「何故、解る」
「ボクがどれくらい、隊長してるか知ってるかい?」
「……」
 つまりは流魂街の様子だけでなく、放浪している魂の様子も知っているということだ。
「ほら、君達最後は帰刃していたでしょう?つまり一緒に送り込まれている可能性が大だ。心中や同時に事故の場合同じ場所に辿り着くことが多いからね」
「そうなのか…」
 仮面のないリリネットの頭を撫でる。
「…不思議だねぇ?君達、元は一人だったんでしょう?」
 行儀悪く肘をつき盃を口へ運ぶ。
 スタークがリリネットを慈しむかのように撫でる様子に興味を覚えたのだ。
「…一人でも、別人だった」
「そう」
「…あなた、野暮でしょう?」
 七緒はちらりと春水を見る。
「まあね」
 春水も軽く目を見張って見せ笑みを浮かべた。

「当分行き先も目的もないだろうし、泊まっていくといいよ。部屋はたくさんあるからね」
「…え?ああ」
 言われてみれば春水の事を思い出し、面会を申し込んだものの、何かするわけでもなく、目的もない。
「…あんたは、平気なのか?」
「だって、死神の仕事だもの。暴れる虚を退治するのは、倒すだけじゃないんだよ。昇華させることも目的の一つだ」
「そうなのか?」
「そう。ボク達死神の斬魄刀は魂を正常な場所へ送る為のもの。迷う魂を見つけ魂送し、虚を見つければ斬ることで虚化以降の罪を洗い流し導き、昇華させる」
 春水の説明にスタークは目を丸くした。そんな理由があったとは思いもよらなかった。
「ボクも破面を斬ったのは君が初めてだから、どう作用するかは解らなかったけれど」
 そもそも、破面の存在自体が当時は新しかったのだから、初めてなのは当然だ。
 当時は惣右介が随分と空間を弄っていたため、本来あるべき秩序も狂っていて、喜助やマユリ率いる十二番隊が修復するのに随分と時間が掛ったものだ。恐らく、ここまで昇華が遅れた理由の一つでもあるだろう。

 当時も恨みつらみがあって対峙していたのではない。
 いやいやながらに重い腰を上げていたのだ。
「…参ったな」
 スタークは苦笑いを浮かべるしかない。自分の考えなど遠く及ばない相手に、議論を吹っ掛ける気力などない。ありがたく春水の厚意を受け取ることにした。
「…しばらく、世話になる」
「どうぞ」
 春水は笑顔で頷いた。

「…所でさ、暇でしょ?うちの子どもたちの子守しない?」
「は?」
「おーい、秋五君、六冬君、夏七ちゃんおいでー」
「「「はーい」」」
 隣室で様子を窺っていた子供たちは勢いよく襖を明け放って飛び込んできた。
 小さな同じくらいの背丈の男の子達が、春水の膝の上へと争うように座り、娘は母親の膝の上へとちょこんと座った。
「三つ子でねぇ、しかもやんちゃ盛りで手が掛るんだよ。今も一応一人手伝ってもらっているんだけれどね。彼女一人じゃ手にあまりはじめて」
 隣室で一緒に控えていた少女が一礼して入ってくる。
「彼女はうちの隊員。出雲水緒ちゃん。将来のうちの嫁」
「…は?」
 おかしな紹介の仕方にスタークは目を見張る。
「上に、成人した子供が四人いるのです。次男の恋人なんですよ」
 七緒の説明に、目を丸くする。先程春水がさりげなく口にした数百年と言う年月は嘘ではないのだ。
「あんた、どれだけ子供がいるんだ」
「ん?七人。ちなみに、孫もいるよー。長女が嫁いでね。こっちも三つ子でねぇ、すっごく可愛いんだぁ」
 春水の自慢げな表情にスタークは驚きっぱなしだ。

「まあ、ちょくちょく遊びにくるから、そのうち紹介するよ」
「あ、ああ…」
 既に情報が飽和状態でもある。

 とりあえずの居場所が確保できただけでも、ありがたいことだ。時間はあることだし、ゆっくりと知っていけばいい。
 それに、小さな子供たちに接することを嫌だと思えない。独りではないと、強く感じられるからだ。
 何より、幸せそうな春水や七緒の表情が酷く羨ましい。
 仲間と家族に何か違いがあるのだろうかと思えてくる程に。


[*前] | [次#]

[表紙へ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -