「遊んでばっかりいるからですよ」
 手厳しい言葉が頭上から降ってくる。
「あらら、七緒ちゃん」
「ばあば」
 厳しい表情で、孫たちの視線に合わせしゃがみこんでいる春水を見下ろす。
 南槻は祖母に駆け寄り手を伸ばした。
 七緒は南槻を抱き上げ笑顔を向ける。

「ねえ、ばあば。じいじの方がととさまよりつよいの?」
「そうですねぇ…。狛村隊長は残念ながら鬼道が使えません。力だけ、なら強いでしょうけれど、鬼道も必要な時がありますから、そうなると京楽隊長は強いですからねぇ」
 七緒はあえて二人を役職で呼ぶ。
「きどう?」
「ええ。例えば、手で地面を叩くと手が痛くなるでしょう?」
「うん。おてていたくなるよ」
 南槻が両手を差し出して頷く。そんな仕草を可愛らしいと思い頷きながらも説明を続けた。
「でも、鬼道というもので叩くと手が痛くないのに、地面に穴をあけたりできるのですよ」
「そんなことできるの!?」
「ええ」
「すごーい!じいじそんなことできるから、ととさまよりつよいの?」
「そうね。京楽隊長は、長く隊長をされているから、たくさん戦い方も知っています。たくさん知っている事があると、色々な事に役に立ちます」
「ばあばみたいに?」
「そうよ」
 知恵と知識は戦いにはとても重要な要素である。
 何より、左陣は実直過ぎる所がある。柔軟な考え方をする春水には叶わないであろう。

「…だから、あなた達がお父様を支えられると良いわね」
「ととさまを?」
「そう。お父様が苦手な所を、あなた達が補えるようになると良いと思うわ」
「きどう、つかえるようになれば、ととさまつよくなる?」
「なると思うわ」
 その為に、全てに万能である鉄左衛門が側にいると思ってもいいだろう。
 上を目指す為に力だけでなく、歩法も鬼道も鍛錬した鉄左衛門が側にいるのだ。

「ばあば、きどうおしえて!」
「ぼくもー!」
「おれもー!」
 三人は七緒の説明に俄然やる気を出した。
「ええ〜…遊ぼうよぉ」
 対してがっかりした表情になったのは春水だ。訓練などしても面白くないと言わんばかりだ。
「…京楽隊長…子供たちがせっかくやる気を出しているのに、やる気をなくすような事をおっしゃらないでください」
 春水を振り返った七緒の表情は、それは恐ろしかった。
「ご免なさい」
 春水があっさりと頭を下げる程に。


 さて、三つ子達がやる気をだして、それに対して反応を示したのは、春水と七緒の三つ子達である。
 七番隊で訓練をするのには不都合がある為、八番隊まで連れてきたのだが、狛村家の三つ子達が何かをするなら自分たちも一緒にしたいと、騒ぎ出したのだ。


 少しずつ訓練を始めている三つ子達は、全員七緒からの贈り物で小さな道着を持っていた。六人とも道着に着替えて、ずらりと並んで座る。
 六人並ぶと小さくとも中々圧巻である。
 七緒は満足そうに頷き、六人を眺めた。春水は退屈そうにだらしなく壁に寄り掛かって様子を眺め、三夏はその隣で正座して見守っている。


 七緒が子供たちにも解りやすく噛み砕いて説明をしていく。三夏自身も七緒から学んでいるので懐かしむ表情だ。
 改めて母の言葉に頷きながら子供たちを見守る。

 通常ならば遊びを交えて教えるところだが、鬼道は危険を伴うので決して遊び半分で使用しないように言い含める。
 決して両親の許可なしに使用しないこと。
 使用するときには人に向けないことなど。
 鬼道は暴発することもあるからだ。

 だが、七緒はしっかりとその辺りも考えていて、攻撃の破道よりも先に縛道から教えることにしていた。




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