もう、限界だった。
刀を握る手は血に滑り、いつ取り落としてもおかしくはない状態で。
それでも次々と襲い来る雑兵を斬り倒していたのは只の意地だけではなかったのかも知れない。

だがもう直ぐこの拠点も落とされるだろう。傭兵の自分には既に引き際を逃しているとも言える。

どうせ負けるのだとしてもせめて、この命令で簡単に命が無くなってしまう彼等ー雑兵を護ってやりたい。
その為に敵の雑兵を斬り倒す。そんな矛盾に気が付かない振りをしながら1人、また1人と減らしていく。

「もう逃げてくだせぇ。貴女様は元々この軍の人間じゃねぇ。それなのにこうして残って下すってるのはわしらの為じゃねぇのですか。もう充分ですだ…、なぁ皆」

己の傍で死に物狂いで刀を振っていたオジサンがそう、諭してくる。これで何度目か。
第一こんな風に言われて逃げられる程、人間出来ちゃいない。
いくら戦が起きようといくら人が死のうとそれに慣れる、なんて事はない。



[ 1/2 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -