【side亜美】
「亜美」
「はい」
大気さんとテレビを見ながらソファでくつろいでいたら、名前を呼ばれた。
「ちょっとコンビニまで買い物に行ってきますけど、何か欲しい物はありませんか?」
「あの…あたしが行きますよ?」
「外は雨が降ってるからダメです。風邪をひいたらどうするんですか?」
「でも…っん!」
反論しようとしたら、唇を塞がれた。
「いい子でお留守番しててください?」
「っ…はい///」
最近の大気さんは…ちょっと、強引です。
「では、ちょっと行ってきますね」
「はい。行ってらっしゃい」
大気さんを見送ると、広いリビングで一人になった。
本でも読もうと思って鞄から本を取り出したところで、玄関から賑やかな声が聞こえてきた。
「ただいまー」
「お邪魔しまぁーっす」
星野君とうさぎちゃんが帰ってきたみたい。
「あれ?水野じゃん」
「おかえりなさい星野君。お邪魔してます」
リビングに入ってきた星野君と話をしていると、後ろからうさぎちゃんが顔を覗かせる。
「あ、亜美ちゃんだ〜っ☆」
「こんにちは。うさぎちゃん」
「うん。こんにちわ。今日はここに来てたんだね」
「えぇ。大気さんにお呼ばれしたの」
「もぉっ亜美ちゃんたらぁ/// ラブラブなんだからぁ///」
「えっ///」
「お前ら……あれ?その大気は?」
「あ、さっきコンビニに行くって言って」
「マジか。よっし!まだいけるよな」
なんだか嬉しそうに星野君は携帯を操作し始める。
「あ、もしもし大気?今どこ?え?俺?今帰ってきたところ」
大気さんに電話?
「どこのコンビニにいんの?え?セ●ンイレブン?
わりぃんだけどついでにロー●ン寄って来てくれよ!
なんか無性にからあげくんのチーズが食いたいんだよ!な?頼むよ!」
「せーや!あたしレギュラーが食べたい」
え?うさぎちゃんも?
そう言えば、さっきから話しながら星野君が何か書いてるけど…
「あ、レギュラーも頼む!おだんごが食いたいんだってさ。
え?あぁ、水野はなんかいるかって大気が」
そう言いながら、星野君が書いた紙をあたしに見せる。
『頼む!ロー●ンにしかないやつを頼んでくれ!水野が絡まないと大気動いてくれない感じなんだ』
え?あたし?
ん〜と…
さっきお昼御飯食べたから、お腹すいてないし。
どうしようか困っていたらうさぎちゃんがアドバイスをくれた。
「亜美ちゃん、ロー●ンのスイーツおいしいよ」
「そうなの?おすすめは?」
「プレミアムロールケーキ」
「じゃあそれにするわ」
「あ、星野!あたしのもっ!」
そう告げると、星野君はすごく嬉しそうに親指をグッと立てた。
「じゃあ頼むな」
星野君はそう言うと電話を切った。
「サンキューな!水野」
「ううん」
「そーいや、なんでロールケーキ三つ頼んだの?星野食べるの?」
「いや、俺は食わないけど、もし夜天達が帰ってきたら」
「ただいま」
「ただいまー」
玄関から夜天君と美奈子ちゃんの声がした。
「……愛野も欲しがるだろうと思ったんだけど、まさかこんな絶妙なタイミングで帰ってくるとは思わなかった」
「あれ?珍しい。揃って…ないね」
「なんてこと!亜美ちゃんを置いて大気さんがいなくなるなんて!事件よ夜天君!」
「どうせコンビニか薬局あたりでしょ?
水野が行こうとしても今日は雨だから危ないとかそんな事言って行かせなかったとかじゃないの?」
夜天君の言う通りだったので、思わず拍手してしまった。
「さっすが夜天君!名推理ね!」
美奈子ちゃんは今日も元気みたいであたしは安心する。
三年生の二学期になってすぐ、美奈子ちゃんは夜天君達と同じ“芸能人”になった。
今は、雑誌でモデル業がメインだけど、いずれはCDデビューもするみたい。
「あ、そうだ!実はみんなにプレゼントがあるのっ!」
そう言うと、美奈子ちゃんは大きなバッグを指差した。
「ほえ?」
「は?」
「えっ?」
突然の事に驚くあたし達。
「ねぇ美奈…やめた方がいいよ?」
「えーっ!絶対喜ぶわよぉ!」
そう言いながら、美奈子ちゃんは大きなバックのファスナーを開けると──
「じゃーん!」
中身を全部ひっくり返した。
「おぉーっ!」
なぜか嬉しそうな星野君。
「うわぁっ!」
「えぇっ?」
驚くうさぎちゃんとあたし。
「はぁっ…」
ため息をつく夜天君。
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