
亜美はナース騒動のせいで気が動転してしまい、大気に言われるまでゼリーを作った事をすっかり忘れていた。
「もう出来てると思うので取ってきます。待っててください」
「分かりました」

部屋を出るナース姿の亜美を見て、大気はハッとする。
(あまりの可愛さに写真を撮ることをすっかり忘れていました…)
大気がどうやって写真を撮ろうか練っていると、ゼリーとスプーンを手にした亜美が戻ってくる。

「お待たせしました……どうかしましたか?」
「え?」
「何か考え事ですか?難しい顔してます」
亜美が心配そうに大気の顔を覗き込む。
「お仕事の事ですか?」
「───いえ」
さすがに『亜美のナース姿の写真をどうやって撮ろうか悩んでました』なんて言い出せるはずもなく大気は笑顔を見せる。
「本当…ですか?」
大気の言葉に不安そうな視線を送る。
「今日はお仕事はダメですよ?」
そう言う亜美に大気はくすりと笑う。
「その格好でそう言ってると本物のナースみたいですね」
「っ/// からかわないでくださいっ///」
真っ赤になる亜美に大気はくすりと微笑む。

「むぅっ/// もうゼリーあげません」
「えっ…」
「あたしが食べちゃいます」
「その後でキスしてくれるんならいいですよ?」
「しません!!」
亜美の反応がいちいち可愛くて大気は声を上げて笑う。
「ははっ、本当に亜美は可愛いですね」
「大気さんは風邪を引いてても意地悪です…」
「亜美が可愛いから、つい意地悪したくなるんですよ」
「もうっ///」
亜美は椅子に座ると大気にゼリーを差し出す。
「フルーツゼリーにしたんですけど、良かったですか?」
「はい、ありがとうございます。いただきます」
大気はゼリーとスプーンを受け取ると、一口目を口に運ぶ。

生の桃やみかんそのものの甘さとゼリーが喉を通る感覚が嬉しい。
「美味しいです」
心配そうに見つめる亜美に微笑みながらそう言うと、彼女はホッとしたように「良かったです」と笑顔を見せる。
そんな彼女の仕種に大気はふっと笑う。
「やっぱり風邪をひいて良かったですよ」
「え?」
「亜美にゼリーを作ってもらえて、そんなに可愛い格好で看病してもらえるんなら、風邪をひくのも悪くないですね」
「もうっ!風邪を甘くみてたらダメなんですからね!」
「分かってますよ。“風邪は万病の元”ですよね?」
「その通りです。たかが風邪だって高を括ってちゃダメなんですよ?」
亜美がピッと指を立てて言うと、大気がくすりと笑う。
「専属の可愛いナースにそう言われては聞かないわけにいきませんね。しっかり肝に命じておきます」
「もぉっ///」
からかわれていると感じた亜美はむぅっとすねる。



「ごちそうさまでした。おいしかったです」
その後、二つ目のゼリーもペロリと平らげた大気は満足そうに笑顔を見せる。
「あ、はい…ありがとうございます///」
照れたように笑顔を見せると、スプーンと容器を持って一度部屋から出て行く亜美を見つめながら、まわりくどい事はせずに直球でいこうと心に決めると汗をかいたため新しいパジャマに着替えるためにベッドから抜けだすとタンスからパジャマを取り出す。

亜美は容器とスプーンを洗ってからキッチンでたたずむ。
(もう着替えてもいい…かな?)
そう思っても、着替えは大気の部屋にあるためもう一度彼の部屋に戻らないといけないが───そろそろ恥ずかしさがピークに達しそうだった。
「寒い…っ」
おまけにナース服は半袖のため少し寒い。
(とっちにしろ上着も着たいし、大気さんにお薬渡さないといけないから、とりあえず部屋に戻らないと…)

───コンコン…ガチャリ

「ひゃわぁぁぁぁぁっ/// 失礼しましたっ!」

───バンッ!

