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声が聞こえる。
瞼越しに眩しく感じるので日が登ったのだろう。
(つーことは、誰か見舞いでも来てるのか?)
俺は瞼は閉じたまま、意識だけ起こして周囲の会話を聞き取ることに集中した。
「…新八。
いつになったら銀ちゃん目覚ますアルか?」
「お医者さんも言ってたでしょ?
…正直、今生きてるのが不思議なぐらい危なかったんだよ。
奇跡的にも一命を取り留めたけど、いつ目が覚めるのか…
覚めたとしても出血量がヤバかったからその影響もあるかもしれないって」
(え!?そうなの!?
実は銀さんそんなに危なかったの!!?)
「そうだけど…………
私、銀ちゃんが大好きヨ。
パピーみたいに強くて、マミーみたいにあったかいネ。
銀ちゃんは私達を護ってくれるけど、銀ちゃんは誰にも頼らないアル…
銀ちゃんが独りで抱え込んじゃうのはいつもの事だけど、今回みたいなのは二度とゴメンヨ……」
「神楽ちゃん…」
「だから私決めたネ。
どれだけ私が銀ちゃん大好きか聞いてもらうアル。
きっと銀ちゃんだって、私達の事大切に想ってくれてるネ!
私の想いがわかれば、銀ちゃんもうこんな事しないヨ!!」
「……………そうだね!
これからもっと、僕らの想いを伝えよう!
銀さんは優しすぎるから、今回みたいなことになっちゃったんだよきっと…
僕らの想いを知れば、もうこんなこと二度と起きないよね!!」
「新八は別にいいアル。
私だけ銀ちゃんに伝えるから新八はヨロシ」
「なんでだよ!?
僕だって万事屋の一員なんだよ!?」
「銀ちゃんの家族は私だけで充分ネ!!
ホモ共の手に渡してたまるかァァァァァアアア!!!」
「僕はホモじゃねェェェェエエエ!!」
そのままギャーギャーと言い合いが始まってしまった。
(あーあ。
此処病院だし、個室とはいえ、目の前で怪我人が寝てるんだけどなー…)
2人の様子は今迄と変わらない。
呆れや怯えがあるんじゃないかと、疑ってなかったと言えば嘘になる。
もしかしたら嫌われてしまった、嫌われてしまってもおかしくないと思ってた。
それなのに。
2人は変わらずにいてくれている。
まだ俺を家族と思ってくれている。
(先生、ありがとうございます)
心の中でお礼を言ってから、そっと声の方へと手を伸ばす。
「ギャーギャーギャーギャーやかましいんだよ……
発情期ですかコノヤロー」
「ぎ、銀さん!!!」
「銀ちゃん!!!」
2人は俺が上半身を起こす前に飛びついてきたもんだから、俺はまたベッドへと逆戻りしたのだ。
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その後はもうバタバタだ。
婦長が2人に怒鳴るわ院長も婦長に対してツッコむわ、やってきた院長にそのまま検診されて経過聞かれるわでもー面倒くさい。
俺は俺でどうやら手術後2週間も寝ていたらしい。
出血量が一時的にでもがっつり減ったせいか、1度心肺停止したらしい。
それでも何とか復活したが、そのまま2週間寝込んでたせいで新八と神楽がとても心配してたようだ。
そのままとりあえず精密検査にかけられて(初めてMRIとかされた)、特に問題もなかったようなので一応このまま様子見で2〜3日したら退院してもいいようだ。
………そういえば俺、一応捕まりかけた訳だよね?
退院したらそのまま連行されるのかな…
攘夷活動をしてねーとはいえ、ヅラの知り合いってのは事実だし。
でも新八や神楽を置いていけねーし…
(うーん…はてさてどうしようか……)
なんて悩み始めたところ、病室にノック音が響く。
「どうぞー」
ガラリと音をたてて戸が開く。
「万事屋、邪魔するぞ」
そう言って現れたのは、やはりと言うか何というか…
ゴリラと沖田くんだった。
「おやすみのところすいやせんね旦那ァ。
一応病院の方に目が覚めたらこっちにも連絡してもらうよう頼んどいたんでさァ」
「んや、俺も退院したあとどうしようか迷ってたところだからいいよ。
でもまぁ新八と神楽はいい顔しねーだろーな」
「ハハ……確かにな。
それぐらいの事を仕出かしたのはこっちなんだ。
それぐらい正面から受け止めるよ」
苦笑いと共にベッドへと近づく2人は、見舞いの品であろう果物籠を置くと近くにあったパイプ椅子へと座る。