時止めAVみたいなのできるけど興味あったりするの〜?って悪ふざけで聞いてみた結果、いつも以上にしつこいし多分時止めより酷い目にあった。
空条承太郎は、スタンド使いだ。
「スタンド」というものがなんなのかについては見えないのでイマイチわからないのだけれど、SPW財団の端くれとして、理解はしているつもりだ。彼のスタンドがエジプトでの宿敵DIOとの戦いで、時を止める能力を開花させたという話も、噂としては聞いている。
「無敵のスタープラチナ、って呼ばれてるの知ってる?」
「…興味ねえな。」
帰ってきた返答がそんな言葉だったから、きっと知っているのだろう。それを喜ぶような男ではないのだろうけれど、目の前のポーカーフェイスからは、自分を無敵と謳われることについての感情は読み取れなかった。
私と恋人関係にあるこの空条承太郎は、どんな噂をされようととりあえず男子高校生であることに間違いはない。
「…何だ。」
「え?いや…承太郎は時間が止められるんでしょう?」
私が見上げると、彼は不思議そうに視線をこちらへ向けた。だからどうした、とでも言いたげな瞳に、悪戯な笑みを返す。
「時間止めてる間に、えっちなことしたりしないのかなぁ?って。」
いわゆる「時止めAV」というジャンルがあることを先日知った私は(なぜ知ったかについては問わないで欲しい)、あぁそういえば承太郎がそんなことできたっけな、という謎の感想を持った次第で。
「…てめえは俺をなんだと思ってやがる。」
「え、そういうのに興味あるのかなー…って。」
高校生だし、そんなことできたらやりたい放題じゃん。思わずそんな言葉を零してしまったことを、すぐに後悔した。「…そうかよ」と返す承太郎が、あまりに恐ろしい笑みを浮かべていたから。
「だったら期待に応えてやらねえとなぁ?」
あぁ、やぶへび。
ちょっとイチャイチャできるかなぁとか、そういった下心がなかったわけじゃあないけれど、これはそんなんじゃあない。餌を目の前にした獣の顔だ。
私が逃げ出そうとするよりもずっと早く、承太郎は私を壁に縫い止めた。もがいてみたけれど、当然ながら逃げ出すことなんてできない。
「…んッ…!」
壁に押し付けられたまま噛み付くように口付けられて、舌を捻じ込まれる。ぬるつく舌が口内を這い回る感触は、いつになっても慣れやしない。
「…で、どうして欲しいって?」
意地悪く笑って見つめられる。あぁこれはもう逃げられない、と私は蛇に睨まれたカエルよろしく微動だにできないまま、ごくりと喉を鳴らした。
*****
気付いた時には、ベッドに組み敷かれていた。
これがスタープラチナ・ザワールドというやつか、と、目の前の男を眺めながら思う。承太郎はお望み通りやってやったぜとでも言いたげな顔で私を見下ろしていた。
「ちょ、時間…止め…ッ…」
「数秒しか止められねえんでな。…せいぜいこの程度だ。」
だがそんなもんなくたって、てめえを満足させることはできるぜ。
おおよそ高校生が吐きそうにもないセリフを唇に乗せながら、彼は私の服を脱がしにかかる。普段よりもずっと乱暴な手付きに、洋服が破れてしまうんじゃないかと思った。
「…ッ…じょ、たろ…」
「ななこが煽るのが悪ィんだからな。」
首筋に歯を立てられて身体がびくりと跳ねた。このまま頸動脈を噛みちぎられてしまうんじゃあないかと恐怖してしまうくらいに、肌に食い込む犬歯。
「…ッ、痛い…よ…」
「その割には良さそうに見えるぜ。」
噛み跡をべろりと舐められて、背筋がびくりと跳ねた。痛みだったはずの熱は、じくじくとした疼きに変わって全身に広がっていく。承太郎の大きな手が、露わになった胸を鷲掴みにした。手のひらが胸の先端を掠め、また身体が跳ねる。
「…そ、んなこと…ッな…」
「だったらてめえの身体に聞いてやろうか」
そう言うと承太郎は私の胸元に唇を寄せ、すでにぴんと張り詰めている突起に歯を立てた。
瞬間、身体に電流でも流されたかのような衝撃が走る。
「ぅあああぁっ!」
「…随分と素直じゃあねえか。」