ノックのあと部屋のドアを開けると大気がパジャマの上着を脱いでいるところで、亜美は悲鳴を上げ勢い良くドアを閉めてその場に屈みこむ。
「ーっ/// っ///」
(ど、どうしようっ)

───ガチャリ

「亜美?」
「ひゃうっ/// ご、ごめんなさい!わざとじゃないんです!見るつもりはなかったんです!!」
亜美の慌てっぷりに大気はくすりと笑うと、しゃがみこんだ彼女に視線を合わせるため自身もその場にしゃがむ。
「何も言わずに着替え始めた私が悪いんですから、そんなに謝らないでください」
「でもっ///」
「それに、今さら恥ずかしがる事ないでしょう?」
「っ/// そ、いう事じゃなくてっ!」
パッと顔を上げる亜美に大気はふっと笑う。
「私の裸よりも、今の亜美の体勢の方が問題あるかと思いますよ?」
「え?」
「見えますよ?」
「っ!? 〜っ//////」
ミニスカートでしゃがみこんでいたため、危うく下着が見えそうになっていることを指摘すると亜美は真っ赤になって足をくずして隠す。
大気はそんな亜美の仕種にくすりと笑うと、おもむろに携帯を取り出すと素早くカメラを起動するとうつむいている亜美に照準を合わせる。

───カシャッ

「っ!?」
「戴きました」
「や、だめです!」
「いつも言ってるでしょう?“無防備ですよ”って」
「うぅっ///」
「罰としてあとで何枚か写真撮らせてもらいます」
「えぇっ!意味が分かりません!どうしてそうなるんですか?」
「亜美のナース写真が撮りたいだけです」
「イヤで…って大気さん?」
「撮らせてくれる気になりましたか?」
「いえ…そうじゃなくて。パジャマ着替えるところだったんです…よね?」
大気のパジャマはさっきまで着ていたものと同じで、亜美は不思議そうにする。
「えぇ。そのつもりだったんですが、さっきの亜美の悲鳴でまずは亜美を捕獲しないとと思ったので、もう一度着たんです」
「そう、ですか。すみません……取り乱してしまって…」
「いえ。私こそ驚かせてすみません」
大気が亜美の髪をそっとなでる。
「あの」
「はい?」
「パジャマ着替えるんだったら、その前に身体を拭いた方がすっきりすると思うんですけど」
「そうですね。夜にはお風呂に入るつもりだったんですが…その手がありますね」
大気がポンと手を打つと亜美はこくこくと頷き、ハッと気づく。

「と、とりあえずお部屋に戻ってください。それと身体を拭く前にお薬飲んでください」
「…………朝に飲んだから大丈夫ですよ」
「じゃあ朝に飲んだお薬見せてください」
「……」
「大気さん?」
観念したのか大気は薬の箱を渡す。
一日三回、食後に服用する顆粒の市販薬。
「……」
大気はさっきから亜美と目を合わせない。
亜美は効能と副作用のところに目を通したあと、自分のバッグからポーチを取り出すと、中からどう見ても薬にしか見えないシートを二つ取りだす。
「母に貰ってきたお薬があるので、そっち飲んでください。効能的にはこっちの方が上ですから」
亜美が言うと、大気が少し嫌そうな反応を見せる。
「もう熱も下がってますし、大丈夫ですよ」
亜美はさっきからの大気の反応に、少し考え込む素振りを見せる。
「大気さん…もしかして───お薬飲むの苦手なんですか?」
「…………っ」
「そうなんですね?」
「……キンモク星にいた頃は風邪なんてひく事なんてなかったですし、以前地球にいた頃も風邪をひかなかったもので……」
亜美はなるほどと思う。
「でもお薬飲まないとダメですよ。これはカプセルで大気さんが朝に飲んだのよりは飲みやすいですから、ね?」
亜美が諭すように優しく言うが、大気が珍しく本気で嫌そうな表情を見せたのでどうしようかと考える。
「これは苦くないですから、ね?」
「……いやです…」
「大気さん…」
亜美の困った視線を受けてなお大気は首を縦にはふらない。
「どうしたら飲んでくれますか?」
「……飲みたくありません」
「それはダメです」
「薬はイヤです」
「……む」
亜美は思考をフル回転させる。
飲まないとまた熱が出てくるのは確実だ。
仮に今飲まなくても、あとあと同じ事になるのだ。と、なるとなんとか納得させて飲ませておいた方が大気のためにもなると思う。
(でもまさか大気さんがお薬飲むの苦手だなんて…カワイイ)
それを言うときっとすねるだろうから今は言わないでおこうと決めて、亜美はさっきの美奈子との会話を思い出す。



『あ、そうだ亜美ちゃん。あのね大気さんの事なんだけど』
「なぁに?」
『朝、薬飲んだ後にすっごい疲れてたのよ』
「え?」
『夜天君もそうなんだけど、もしかすると薬飲むの苦手なのかもしれないわね』
「そう、なの?」
『うん。いい?亜美ちゃん!そういう時のとっておきの裏技を愛の伝道師ヴィーナスちゃんが伝授してあげるわん♪』
「嫌な予感しかしないんだけど?」
『ひっどーい!もう…これはホントに絶対に役に立つんだからね!』
「ホントに?」
『ホントよ!夜天君には効果あったもん!あのね───』



