どれだけ体を重ねようとも、子供を作らないようにした。


「……ギン」
「ん?」
 乱菊が体をすりよせ、足を絡めてくる。思わずギンの口角がつり上がる。
「……もっと欲しいん?」
「そうよ…さっさと勃たせなさい」
「さっき、よおさん子種注いだったのに…」
「あら、全然足りてないわ…七緒ややちる達の方がたくさん注がれてるのに」
「う…それは言わんといて…」
 乱菊の指摘にギンは力なく呻いた。
「何…さては、更木隊長とやちるの…見たわね」
「見てしもうた…あれはアカン…今のボクには大打撃や…」
「あら、どうして?もう好きなだけ、遠慮なくできるのに」
 首を傾げる乱菊に、ギンは苦笑いを浮かべる。
「ん…それは嬉しい。けどなぁ…」
「けど?」
「……ボクちょっと不安なんよ…」
「何が?あんたが不安って…」
 じっと乱菊に見つめられギンはいたたまれなくなり身動ぎをした。乱菊に求められることは素直に嬉しい。寧ろ自分も求めている。お互い失くした時間を補うかのように愛し合うことも、とても嬉しい。

 ギンはうっすらと目蓋を持ち上げ、乱菊を見上げた。
「どうしたのよ」
「……乱菊は…ボクとの子供…欲しいん?」
 おずおずとした発言に乱菊の眉間に皺が寄った。
「あんた、あたしの何処見てるのよ」
 低く怒気の篭った声に、ギンはびくりと体を震わせた。
 自分はいつからこんなに憶病になってしまったのだろう。乱菊の一言一言に振り回されるなど、過去にはありえなかったのだ。どうやら長い間独房での刑は、思いのほかギンの心に何かしらの作用を及ぼしていたようだ。
 
 乱菊はギンの様子を見て溜息を吐きだし、寂しげな笑みを浮かべた。
「バカね。欲しくないわけないじゃないの…」
 小さく呟くような声は優しくて甘い。
「七緒たちの子供が生まれて、大きくなって…あんたの子供がいたらって…あたしが考えなかったと思うの?」

 同僚たちがどれだけ羨ましいと思ったことか。
 いっそ自分を慕ってくれる誰かと結婚してしまえば、この寂しさは埋まるのではないかとも思った程だ。
 だが、今こうしてギンと再会し体を重ねると、そんな愚かな選択をしなくて本当に良かったと感じている。

「ご免な…また泣かせてしもうた…」
 指先で涙を拭い、頭を引き寄せて自分の胸に押し当てる。
 胸に落ちる涙の冷たさが、心に染みる。

「…ぐすっ…」
 ギンは優しい手つきで髪を撫で続ける。この美しい女性は自分を待ち続けてくれていたのだ。
「ありがと…ボクの子供欲しいって思ってくれてたんやね…」
「ん…」
 ギンの優しい声の響きに乱菊は小さく頷いた。自分は思った以上にギンを想っていたようだ。強がった振りをしていたものの、こうして彼の腕に守られるように抱かれているのは心地よい。

 今なら素直に思える。
 ギンの子供が欲しいと。

 そう思った瞬間、体が素直に反応する。体の奥が熱く潤いギンを求めている。
「…ギン…」
 艶増した声にギンが気がついた。
「ん?乱菊…ん?」
 唇が塞がれるように重ねられ、舌が進入してくる。乱菊からの激しい口付けに一瞬驚いたものの、舌を素直に受け入れ乱菊にゆだねる。彼女には自分を貪る権利があるのだから。

「ふあ…」
「ぷはぁ…」
 乱菊が離れ腕で唇を拭うと、上体を起こして圧し掛かった。


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