私の反応に気を良くしたのか、承太郎は執拗にそこばかりを責め立てた。舌先で転がし、吸い付き、歯を立てる。もう片方は指先で押しつぶし、爪を食い込ませ、挙句には「どっちがイイんだ」なんて。
「…やっ、やぁ…ッ、も、やだよ…」
気持ちいいとは到底思えないような痛みのはずなのに、胸から広がるうちに何を間違えたのか、下腹部に甘い疼きが溜まっていく。
いやいやとかぶりを振っても許してはもらえず、私は力の入らない手で承太郎の後ろ髪を引いた。
「やめてもいいのか?」
「…ちが…ッ…」
もうどうして欲しいのか、自分のことのはずなのにわからない。そもそもこれは痛みなのか快感なのか。ただこのまま放り投げられることを、少なくとも私の身体は望んじゃあいなかった。
「承太郎っ…」
切羽詰まった私の声に、承太郎は「煽るんじゃあねえぜ」と溜息を吐き、私の片足を持ち上げた。既に熱を持った秘部は濡れているのだろう、外気に晒されて少しばかりひやりとした。
「…噛まれて感じるのか。」
「ちが、ッ…ぅあ…」
大きく割り開いた足の間を覗き込むように承太郎が顔を寄せる。吐息が掛かりそうなほど近くで見つめられていると思うだけで、浅ましくヒクついてしまうのが止められない。
「違わねえだろうが…」
「やだぁっ…見ないで…ッ…」
足に力を込めたところで承太郎に敵うはずもなく、ならばせめてと覆い隠そうとした手は、見えない何かで縫い止められた。スタンドの仕業なのだろうか。
「…触ってもいないのに随分だな…」
喉の奥だけで笑いながら、まじまじと見つめられる。視線が肌をジリジリと焼いているみたいだ。触られていないのに、熱が溜まっていく。もしかしたら彼が普段よりもずっと饒舌なせいかもしれない。
「じょ、たろ…」
どうしていいかわからないままに絞り出した声は、浅ましくねだるような響きを含んでいた。承太郎は私の言葉に答えるように指先をそっと滑らせる。ただそれだけのはずなのに、望んだ以上の刺激が私を容赦なく追い立てた。
「…ッあ!ああっ、や、ッあ!」
沈み込む指先に擦り上げられて、溜まり込んだ熱が勢いよく弾け飛ぶ。私の姿を目の当たりにした承太郎は驚きに瞳を丸くして、それから唇の端を持ち上げた。
「いくらなんでも早すぎんだろ、」
身体を戦慄かせる私のことなんてお構い無しに、彼は尚も指先を動かし続けた。打ち上げられた魚みたいに身体を躍らせても、何一つ楽になんてならない。助けてほしくて涙混じりに何度も承太郎の名前を呼んだ。
「じょうたろ、じょうたろ…ッ、や、あ、ッあ!」
「まだ始まってもねえんだ、しっかりしろよ…」
彼はそう言うと沈めていた指先を抜き去り、代わりに熱く猛る自身を押し当てた。圧倒的な質量に躊躇いもなく一気に貫かれ、言葉にならない悲鳴が上がる。息つく暇もなく大きな身体に抱き締められ、そのまま何度も穿たれた。
「ぅあ、ッん!っ、あっ、やあぁっ、」
ガンガンと責め立てられ、呼吸すらうまく出来ない。もう嫌だ、たすけて、やだ、もっと、じょうたろう。
思考すらまとまらないまま、熱だけがぐるぐる回って、弾けて、繰り返し繰り返し。
「…ななこッ…」
時折耳元から流し込まれる承太郎の声だけが、私を現実に繋ぎ止めている。けれどそれすらも、もう長くは持ちそうにない。
「やぁあっ、じょ、たろッ、だめ、やあぁっ、あぁッ、ぅああぁ!」
何がなんだかわからなくて何度も声を上げたけれど、誰も助けてなんかくれなくて、ただただ目の前の身体に縋り付くことしかできなかった。
*****
「…っう…ひどい…」
かさかさに嗄れた声で非難したけれど、目の前の男は涼しい顔で煙を吐きながら「何がだ」と一言零しただけだった。
「…承太郎がっ、」
「元はと言えばななこ、てめえのせいじゃあねーか。」
そう言われても、何が発端だったのかすら今のぐらつく思考では思い出すことができない。汚れた身体の後始末も、承太郎に文句を言うことも全部全部諦めて、私はべたつくシーツの上に意識を放り投げた。
20160819