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燻る火は消えない。

両片想いから成就する甘い夢



日本人は幼く見えると言うけれど、人種が違うとやっぱりどこか別な扱いをされてしまうんだろうか。と、思う。

アブドゥルさんは、少しばかり私によそよそしい。私はもっと仲良くなりたいのだけれど、なんだか避けられているというか、扱いに困っているような気がする。彼はポルナレフたちとは砕けた様子で話すのに、私に対しては妙に紳士的だ。そこが好きと言えばまぁ…否定はしないのだけれど。

「子供が犬か何かだと思ってませんか。」

「…何がだろうか。」

思わずそんな言葉が口を突いたのは、どうしてだっただろう。

「…なんかこう、扱いがよそよそしいというか…イギーじゃあないんで私噛み付いたりしませんけど。」

そう続けると、アブドゥルさんは何かツボに入ったようで豪快に笑った。ひとしきり声を上げると、私の不満そうな視線に気付いたらしくすまない、とまだ笑いの残る声で謝罪を述べた。

「いや、笑いごとじゃあないです。子供に見えるかもしれませんけど、私、ちゃあんと成人済みの大人ですからね?」

ムッとした様子で言えば、彼は少し考えて、納得したといった風に言葉を落とした。少しばかりすまなそうな様子は、きっと私に気を使ってくれているんだろう。

「そうか。日本人は若く見えるから…。」

「それに、承太郎と花京院は大人びてますからね。」

私の方が彼らよりも年上なんですよ。…ちゃんと気付いて、ちゃんと見てください。
そう言いたかったのだけど、まるで告白みたいで恥ずかしくて言えなかった。

「…確かに、彼らはしっかりしているな。」

母親の為とはいえ、戦いに身を投じるなんて普通ならできないだろう。と、彼はいささかトーンの低い声で言った。
なんだか湿っぽい話になりそうなのが嫌で、私は常からの疑問を投げかける。

「…アブドゥルさん、私のこと避けてます?私、あまり話した覚えがないんです。」

「いや、ななこが他の…ポルナレフたちといる時とわたしといる時では態度が違うから…」

「そ、れはッ!アブドゥルさんだって…そうでしょう?」

思わず語気を強めると、彼は私の剣幕にびっくりしつつも、苦笑いしながら頬を掻いた。

「それは…いや、恥ずかしい話なんだが…どうにも緊張してしまって。」

「占い師さんなら、他人と話すのなんてお手の物なんじゃあないですか?」

「…仕事であればそうだろうが…」

素のままでは恥ずかしい、と彼は照れたように言った。それはまるで、私に心を許していると言われているようで嬉しい。紳士的な振る舞いはどこか他人行儀な気もしていたから。私だって、ポルナレフたちと同じ様に馬鹿をやったり笑い合ったりしたかった。

「…照れてるってことは、期待してもいいってことですか…」

思わず零れた小さな言葉は彼の耳に届いてしまったようで、アブドゥルさんは驚いたように目を丸くして、私を見た。

「えーと、なんだ…その…すまない。」

気まずそうにそう言われて、目の前が暗くなる。告白もしていないのにフラれてしまうとか、どういうことなの。
俯いた私を見て、アブドゥルさんは慌てて声を上げる。

「いや!そういうわけでは…ちょ、落ち着いてくれ、ななこ。」

「…今私ッ、フラれましたよね!?」

どうしていいかわからなくて、半ば自棄っぱちでそう言えば、アブドゥルさんは私に近づき、その大きな手で両肩を掴んだ。視線が絡んで、逸らせない。

「…違う。これは…ななこに言わせてしまって申し訳ないという意味で…あぁ、」

ぶんぶんとかぶりを振って、もう一度しっかりと視線を合わせる。彼は言いにくそうに、それでもはっきりと言葉を紡いだ。

「…わたしが、先に言うべきだと…後悔したんだ。…わたしは、ななこが好きだから…」

こんなことならポルナレフに口説き方を教わっておくんだった、なんて言うもんだから思わず笑ってしまう。
大人なのにどこか可愛らしくて、頼りになるのに世話を焼きたくなってしまう(そんなことを言ったらマジシャンズレッドに焼かれてしまいそうだけれど)。そんな彼も私を好いてくれている、なんて。

「…本当ですか。」

「…嘘なんかでこんなこと…ポルナレフじゃああるまいし。」

そのまま抱きすくめられる。アブドゥルさんの肌は私のよりもずっとしっかりとしていて、頼もしい。

「…ポルナレフに失礼じゃあないですか。」

「…構わんだろう。」

なんだかんだで仲良しだなぁ、と、私は彼の腕の中で笑い声をあげた。


20160507


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm