仗助の同級生彼女が承太郎に寝取られる話。
寝取られたかどうかはご想像におまかせレベル。
夢主がヤンデレでひどくうざいです。
わたしは、東方くんのことが知りたい。
なんでもできてカッコよくて、大好きな東方くん。わたしなんかとはまるで違うのに、なんだって手に入りそうな彼はなぜだかわたしを好きだと言ってくれた。それはとても嬉しいのだけれど、どうしたって不安は拭えない。
からかわれてるんじゃあないか、って思うこともあるし、夢なんじゃあないかって思うこともある。…わたしのこと、すき?なんて聞いたら、今の幸せが全部なくなってしまいそうで、怖い。
「…どうした。」
「…承太郎さん。」
泣きそうな顔をしている、と、目の前の大きな白い人間は言った。この人は仗助くんの甥(複雑すぎて何度聞いても私にはよくわからない)で、よくわたしを気に掛けてくれる。
仗助くんを通して出会ったのではなく、海辺を散歩中に知り合った(しかも実は仗助くんと付き合う前だったりする)ので、彼らが親戚だと聞いて、世間とはなんて狭いんだろうか…と驚いた次第である。
「…不安なんです。わたし。…仗助くんは、どうしてわたしなんかと付き合ってるのかな、って。」
「…そりゃあ、好きだからに決まっている。」
承太郎さんはいつもみたいに淡々と、落ち着いた声で言った。安心させてくれようとしているのはわかるけれど、どうしたって拭えない。
「…仗助くんはモテるから…わたしじゃなくたって…」
「…仗助が、君を選んだんだろう。」
自信を持ちなさい、と承太郎さんは言った。
それでも不安を隠さないわたしに、彼は多少の苛立ちを溜息で隠しながら、東方くんが適当な男ではないこと、思い悩むくらいならきちんと確認すればいいことなどを根気よく説いた。その姿はわたしに、二人の絆が確固たるものであることを伝えた。
わたしは、思う。
「あ、わたしより東方くんのこと知ってるんだ。悲しい。わたしと承太郎さん、どっちが大事なんだろう…」
どう考えたって、私の負けだ。彼女だって結局は他人だから、血の繋がりには勝てやしない。だってほら、承太郎さんの首筋には東方くんと同じ星が煌めいているから。
「だからななこ、君はもう少し仗助を信じてやった方がいい。」
「嘘、うそです承太郎さん。…わたしなんて、」
「嘘じゃあない。」
わたしのことが面倒だから、そう言っているんじゃあないかって、気持ちが拭えない。
承太郎さんのことも東方くんのことも信じきれないわたしが一番いけないって、本当はわかっているんだけど。
「ほんとう、なら。承太郎さんの言うことがもし本当なら、…確かめさせてください。それを。」
「…ななこ。」
続けたわたしの言葉を嗜めるような響き。でもわたしは、東方くんが知りたい。
「だって、そう言ったのは承太郎さんでしょう…?」
非難するように見つめれば、承太郎さんは呆れたようにやれやれだ、と呟いた。そうやって、人のせいにして誰かを試そうとする私は、ズルいと思う。
「…だったら全部、俺のせいにすればいい。」
そしてやっぱり承太郎さんは、大人で、優しかった。
*****
「ひがしかた、くん。」
「…どーした?ななこ」
悲壮な面持ちのわたしを見て、心配そうに眉を下げる東方くん。優しい瞳が好きだなと思う。
「わたし、承太郎さんとセックスした。」
「…は?」
まんまるい目を更に丸くして、ぱちぱちと瞬き。どんな表情でも、彼はうつくしいな、なんて。
「…何言って…え?冗談だろ?」
答えないわたしに、東方くんの苛立ちが募る。視線が刺さって痛い。彼は痺れを切らして、わたしの両肩を掴んで揺すった。
「なぁ、ななこ…嘘だろ!?冗談っスよね…?」
こんな表情、初めて見る。わたしの知らない東方くん。いつもと違う、燃えるような鋭い視線。尚も黙り込むわたし。
「…なんで、だよ…ッ…」
ぎり、と肩に爪が食い込む。東方くんの手は今までずっと優しかったのに。
「…承太郎さんは、…東方くんはちゃんと、私のこと好きだって。」
「はァ!?意味わかんねー。俺がななこのこと好きだって知ってて、なのにセックスすんの!?」
吐き捨てるように言って、私の肩を床に押し付ける。ゴッ、という重い音がして、私は後頭部をしたたかに打ち付けた。いたい。
「…ッ…東方、くん、」
「…なんでだよ…ッ…」
殴られるか、首を絞めて殺されてしまうか。そんな覚悟をわたしにさせるほどの瞳で、彼はわたしに口付けた。
「…っ、んぅ…」
舌を引きずり出されて、ぐちゃぐちゃに絡ませて。食い尽くされてしまうみたいな口付けの合間に、乱暴に衣服が剥がされる。
「…なぁ、承太郎さんに抱かれたくて、俺と付き合ったの?」
「…ちが、ッ…」
首を振ると、彼は嘘つきとわたしを嘲笑い、慣らしもせずにその剛直を捩じ込んだ。僅かに濡れた粘膜がぎちぎちと軋みながらそれを受け入れる。苦痛に上げたはずのわたしの声は思いの外濡れていたけれど、彼にはきっと届いていない。東方くんの方がずっと、痛そうだった。
「…だから、ッ、そんなずっと…名前も呼んでくんねーの…?」
承太郎さんは名前で呼ぶ癖に、と東方くんは顔を歪めた。笑っているような泣き出しそうなその表情は、やっぱり美しかった。
わたしは、彼の名前を呼ぼうと思って唇を開いたのだけれど、東方くんが遠慮もなく律動を始めるものだから、開いた唇からは悲鳴染みた啼き声しか出せなかった。
「あっ、ぐぅ…ッ、は…」
突き込まれる度に内蔵がぐちゃぐちゃに掻き回されて、死んでしまいそうだと思う。苦しくて泣きたくて、ひどく、しあわせ。
「やっ、あ、…ッ、こわれちゃ…うっ…!」
「壊れちまえばいー…そしたら…、俺がっ、治すから…ッ!」
東方くんはわたしの手をぎゅうっと握って、ガツガツと音がしそうなくらいに肌を打ちつける。その度に、わたしの不安が崩れていくような気がした。
「やっ、あ、あ!ッは…ぁ、ひ、がしか、たく…ッ…や、ぁっ、やだぁっ、」
「そんな気持ちよさそーな顔でッ…イヤなんて、ぜーんぜんっ、説得力ないっ…スよッ…」
そうやって、承太郎さんにもイヤだっつったの。もっと、って顔してイヤって言ったんだろ。
そう言われて、背筋が戦慄いた。わたしは馬鹿だ。そんなことで、感じてしまうなんて。
「…っあ、ああぁッ!!」
打ち上げられた魚みたいにびくびくと背をしならせるわたしの奥で、東方くん、が、
*****
ふんわりと髪を撫でる手が優しくて、わたしは瞼を持ち上げるのを諦める。
「…なぁ、俺…どうしたらいーのかわかんねえよ…」
やわやわと髪を撫でる手は、いつもの東方くんの手だ。それは嬉しいけど、ちょっとだけ悲しい。
目を閉じたまま、ほんの少しだけ東方くんに近付く。彼はきっと困った顔でわたしを見ているのだろう。突き壊されたはずの不安が、小さく音を立てた気がした。
わたしの肩にも、星が煌いていたらいいのに。
20160510