大気×亜美 | ナノ




5.嫉妬

――時、同じく

屋上に向かいながら、みんなはチラチラと大気達に振り向く。

「なぁ、大気…」
星野が何かを言いかけると、大気はひとつ頷く。

「みなさん勝手ですみませんが、私達は今日ちょっと別でいいですか?」
そう聞くとみんなは頷く。

大気に手をひかれた亜美が、耳まで真っ赤にしてうつむいているのを見て、これは大気に任せるしかないと判断した。

「では、また後ほど教室で。おいで亜美」
そう言うと大気は進行方向を変え、みんなから遠ざかっていく。



「しっかし…名前呼ばれただけであの反応…水野ってどんだけウブなの?」
夜天が呆れつつも、どこか関心したようすで呟いた。
「やーね!夜天くん!そこが亜美ちゃんの可愛いところなのよ!」
美奈子がビシッと指差して宣言する。
「そうだね。まぁ、あたし達はとりあえず屋上行ってご飯にしようよ」
まことが言うと、うさぎも同意する。
「そーしよー。あたしもうおなかペッコペコだよ」
彼女たちは亜美達の話しながら、屋上に向かって行った。

「俺たちも行こうぜ、夜天。水野のことは大気にまかせとけば心配いらないだろ」
「いや、心配の方向性がちょっと違う。大気がイロイロと限界っぽかったから……」
「あー、やー、まー…だーいじょぶだって!」
夜天の言葉に、星野も多少の不安を覚えるが、どうするのかは本人達次第だろう。



亜美の手をひいた大気はなるべく人の来ないところを目指す。
こんな状態の亜美を自分以外の男に見せたくない。

(ここなら問題ないでしょう)
大気は資料室へと入った。
普通は生徒の私用は禁止なのだが、大気と亜美は――学年一位と二位を争う二人――特例だった。

部屋に入った大気は椅子に亜美を座らせる。
大気自身は、彼女の前に膝をついてしゃがみこむ。
いつものように椅子に座ってしまうと、うつ向いた亜美の顔が見えなくなってしまう。
それではダメだ。

「亜美?」
「っ!」
呼ばれた亜美はピクリと震える。
「すみません。怖がらせてしまいましたか?」
「違いますっ」
亜美は頭をふるふると振って否定する。

「ちょっと、びっくりしちゃって…」
「嫌ですか?」
大気が聞くと、亜美はまた頭をふるふると振る。

「うれしい…です///」
そう言った亜美に大気は微笑む。
「それは良かったです」
本当に心の底から安心した大気の声色に、亜美はそっと顔を上げ大気を見つめる。
「っ…大気さん?」
亜美の瞳は涙で潤み、揺らいで、とても綺麗だ。

「そんな顔しないでください」
大気はそっと亜美のまぶたに口づける。
「歯止めが効かなくなります」
「え?」
亜美は不思議そうにしている。

「自分がどれだけ人を惹き付けるのか、少しは考えてください」
そう言うと、唇を重ねる。
「んっ///」
大気はすぐに唇をはなす。
「今朝おあずけ状態だったので今のはその分です。もう一度してもいいですか?」
亜美は真っ赤になったまま、こくりと頷く。

二人はもう一度ゆっくりと――キスを交わした。



唇をはなし、大気がクスリと笑うと、亜美も笑った。

「おなかすきました」
「そうですね。お昼にしましょうか」
そして、二人でお弁当を食べる。

おかずを交換をしながら、ゆっくりとお昼ごはんをすませた。



五時間目が始まるまでまだ時間はある。

亜美がそっと口をひらく。
「あの…大気さん」
「はい?」
「聞いてもいい…ですか?」
「どうぞ」
「あの、どうして突然あたしの事を名前で…呼んだんですか?」
亜美は思いきって大気に聞く。
大気はその質問に少し驚いたようだ。
「亜美…あなたは…」
「はい?」

「……嫌だったんですよ」
「え?」
「『浦和良』と同じ呼び方であなたを呼ぶのが…」
「…それって?」
「……ヤキモチです」
「〜っ///」
亜美は一瞬で真っ赤になった。

(本当にあなたは…可愛い人だ)

大気はもう一度、亜美の名を呼ぶ。

「亜美」
「はいっ///」
今度は少し照れながらでも、きちんと返事をしてくれた。

「うん。良かった」
「?」
「また涙目になられたらどうしようかと思いました」
「あっ、えっと…それは…びっくりして」
「はい」
「恥ずかしくて///」
「はい」
「うれしくて」
「!」
「なんかドキドキしちゃって/// 頭がいっぱいになっちゃって」
「はい…」

(亜美、私はどこまであなたにおぼれればいいんでしょう)

自分の目の前で、頬を染めながら話す彼女がたまらなく愛しい。

「はじめてだったんです」
「何がですか?」
「男の人に名前を呼ばれて“うれしい”って思ったの」

(本当に可愛すぎます)
「私も嬉しいです」
「え?」
「あなたを“亜美”と呼んでいい男性は、お父様を除けば私だけでしょう?」
「っ!はいっ///」
「それが、すごくうれしいんですよ」
「大気さん///」
亜美は恥ずかしそうにしながらも、うれしそうだ。

二人の間に甘い空気が流れる――が、ふと時計が視野に入った大気は気付く。
「っと…そろそろ戻らないとあと五分でチャイムが鳴ってしまいます」
「あ、本当ですね」

大気が右手で自分と亜美の弁当袋を持つと、先に立ち上がり亜美にスッと左手を差し出す。
すると小さな手がそっと触れてくる。

「戻りましょうか。亜美」
「はいっ///」
名前を呼ぶだけで、照れて笑う彼女は本当に可愛い。

大気は亜美の額にチュッと口付ける。
「た、大気さんっ///」
「こっちの方が良かったですか?」
そう言うと、今度は唇にキスをする。
「っ/// もぉっ…」
大気はクスクス笑いながら「さ、行きましょう」と、言うと亜美の手をひき、資料室をあとにする。

二人は手をつないだまま、教室に戻った。
その様子をみたうさぎ達はホッと胸を撫で下ろす。



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