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それはまるで暖炉のような

「ななこ、大丈夫か?…手を。」

アヴドゥルさんは、優しい。それは彼が基本的に持っている部分だとは思う。けれどこんな風に手を差し伸べられたりすると、やっぱり戸惑いは隠せない。

「あっ、…ありがとうございます」

花京院や承太郎は一足飛びで跨ぐような水溜りだ。別に私にだって飛び越えることはできる。けれど彼が手を差し伸べるから、私はそれを取って側に立つ彼に水飛沫を掛けないように注意しながら危なっかしく足を出すのだ。

「…アヴドゥルはななこには優しいよなぁ?」

ななこは可愛いからな!もしかして狙ってんじゃあねーの?とポルナレフがからかうように言っても、アヴドゥルさんはどこ吹く風で「ポルナレフ」とまるで犬でも嗜めるように返すだけだ。それを見ているとまるで邪推するポルナレフの方が間違っているような気がしてしまう。ポルナレフ本人も「つっまんねーの」と、からかって損したと言わんばかりにその場を後にする。
残りのみんなはとっくに先に行ってしまっていて、ポルナレフは足早に彼らの背を追った。

「あの、私が女だからって優しくしなくて大丈夫ですよ?」

二人で取り残された形になってしまったから、言うなら今かもしれない。そう思って、握られたままの手を見つめながら私は告げた。私だってスタンド使いだし、ここまで共に旅をしてきた。確かにアヴドゥルさんに比べたら子供だけれど、承太郎や花京院と変わらない。彼らの方が年上に見えるとすれば、それは見た目だけの話だ。
私の言葉を受けたアヴドゥルさんは、困ったように笑って私の手を握った。

「いや、そういうわけではなくて、これは私からの精一杯のアピールのつもりなのだが」

「…え?」

アピール、とは何のことなのだろう。優しいよ、って話ならそんなことは十分に承知しているし、ポルナレフにからかわれるようなことならもっとリアクションがあっていいはずだ。ぽかんとする私を目の前に、アヴドゥルさんはひとつ咳払いをすると、やけに真剣な瞳で言葉を紡いだ。

「言わねばわからないというのなら、言おうか。ななこ…私は、君が好きだ。」

急すぎて意味がわからない。ポルナレフの軽口にも顔色ひとつ変えないから、ドキドキする私の方がおかしいんだと思っていたのに。そんな平然とした顔で、何を言いだすというのか。

「えっ、あ、あのっ…」

「…迷惑だったか?」

「いえっ、迷惑じゃあ…ない…です、けど…」

アヴドゥルさんの瞳の奥に何か、火が灯っているような気がして、私は遠ざかるみんなの背中を眺めながらしどろもどろにそう返す。

「良かった。…では行こう」

繋がれた手を引かれて、半ば強引に歩き始める。えっ、この手はそのままなの!?と思わず声をあげると、彼はこちらにウインクなんてしながら言った。

「ななこが迷惑でないというのなら、この手を離すつもりも、ポルナレフに渡すつもりもないぞ。」

「…な、んで…そこにポルナレフが、」

私の戸惑いを受け取ったアヴドゥルさんは、逆に不思議そうな顔をして、あれだけ言われてわからないのか?と言った。
ポルナレフの「可愛い」や「綺麗だ」なんててっきり冗談だと思っていたのに、アヴドゥルさんはそれをポルナレフの本気だと言う。

「私は熱くなるタチだから、あまりその、君が思っているような男ではないかもしれないな。」

まずは牽制をしておかないと、とまるで当たり前のように言われて、繋いだ手にさらに力を込められた。

20170615

#指定されたキャラかCPの強化週間を始める
沖合さまより「スタクル大人組」


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm