またね(佐かす)


※現パロ



「…なぁ、かすが」


学校からの帰り道、二人肩を並べて足を進めていると、不意に佐助が声を出した。
私はなんだ、と短く答える。


「…もし、もしもだぜ?俺が明日どっかに引っ越しするってなったらどうする?」


「はぁ!?」


佐助の口から溢れた言葉に、呆れたような驚いたような分からない声が口から溢れた。
真剣な顔をしていきなり何を言い出すのかと思えば、本当に何を言い出すんだこの男は。
私は溜め息まじりに目の前の男を見上げる。


「何を言い出すのかと思えば…そんなことか」


「そんなことかって…俺は真剣に…っ」


「……………」


慌てて口を手で押さえたこととその一言で全部分かってしまった。"もしも"ではなく本当にコイツは明日何処かに引っ越すのだ。


「…俺はさ、かすがと離れんのは嫌だ。でも此処には残れないし…」


目を伏せながら言う男になんだかイラッしてきて、俯いてはぁーっと長い溜め息を私は吐いた。
そして顔を上げ、きっと目の前の男を睨んだ。


「お前は馬鹿か!!私と離れても携帯で連絡が出来るだろう!!男がそんなにメソメソするな!!女々しいし、お前らしくないぞっ!!」


「…っ、かすがは何で平気なの?俺と離れちゃっても寂しくないワケ?」


怒鳴ったことが逆効果だったかのように、佐助はしゅんと落ち込んでしまった。
私は又もや長い溜め息を吐いて、呆れ顔をして見上げた。


「何が平気だ、これでも私はお前と離れてしまったら淋しいに決まってる。だが私が笑顔で見送らなければ、お前はそんな顔をするだろう?私はお前にそんな顔をして欲しくないんだ」


そう言って眉尻を下げて笑うと、急に佐助から抱き締められた。
何度も抱き締められたことはあるが、何故か今までとは違う雰囲気に慌ててしまう。


「なっ!…ちょっ、佐助!?」


夕陽が差し込むアスファルトに伸びる重なった二つの影。
公衆の面前で抱き締められたということに顔に熱が集まっていく感覚を感じた。
顔を上げ佐助を見やるが、佐助の顔は私の肩に埋めていてどんな表情をしているのか分からなかった。


「……かすが」


耳元で名前を呼ばれ、身体が強張った。
急に抱き締められたりすることは慣れてるが、こうやって耳元で名前を呼ばれることに慣れない。
というか慣れろという方が無理な話だ。


「…なんだ」


「…そうだよな、ただ一時の間だけ離れてしまうだけだよな。うん、ありがとう。かすが」


「…私は何もやってないが」


短いやり取りの後に顔を上げれば、吹っ切れたような顔をする佐助。
…やっぱり、コイツに落ち込んだ顔は似合わないなとつくづく思う。
そう思うと、口の端が上がるのが自分でも分かった。


「…かすがは、俺を待っててくれる?」


何処かふざけたような笑顔で私に問う佐助。
この笑顔も暫く見れないのかと思うとやっぱり淋しいが、私はその問いにふっと笑って、佐助と私の視線が交わる。


「何言ってるんだ、お前は。私はずっとお前を待ってる。だから私以外の女を作るなよ。作ったら容赦なくお前の急所を叩き潰してやるからな」


そう笑いながら言うと、佐助は先程まで落ち込んでいたとは思えない呑気におー、怖っと笑った。
そしていつの間にか佐助の手が肩と後ろ頭に置かれ、


「俺様がかすが以外の女に手を出すと思ってんの?」


「軽いお前ならやりかねん」


「あはー、もっと信用してくれても良いんじゃね?」


「なら、もっと信用される男になって戻ってきたら信用してやる」


「お手厳しいことで」


何度か言葉を交わした後、お互いの唇が重なるのは感じた。
この一時もあっという間に終わり、名残惜しさがあるが私は笑って、愛しき人を見送った。


「またな佐助」


「あぁ、戻ってきて他の男作ってたら、俺泣くからな!」


「お前じゃあるまいし、私がお前以外の男を作るとでも?」


お互いに泣き顔じゃなくて、笑顔で見送り見送られる者。
お互いに離れるのは淋しいけど、また会えると分かってるから笑顔で見送る。
そして一度言った言葉をまた笑って口に出す。






またね
(またお互いに重なる唇)
(でもまた会えるから)
(淋しいなんて思わない)





***

佐かす大好きです。
妄想から生まれたもの。なんか佐助がらしくないですね(笑)



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