亜美は覚悟を決めて美奈子が教えてくれた“裏技”を使ってみることにする。
『それでダメなら泣き落とすのよ!まぁ大気さんに限ってダメって事はありえないでしょうけどね』とは美奈子の談。
「じゃあ───口移しでなら飲んでくれますか?」
「…………え?」
大気は亜美の言葉に衝撃を受けすぎて、思考が一瞬停止した。
普段の亜美なら絶対に口にしないような言葉だったからだ。
(いやいや、亜美に限ってまさかそんな大胆発言をするわけありませんよね。
ははっ、いけません。熱が上がってきたんでしょうか?まさかそんなはずありませんよね。空耳か何かですよ。きっと)
大気は一瞬でそう結論づけた。
「亜美───もう一度言ってくれますか?」
そして念のために亜美にもう一度聞いてみることにした。

「っ/// く、口移しでだったらお薬飲んでくれますか?」
改めて口に出す事が恥ずかしいのか、さっきよりも潤んだ瞳で見つめられてそう聞かれた大気は反射的に亜美を抱きしめる。
「っ!」
「───貴女は私を倒れさせるつもりですか?」
「え?」
「…っ、わかりました。亜美が口移しで飲ませてくれるんなら、飲みます」
「ホント?」
「はい」
亜美に上目遣いで見つめられた大気は心のなかで白旗を上げる。

(まったく…亜美には敵いませんね)
正直、朝に飲んだ薬の苦さと飲み込みにくさに大気はうんざりして、ひどく疲れた。
もう二度と飲みたくないと思うほどに嫌だった。
いくら亜美の“お願い”でも聞きたくないほどに……。
それがまさか“口移し”と言うおいしい方法があるとは思っていなかった。
(愛野さんの入れ知恵ですかね?)
相変わらずさすがと言うか、手回しにぬかりがない。

「じゃあ、お願いしてもいいですか?」
「は、はい/// じゃあ、えっと…ベッドに座っててください」
「わかりました」
大気は言われたとおりにベッドに腰を下ろす。
亜美はバッグからペットボトルの水を取り出し、カプセルをひとつ取り出すと大気の前に立つ。
「……大気さん」
「なんですか?」
「見られてるとやりづらいので目閉じててくれませんか?」
「嫌だと言ったら?」
「自分で飲んでください」
「わかりました」
大気は素直に目を閉じる。
亜美は内心でそんなに薬を飲みたくないのかと思いながら、自身も覚悟を決める。
今からの一連の動作は少しでもためらったら負けだ。
一気にいかないと、自分が風邪薬を飲むはめになりかねない。

(よしっ!)
亜美は水を一口含んでからカプセルも入れると───すぐさま大気のくちびるに自身のそれ押し当てる。
舌でちろりと大気のくちびるをなめると、キスの時の条件反射的でそっと口が開かれたので、亜美は水と一緒に薬を流しこむ。
「っ!」
大気は流れこんできた水をこくりと嚥下する。
それを感じ取った亜美はそっとくちびるを離す。
「え?」
大気はあまりにあっさり終わった事に驚いている。
「っ///」
「苦くなかったです」
「だから言ったじゃないですか///」
「でもさっきはすごく苦かったんですよ?」
「大気さんもしかしてお薬の方を先に口に入れたんじゃないんですか?」
「……ダメなんですか?」
「顆粒ではやめておいた方がいいです。先にお水を口に含んでおいたほうが飲みやすいんですよ」
「なるほど……」
大気は納得したようにしきりに頷いている。
その様子を見た亜美は大気にペットボトルともう一つの薬を差し出す。
「はい?」
「残念ながらもう一つ───です」
「え!?さっきので終わりじゃないんですか?」
「病院では大体風邪薬と一緒に胃薬も処方されるんですよ」
「そうなんですか…えっと…飲まないでいいとかは」
「ないですよ?」
「ですよね…」
大気は差し出されたペットボトルと薬を見つめて嫌そうにする。

