小説 | ナノ


罰あろうと、この方のモノ


喧騒、喧騒、喧騒。四十六の口から次々と放たれる、怒号・罵声。
それらは幾重にも重なり、ごちゃごちゃとした雑音になって、でもそんな雑音の中でも、あの人の声はただ美しく真っ直ぐに通って。


「――成程」


雑音の醜さを、まるで浄化するかのように。


「君達如きが、この私に“判決”か」


美しさを、決して濁らせること無く、あの人の声は真っ直ぐに脳髄を刺激する。


「些か、滑稽に映るな」


如何なる時も消え失せないその余裕。美しい、何もかも。


「藍染様」


背後から怒号と罵声が飛ぶ。だがそんなものはどーでもいい。


「藍染様、藍染様」


拘束された、あの人の元へ駆け寄り、手に触れる。


「藍染様、私はずっとお待ちしています。何千年であろうと、何万年であろうと」


私は、“この方によって造られた”。この方が、私のすべてだ。


「私のすべては、貴方様のモノ」


たとえ、私自身にどれだけの罰が渇せられようとも。


「お慕い申しております、藍染様」


強く縛られた拘束具の下で、あの人が笑ったような気がした。




蕩かすような、甘い毒
(黒き拘束の下で、男は笑う)

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