報告と錯綜


「…ということで、暫くご迷惑をかけることになるかと思います。すみません。」

翌日、雲雀に頼んで呼んでもらった、目の前に居並ぶ風紀委員の皆々様に、昨日の出来事と多少の身の上話と今までの被害と予想されるこれからの騒ぎを詫びて、ぺこりと頭を下げた。ら、悲鳴のような声が上がった。何故だ。

「どうか、どうか頭を上げてください!ご迷惑だなんてそんな…!」
「沢田書記にかけて頂けるご迷惑なら、我ら一同、光栄の極みです!」
「そうですとも!委員長と副委員長からも仰って差し上げてください!」

しかも何やら大変に恐縮されている。綱吉が入学直後に風紀委員会幹部の座でもずっと空席だった書記に就任したときもこんなに恐縮されたことはなかったのに。寧ろ俺らの雲雀さんに贔屓されやがって、と絡まれまくった記憶しかない。その言いようが怒りの琴線に触れて、雲雀さんはお前らのもんじゃねえ殺すぞ、と絡んできた風紀委員達を全員叩きのめしたのは言わずもがなだ。ちなみにそのあとその雲雀にも、なに勝手に僕のにちょっかい出してんの殺すよ、と咬み殺されていた。ちょっと、だいぶ、いや凄く嬉しかった。
…思考が逸れた。
焦る風紀委員の言葉にハテナを浮かべつつ雲雀と草壁を見たら、揃って苦笑された。雲雀の表情は殆ど変わっていないが、あれは間違いなく苦笑だ。

「沢田さんはもう少し自覚を持つべきですね。あなたは風紀委員にとって、委員長と同じく敬愛すべき対象なんですから。」
「え、何でそんなことになってるんですか。」
「…きみって気配とかには敏いのに、時々凄く鈍感になるよね。」
「ごめんなさい頑張ります超頑張りますから嫌いにならないでください!!!」

愛しのひとの溜め息混じりの声に泣きそうになって縋りつく。風紀委員達が突然の変貌に少しばかりの驚きを見せたが、雲雀は慣れた様子で綱吉を軽々抱き上げただけだった。小さな子供を慰めるかのように優しい行為だと、同じく見慣れている草壁はいつも思うが賢明なので口にはしない。

「本当に鈍感で、その上救いようもないお馬鹿さんだね、きみは。今更こんなので嫌うわけがないでしょう。」
「だって、だってえ…」いつだって不安なのだ。
「昔はそうでもなかったけど、最近の不審者は大体オレ絡みですし。雲雀さんの仕事増やして迷惑かけてるのある意味オレだし。ほんとは今日、風紀委員会も辞めようかと思ったんですけど、雲雀さんから離れたくないし…。」
言った刹那に空気が凍った。風紀委員は勿論、草壁と雲雀も固まっている。

「え、え?」

決して空気が読めないわけではない綱吉も流石に気づいて、思わず首を回らせた。何故だ。
瞠目した雲雀とばっちり視線が合う。声もなく問うと、ぎゅっと抱き込まれた。ぎゃー!死ぬ、心臓壊れる!

「ねえ、僕がきみをす…随分気に入ってるって、いつになったら分かってくれるのさ。しかもなに、風紀委員会を辞めて僕の傍から離れる?絶対に許さないよ。それに、僕がきみを負かすまで一緒にいるって、きみは約束したんだから。」
「う、え、は、はい?」

しまった、どきどきしすぎて何言われたのかちゃんと理解できなかった。でもやたら嬉しいことを言われたのは分かったので、とりあえず頷く。雲雀は満足そうに笑って、それから意地悪そうな顔をして、綱吉に囁いた。

「まあ、何にしたってきみは僕から離れられないだろうけど?」

全く以てその通りです!!!!!
真っ赤に頬を染めた綱吉が内心で白旗を振ったと同時に、草壁を含む風紀委員から盛大な拍手が送られた。だから何故だ。

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