最早温くなった湯に浸かる俺は間違いなく逆上せていて、故に思考回路もゆっくりゆっくりとおかしな方向へ回っていく。 そう、逆上せてるのが原因なら本当に良かったのに、まったくもって正気でやってることなんだから自分でも呆れるばかりだ。 浴槽に張られた湯はもこもことした泡だらけで、この部屋は、ああひたすらに石鹸の心地好い匂いが充満している。 一捻りシャワーで洗い流せば、この感情だって泡と石鹸と一緒に排水口の奥へ流れ落ちていく気がする。 そうだ、俺は人間じゃないんだ。 人間の容姿、人間の行動、人間の感情さえも揃っているけど人間にはなれないアンドロイド。 喋る事も苦手、ただ歌うことしか出来ないのだ。 そんな俺が、 マスターに対して 恋愛感情なんて抱いちゃいけない。 「…分かってるつもりだ」 自分に言い聞かせる。 コックを捻る。シャワーから湯と湯気が出る。泡が流れていく。 浴室に、石鹸と湯の匂いが広がる。 曇った鏡、少し赤く火照った顔を逆上せたからと思い込んだ。 まみれた泡を石鹸で洗い流して (バスタオルから香る洗剤の匂いに顔をうずめた) * 久々に書き終えられた奇跡の一作品です。 VOCALOIDにお風呂は必要なのかとかただの下ネタになりかねないものだとかそこらへんは勘弁してやってください。仮に変態だとしても変態という名の紳士です。 お粗末様でした。 09,09,21 蜜蜂 [*前] | [次#] ページ: |