1/444444hitリク!「視察」


 
 芸術の秋、読書の秋、運動の秋など様々言われるように、秋は現世でも発表会の季節である。
 瀞霊廷も現世の行事に感化されることがある。

 真央霊術院でも例外ではない。

 死神の仕事はどんな場所で、どんな事が起こるか解らない。
 不測の事態に備えられなくてはならない。
 緊張感を持ちつつも、緊張しきっていて手が震えては意味がない。それでは我が身が危険にさらされてしまう。

 そんな事に対応できるように、発表会に似たような事も行われる。それは、死神の代表である隊長格のお忍び視察などが含まれる。

 今回は八番隊に白羽の矢が立った。
 学院側としては気を利かせたつもりなのだろう。八番隊の隊長と副隊長の子供が学院で学んでいるのだから。

「まあ、ボクはいいけれどねぇ…」
「一秋さんが嫌がりそうですね」
 案内の手紙を手に春水も七緒もさすがに苦笑いだ。
「せめて山じいくらいにしてくれれば、いっそ吹っ切れていいだろうにねぇ…」
 次男や娘達ならともかく、長男は少々反抗気味な所がある。そんな状況で母親ならともかく父親に授業風景を観られるのも嫌だろうと思えるのだが。
 一秋にしてみれば赤ん坊の頃から付き合いのある護挺十三隊の隊長や副隊長に参観されるのは、気まずくて仕方ないだろうと容易に想像がついてしまうのだ。

 他の学院生にしても、親が死神であっても既に死別しているものもいれば、流魂街出身者など血を分けた親兄弟など、いないもの達も数多い。
 従って現世のような「授業参観」という父兄参加型は行われることはない。その代り、視察などは頻繁に行われているのだ。
 隊長や副隊長の視察もその一環だ。
 即戦力の期待はさることながら、優秀な者はできれば自分の隊に欲しいと当然思うものだ。隊長からの抜擢も当然ある。
 成績表だけでは推し量れない部分も含まれる。それには実際に自分の目で確かめる事が一番だ。
 自主的に動く熱心な隊長も居れば、命令がなければ動かない隊長も居る。

 そして、春水はどちらかというと熱心ではない隊長である。だからこそ、学院側からの要請も出たのだ。
「まあ、たまにはいいかな…」
「そうですね」


 そうして、当然息子には内緒で、学院に向かう事になったのだった。



 抜き打ち、お忍びなので、二人は授業が始まり生徒達が室内にこもった時間を見計らって訪れた。

 学院長も元へと向かい挨拶を済ませると、学院長自ら案内を申し出た。
「いや、いいよ。自分で観て回るから」
「しかし…」
「…息子の霊圧くらい解るよ」
「はっ」
 春水の笑みと言葉にもっともだと頷き、頭を下げて送り出した。



「…真っ先に行こうか。うろうろしてるとばれちゃうだろうし」
「そうですね」
 春水の提案に七緒は頷いた。

 一秋の霊圧を探りそちらへ足を向ける。

 どうやら、道場での実習らしい。
 高まった霊圧に、二人の口元に笑みが浮かぶ。

 入口側で気配を押さえて中を窺うと、一秋は竹刀を構え真っ直ぐに相手を見据えていた。
 刀を構えつつ、鬼道を行うようだ。



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