「じゃあ何て呼べば良いのよ?呼び名が無きゃ困るじゃないの」

非難するように相手へぼやけば、男は驚いた様に目を見開いた。

「…お前は怖がらないんだな。俺に名はない」

元から無いのか、忘れてしまったのか玲音は聞けなかった。

「なら、僕がつけて構わないよね?君、死んじゃってるし黄泉って呼ぶわ」

その言葉が合図だったかの様に深夜の目が見開かれた。
どうやら深夜と莉央にも黄泉の姿が見える様になったようだ。


「黄泉、か。死んだ者とはまた違うが、まぁ良いだろう。俺の名は黄泉だ」

何と無く嬉しそうだ、と玲音は思えば自分の名も口にした。

「僕は玲音、こっちが莉央。深夜と今トイレのドアの影から覗いてんのが創耶ね」

一通り紹介を終えると、玲音は小さく息をついた。

「で、別に用事も無かったんだけど…いや、待って。此処が何だかわかる?」

創耶を脅かすためだけに口にしたもので用事が無いことを素直に黄泉に伝えようとしたのだが、ふとこの場所で召喚された相手ならば此処が何だか分かるのではないかと問い掛けた。



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