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4.雨が続くと、君がいない

『夜半から降り続いた雨は今後も続き、明日以降もぐずついた天気となるでしょう。』

テレビからはそんな声が聞こえる。気象予報士は傘をさして、温度計の隣に立っている。

ここ数日は、やけに静かだ。

眠る前も起きてからも、キョロキョロと辺りを見回したけれど、もう見慣れてしまった変わった色の髪は見つからなくて。
普段なら着替えを抱えて慌てて浴室に逃げ込むのに、部屋で着替えても何の声もしない。
花京院くんはどうしてしまったのだろう。

毎日水を入れ替えるのが日課になってしまった霧吹きだって、中身が全然減らない。
この部屋はこんなに静かだったっけ。

どうしたんだろう、花京院くん。

今度ばかりは空条くんだって行方を知らないだろうし、誰に聞いたらいいかもわからない。

また居なくなるなんて、そんなの嫌だよ…

それから数日、家にいても学校に行っても、やっぱり花京院くんは居なくて。

意地張ってないで、好きって言えば良かった、なんて後悔が募る。
居なくなってしまったときにあんなに後悔したのに、私はまた同じ過ちを犯してしまった。いくら悔いても、花京院くんはいない。


*****


「…いい天気…久しぶりだなあ…」

眩しい朝日で目が覚める。
カーテンを開けると明け方まで雨が降っていたのだろう、濡れたアスファルトがキラキラと朝日を反射している。

「「やっと晴れた」」

呟きに重なる声。
咄嗟に声がした方に振り向くと、ずっと逢いたかった彼の姿。

「か、きょー…いん、…くん…」

「…久しぶり。」

彼は優しい笑みを浮かべて、いやぁ水に弱いって雨もそうだと思わなかったよ、なんて。

「花京院くん…」

「え、うわ、泣かないでよどうしたの?」

目の前の花京院くんが涙で歪む。いなくなったのかと思った、会えてよかった。なんの言葉も出てこない。

「っ…う…」

ぽろぽろと涙が零れる。花京院くんは慌てて私の涙を拭おうと指先を頬に当てたけれど、彼の指先は私には触れず、涙に溶けて消えた。

「…ごめんね、涙を拭ってあげることもできなくて…」

寂しげな笑顔を浮かべて、彼はもう一度「ごめん」と告げる。花京院くんが謝ることなんて、何もないのに。

「…わたしこそ、ごめんなさい…」

「え、ななこが謝ることなんて…なんにもないよ!?」

僕がいなかったせいで寂しい思いをさせちゃったんだろ?と相変わらず気障ったらしいことを平気で言う。
あぁ、彼くらい素直に言えたらいいのに。

「花京院くん…あのね、」

「…なんだい?」

上手く言葉が出ない。金魚みたいにぱくぱくと唇を動かしているのを花京院くんが優しげな瞳で見ている。

「…すき、です…」

やっとの思いで告げた言葉は消え入りそうに震えていたけれどちゃんと彼には届いたようで、それはそれは嬉しそうに笑った。




「今ので僕、成仏してもいいかなって思ったよ。」



それは、困ります。


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm