「桜の下には殺されて犯された男子高生が埋まってるんですよ。」
桜の開花のニュースを見ていたななこが突然言い出した。
「犯されて殺された女子高生、の間違いじゃないのか?」
順番と性別がおかしいだろうと思って聞いてみたが、彼女が言うには間違いじゃないらしい。
「私の好きなアーティストさんが、そう歌ってたんですよー。」
へへ、と笑った顔はいつもの可愛らしいななこだったが、その発言は聞き捨てならない。
どんな趣味なんだこいつは…
「ななこ、一応聞くが、きみの好きなアーティストっていうのは…?」
「あれ、先生に言ってませんでしたっけ?」
それからななこは好きなアーティスト名を教えてくれたが、ぼくには聞いたこともない単語だった。
他にも、電車に飛び込む女装癖のサラリーマンの歌とか、自殺した男子生徒のことが好きだった生徒(もちろん男子)が手紙を飛ばす歌とかがあるらしい。
そんな歌が存在するのか。むしろ一周回って興味深い。
「他人の趣味をとやかく言うつもりはないが、なんというか…すごいな。」
「露伴先生のことが大好きなくらいですし、変わってるのは承知です。」
爽やかに笑っているが、それはぼくを選ぶことが悪趣味だと言っているのか…?
「…ぼくをなんだと思っているんだきみは。」
「そりゃあ、岸辺露伴先生ですよ。」
ななこはこともなげに答える。
ぼくはこいつが驚いたり、慌てたりするところを見たことがない。
突然唇を奪おうが、押し倒そうが目隠しをしようが平然としている。
いつか慌てさせてやろうと思っているが、ムキになるのも大人気ないと思ってまだ実行できないでいる。
ぼくが好きだと言ったら、君は驚くだろうか。
それとも、犯して殺してしまおうか。桜の木の下で。
「…ぼくも大概悪趣味だな。」
君はきっと綺麗に咲くだろう、なんて。
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bkm