(なんだかホントに子どもみたい)
大気の初めて見せる行動が可愛くて亜美はくすりと笑う。
「どうして笑うんですか?」
「ふふっ…ごめんなさい。大気さん子どもみたいでかわいいんだもの」
「っ…」
大気はくすくすと笑う亜美を見つめる。
「亜美」
「はい?」
「もう一度、口移しで飲ませてくれませんか?」
「えっ?」
「お願いします」
真剣な瞳で言われた亜美は恥ずかしさでいっぱいになるが、こくりと頷くと同じ要領で大気に薬を飲ませくちびるを離そうとした───その時。
大気がぐいと亜美の腰を抱き寄せそのまま深くくちづける。

「んっ/// はぁっ///」
「ありがとうございました」
くちびるを離した亜美に大気は余裕の笑顔でふっと笑う。
「〜っ/// あたし、お湯とタオル用意してきますっ///」
亜美は恥ずかしさで部屋から逃走したかったため、口実を作って逃げることにする。
耳まで真っ赤にした亜美が素早く部屋から出て行くのを見つめた大気はくすくすと笑う。
「やっぱり亜美は可愛いですね」



「じゃあ、ここに置いておきますね?───ごゆっくり」
お湯とタオルを準備した亜美はそそくさと部屋をあとにしようとする。
「ちょっと待ってください。亜美」
「はい?」
「申し訳ないんですが、背中だけお願いしてもいいですか?」
「───え?」
大気の言葉に亜美は固まる。
「普段なら自分で出来なくはないんですが、熱が出たせいか少しダルさ残っていて出来ればお願いしたいんですが……」
大気の申し訳無さそうな声と「嫌ですか?」の言葉に亜美はハッとする。
「え?あ、いえ!えっ…と、分かりました」
「ありがとうございます」
「いえ/// えっと……」
大気がパジャマのボタンを外し上の服をぱさりと脱ぎ捨て亜美の方に背中を向ける。
「すみません。お願いします」
「あ、は、はいっ///」

亜美は熱めのお湯でしぼったタオルを広げると、そっと大気の背中に当てる。
「タオル、熱くないですか?」
「大丈夫ですよ」
大気の声と広い背中に亜美の鼓動がドクドクと跳ねる。
「っ///」
「亜美?どうしました?」
「あ、ごめんなさい///」
亜美は慌てて大気の背中を拭き始める。
早くしないとまた熱が出てしまったり、風邪が悪化してしまうかもしれない。
お見舞いに来たのにそんな事をしてしまっては元も子もない。
亜美は気持ちを切り替えると、大気の背中を拭くことにのみ意識を集中させる。

大気は背中越しにそれを感じとり内心で少し残念に思う。
恥ずかしがって慌てる亜美を愛でることが密かな目的だったのだが…。
(それにしても、こういうのもいいですね)
亜美の力加減は絶妙で気持ちいい。
途中、タオルを絞り直して大気の背中を丁寧に拭いた。

「ど、どうですか?」
「ありがとうございます。すごく気持ちよかったです」
「ど、どうも/// ではあたしは外に出てますね」
「はい。あ、その前に何か羽織った方がいいですね。私のカーディガン大きいでしょうが良かったら使ってください」
「ありがとうございます/// お言葉に甘えてお借りします」
亜美はタオルを大気に手渡すとハンガーにかかっていた彼の濃紺のカーディガンを取り部屋を出て行く。

(ーっ/// 恥ずかしかったぁっ///)
リビングに行った亜美はソファに座り込む。
(緊張した/// ドキドキした///)
自分の鼓動はまだいつもより早い。
「うぅっ/// ───寒いっ」
亜美は手にしていたカーディガンを羽織ると立ち上がって長さを確認する。
(やっぱりおっきい)
裾の長さはミニスカートよりも少し短いくらいだった。
(でも、あったかい/// それに、大気さんのにおいがする///)
うるさいくらいの鼓動を落ち着けたいのに、大好きな大気のにおいにそれはかなわなくて…
(大気さんよりもあたしの方が熱出そう///)
熱くなった頬に手を当てて、ふるふると頭をふる。
本当は着替えを持って出ようと思っていたけれど、そんなやりとりをしている間もきっと大気は上半身裸のままだろうから、とりあえず彼が先に身体を拭いてからにしようと思った。

亜美はソファに座って、さっきまでの事を思い出していた。
(い、いくら大気さんに薬を飲んでもらうためとは言え……ものすごく大胆な事しちゃった/// うぅっ/// しかも大気さんたら、あんな…事///)
自分の行動の大胆さと、大気のキスに今さらながら驚く。
そしてその後の、大気の背中を拭いた時に感じた事。
(大気さんがどんどん“男の人”になっていってる…ような気がする)
当然、大気は“男性”なのだが出会ったばかりの頃はもっと細いイメージがあった。
元々長身のために痩せてみられがちだが、しっかりと引き締まった身体をしている。
おまけに最近はなんだか妙な色気と余裕の笑顔で亜美を翻弄する。
(うぅっ/// 恥ずかしすぎてもうどうしよう…)

