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SAVE!GET!LIFE!

男装夢主にちょっかい出したい花京院



女子が学ランで生活する意味はなんだろうか。ちょっと僕には理解できない。

クラスメイトのななこは、オンナノコだ…多分。身体の作りとか、声とか、なんか色々無理して「男子高校生」をしている。周りは気付いてないし、大人は何故かななこをきちんと「男子」として扱っているけれど。

「…ねぇ、ななこ。」

「…おぅ、花京院…どうした?」

「話があるんだけど、いいかな?」

悶々としていても仕方ないから聞いてみようと思った僕は、人気のない屋上に彼…女を呼び出した。

「なんだよこんなとこで。」

「単刀直入に聞くよ。…ななこさ、どうしてそんな格好をしているんだい?」

君、オンナノコだろ?と言うと、彼女の肩がびくりと震えた。

「…な、に言い出すんだよ花京院ッ!」

ふざけんなよ!と今にも噛みつきそうな勢いで声を荒げるななこ。図星を指されて慌てているのが容易に見て取れる。

「…別にバラそうとか脅そうとかいうつもりはないんだ。…落ち着いて。」

両手を上げて降伏のポーズを取れば、僕に害がないと悟ったのかななこは睨みつける視線を少しだけ柔らかくした。

「…なんで、気付いた…?」

「…君を見てたから。」

これじゃあまるで愛の告白みたいだなと、頬を染めるななこを見て気が付いた。

「…誰にも…言わないでくれ。」

「協力するよ。理由は…気になるけど、ななこが言いたくなければ聞かない。」

「気になるんなら教えてやるよ。」

ななこはそう言って、僕を手招きするとフェンスに寄りかかって腰を下ろした。
話によれば、ななこの家はいわゆる「地元の名士」というやつで、男の子が生まれなかったことを悲観したおじいさま(まさかそんな表現を聞くとは思わなかった)が、ななこを長男として育てたということらしい。

「あぁ…それで。」

納得したように頷けば、「なんだよ。」と不審げな視線が返ってくる。

「いや、学校側は流石に騙しきれないだろうと思っていたから…」

「…そこはホラ、闇の力ってやつ。金と権力って怖いよなぁ。」

先生たちも公務員だから仕方ないか。とななこは笑う。彼女は何を思って、今まで暮らしてきたのだろうか。

「…ななこは、いいの?」

「まぁ…今更女らしくしろっていうのもアレだし…下手に許嫁とか作られるよりは良かったかなって。」

おじいさまのワガママだからせいぜいあと数年だろうし、まぁ冥土の土産みたいなもんだよ!なんて。

「…ご両親は?」

「事勿れ主義だから。まぁ普段は好きにしてって感じ…おじいさまの目の届かない所は結構普通だと思う…かな。」

逆を言えば、学校は「目の届くところ」なんだと認識する。普通に考えておかしいのはその「おじいさま」の方だから、ななこが女の子になりたいと言えば、叶うのかもしれないな…なんて勝手な事を思った。

「…へぇ、でもなんだか楽しそうだ。」

「花京院、他人事だと思って!」

ぺち、と小さな拳が飛んでくる。結構大変なんだぞ、と呟く声は、思いの外重苦しい響きを含んでいた。まぁ当たり前なのかもしれない。スタンドは見えないけれど、性差は見えてしまうから。

「…まぁまぁ。僕も協力するし。…他に誰か、知ってる人いるの?」

「…いや、中学時代の友達は多少事情を知ってるやつもいたけど、高校は知り合いいないから…花京院みたいなのがいなけりゃあ、みんな知らない。」

「じゃあ、僕とななこの秘密だね。」

二人の秘密、なんて甘美な響きは漫画みたいだなと思う。僕のスタンドのことをななこに教えたら、お互いを縛り合える関係になるんじゃないかと思うとぞくぞくする。…僕は断じてマゾヒストではないけれど。

*****

女の子だとわかって見てみれば、ななこの言動は危うい。まぁ男子高生なんてじゃれ合いで肩を組んだりどついたりだってあるわけで。それはキャラクターで「許されるか」判断されるのだろうけど、ななこはノリと人当たりが良くて尚且つ小さいもんだから、良く頭を叩かれたりだとかのスキンシップをしている。僕はそのたびに複雑な感情に支配される。今までも若干もやもやはしていたけど、ななこが女の子だとわかってからは尚更それが強い。
承太郎や僕なんかは、友人からどつかれたりなんて絶対しないから、余計に気になるのかもしれない。僕だってそんなスキンシップしてみたいけれど、混ざるにはいささかハードルが高過ぎるし、見ているのだって嫌だ。