大気は下着とパジャマを着替えると洗面所にあるカゴに脱いだ服を入れるために部屋を出てリビングを通ると、ちょこんと亜美がソファに座っていた。
何か考え事をしているのか大気には気付かなかったようで、大気は服をカゴに入れると再びリビングに戻る。

亜美は自分には気付いていない。
大気の中にイタズラ心が湧き上がる。
そっと足音と気配を殺して、ゆっくりとソファに近付くと───後ろから亜美の耳にふっと息を吹きかける。

「きゃあぁぁぁっ!!」
「無防備ですよ?」
「っ/// 〜っ///」
真っ赤になって耳を抑えソファで腰砕けに状態になった亜美に大気はくすりと笑う。
「っ/// いきなり何するんですかっ///」
「“イタズラ”です」
涙目で睨まれた大気はくすくすと笑ってさらりと言ってのける。
「もう大気さんはお部屋で大人しくしててくださいっ!」
「退屈なので相手してください」
「……っ」
「ナース姿の写真を撮らせてくれたら、大人しくしてますから、ね?」
“にっこり”と微笑まれた亜美はひくりと息を飲んで、大気を見上げる。
「出来ればもう着替えたいんですけど…」
「ダメです」
「……大気さん…なんか今日ちょっとおかしいです」
「どこがですか?」
不思議そうに亜美を見つめる大気はいつもとは違い、前髪を下ろし、さらに後ろ髪はまとめていない。

いつもの大人びた雰囲気はなりを潜めており、どちらかと言えば年相応の少年ぽさがある。
亜美はそんな彼を見つめて思考を巡らせる。
いつもの意地悪と似ているけれど、少し違うように思う。
言動がいつもより直接的で、子どもっぽくて───まるで…
「甘えたさんです」
少し困ったように言う亜美に大気はくすりと笑う。
「そうかもしれませんね───亜美に甘えたかったんです」
「っ///」
優しく微笑まれ、あっさりと認められた亜美が真っ赤になる。
(そんな笑顔で、そんな事言うなんて……ズルい)
その一言で大気にとって自分だけが“特別”だって思ってしまえる。
前髪を下ろして、無邪気な笑顔を向けられるだけで自分だけがそんな大気を知っていると思える───ささやかな独占欲。
「嫌でしたか?」
大気の言葉に亜美はパッと顔をあげる。
「っ/// そんな事ないですっ/// う、嬉しい…です///」
照れながらもそう告げる亜美の言葉に、大気は安心する。
「とりあえず部屋に戻りましょうか?ここは寒いですから、ね?」
「はい」

部屋に戻ると大気はベッドに腰掛ける。
「亜美」
「はい」
「寒くないですか?」
「大丈夫です。大気さんに借りたカーディガンのおかげであったかいです///」
亜美はそう言ってはにかんだように笑顔を見せると、余った袖をパタパタと振る。
「ーっ///」
そんな仕種に大気は赤くなる。
亜美の行動は無意識で無邪気で可愛くて、こちらの理性を難無くそいでいく。

「亜美」
「はい?」
「元気になったら───覚悟しておいてくださいね」
「……何を、ですか?」
本気で分かっていないようで、亜美は首を傾げる。

大気はスッと携帯を取り出すと、そんな亜美を素早く撮影する。

「あっ!」
亜美が慌てて大気にかけより、携帯を奪おうとするが素早く枕の下に隠される。
「あっ!大気さん今のは不意打ちです!ズルい!」
「あんな可愛い事する亜美の方がズルいです」
「言いがかりです!」
「亜美が可愛いのは事実です」
「〜っ/// 大気さんホントにズルいです///」
大気はなんとかして携帯を奪おうとする亜美を抱きしめる。
「きゃあっ///」
「諦めてください?」
「嫌です///」



夕方になって帰ってきた星野が亜美のナース服姿に驚き、美奈子が「やっぱり自分で撮らなきゃね!」とスマートフォンを構えて亜美を追いかけた。

「近いうちに水野が風邪ひいたら大気の責任だね」
なにげなく言った夜天の一言が、真実となる。



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