「…ななこ、ちょっといいかな。」

「なんだよ花京院、」

本当は盛り上がっているときに水を差すのは良くないのかもしれないけれど、と思いつつ、僕はさも用事があるような顔でななこを呼んだ。

「…盛り上がってるところごめん。ちょっとななこを借りるね。」

一応そう断わってななこを連れ出す。少しばかり困ったような、安心したような顔をして僕の後ろを付いてくる彼女は可愛らしい。

「花京院、」

何の用だよ、どこ行くんだ?なんて言葉に振り向いたものの、返す言葉が見つからない。曖昧に笑う僕を見て、ななこは察したのか「ありがと。」と笑った。

あぁもう、そんな顔しないでくれよ。

時折見せる幼い笑顔は女の子に見えるからダメだって言ってあげるべきなのかもしれないけれど、ななこの笑顔が見たい自分には言えなくて。
僕にだけ見せてよなんてそんな都合のいい言葉は、もっと言えるはずもなく。

「…なんだかサボりたい気分だ。…屋上に行かないかい?」

「…いいけど。」

手を引いてしまいたい衝動を、拳を握って抑え込んだ。
二人で来た屋上は、相変わらず過ごしやすい。ななこは肩の力が抜けているのか普段より幾分柔らかい表情で伸びなんてしている。青空に突き出された小さな指先は、やっぱり僕のそれより華奢だった。

「…嫌じゃあないのかい。」

「…みんないい奴だし、別に気にしないかな。」

まぁ騙してるのはちょっと心苦しいけど。とななこは苦笑した。本当女みてーだなぁ、なんて言葉を聞くたびに、僕はどきりとするんだけど、と言えばななこは「そりゃあ女だもんなぁ」と呑気に答えた。

「…まぁ、バレたらそんとき考えるよ。」

ななこはななこなりに考えたり悩んだりしているだろうことなのに、僕を気遣ってか、敢えて明るく言って、空を仰いだ。

「…いつかはバレるって、思ってるのかい?」

「…まぁなー…だってほら、並んだらあからさまに小さいじゃん?」

これからもっと差が出るだろうし…セーラー服も悪くないし!なんて言われて、僕はななこのセーラー服姿を想像する。溌剌とした表情だとか、今は学ランで見えない生足とか、…いや、何を考えているんだ僕は。

「セーラー服も、似合うと思うよ。」

「…っ!何言ってんだよ花京院!」

ばし、と小さな手に背中を叩かれた。頬を赤らめるななこは男装していたって充分可愛い。

「…跡取りがいれば、いいってこと?」

「まぁ、そうなんじゃないかな。…ヤブヘビになりそうだからあんまり聞いたことはないけど…」

まぁいつかはどうにかしなきゃなんないんだけどさぁ…できれば穏便に行きたいんだよな…と彼女は呟いている。

「じゃあ僕が、お婿さんになってもいいよ。」

そうしたら丸く収まると思うんだけど、どうかな。と言えば、ななこはその頬をさらに赤らめて「からかうなよ!」と顔を伏せた。

「…からかってなんかいないさ。」

「…うち、厳しいよ?」

「うん、もしななこが応援してくれるならさぁ…頑張るよ。」

告白染みた言葉だから、好きだってわかってもらえるんじゃあないかなんて思う僕は、大分ズルいと思う。まぁななこの表情を見る限り、意図は充分すぎるほどに伝わっているだろう。

「…なぁ、「協力する」っつったよなぁ。」

「…うん、そのつもりだよ?」

赤面したななこにじとっとした視線を投げかけられた意味がわからずに言葉を返すと、ななこは困ったように僕を見た。

「なのにイキナリ婿入りとかおかしーだろ。」

「…そうかなぁ、みんな救われるいい方法だと思うんだけど。」

ななこは、それじゃあ嫌なの?と赤い頬を見つめると、彼女は上目遣いに僕を見上げながら吐き捨てるように言った。

「…俺がこの格好で花京院のことが好きなんて言えるわけないだろ。」

「それは、…その格好じゃなきゃあ言ってくれるってことかい?」

期待に満ちた僕の視線を受けたななこは、困ったように視線を落として一言、「それと…花京院が、ちゃんと言ってくれたら…」と聞こえない程小さな声で呟いた。

「それじゃあ今度、どこか遠くでデートしよう。」

その時に、ちゃんと言わせてもらうよ。
そう耳元に顔を寄せて囁くと、ななこはまた恥ずかしそうに顔を伏せた。



20160220

SAVE(救う)GET(得る)LIFE
→すくうるらいふ(SCHOOL LIFE)
というオヤジ的発想


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm