白夜叉バレボツネームA | ナノ

 2

―――――――――――――――


――――――――――………


―――――………………

――い………ん…き…

―起きなさい銀時―



―――――ピクッ…

(………ん………………あれ?……)


誰かに呼ばれたような気がして目を覚ました。
目を覚ましたはいいが、辺りは真っ暗でなにもない。
唯一、自分の身体は見えてる程度。

他に誰の姿もない。


「空耳…?」

《空耳というには少し語弊がありますかね》

「!!!」


また聞こえた声。
辺りを見回しても誰も居ない。

だけど、この、声は………


《探しても無駄ですよ。
私は貴方の脳に直接語りかけていますから…》


「しょう…よう、せん、せ……?」

《おや、姿が見えなくてもバレてしまいましたか。
おはようございます、銀時》

「なんで、先生が…?
だって、俺、首にクナイを突き刺して…」

そっと左手でクナイを突き刺したであろう箇所をなぞるが、特におかしな所はない。


《貴方が自殺しようとした現実は変わっていませんよ》

「!!じゃあ、」

《此処は現世と黄泉の境目…俗に言う“三途の川”です》

辺りを見回してみるが、ただひたすらに闇が広がっているだけ。


《ふふ…川ならきちんとありますよ。
このまま真っ直ぐ進めば自ずと見えて来ます》

「じゃあ―――――」


そう言って歩み始めようとする、が。


《ダメですよ銀時。
貴方はまだこちらへ来てはいけません》

「どうして……!?なんでだよ先生!!」

《あの子供達を置いて逝くつもりですか?》


――――ビクッ


「………………それ、は…」

《……銀時。
誰が何と言おうと、貴方は“人間”です》

「違う!!俺は“化け物”なんだ!!」

《貴方は“化け物”なんかじゃありません。
その証拠に、貴方は泣けるのですから》


先生の言葉に胸が熱くなり、暗闇がボヤける。
心がぽかぽかとした、あったかいこの気持ち…


《銀時。
本当の“化け物”というのは、人の痛みを理解せず、己の欲望のままに生き、他を認めないのが“化け物”なんだと私は思います。
けれど、貴方はそんな醜いものなんかじゃありません》

「…せん、せ………」

《だって貴方はこんなにも心優しいのですから。
自ら死のうとしたのも、彼らに幸せになってほしかったからでしょう?》




―――どうして、貴方には。


「…………新八にも、神楽にも…
皆、しあわせになって欲しかった。
でも“化け物”が傍に居たら幸せになれないって…

俺、忘れてたんだ……
自分が“化け物”だってことを。
一度は全部捨てたハズなのに、またいつの間にか背負い込んでた…
だから!!―――――――――」

《もう背負いこまないように死のうと?》


「………」

《ねぇ銀時…人はいずれ死にます。
これは仕方のない事なのです。
寿命で亡くなることもあるでしょう。
中には病気や事故、はたまた恨まれて殺されたりだって…
人は簡単に死んでしまうのです。

でもね銀時。
人が一番悲しむ死に方とは自殺なのですよ?》

「!!」


《遺された人達は、それはとても悲しむでしょう。

何故助けてやることが、止めることが出来なかったのか…
遺された人達はそんな哀しい想いをこれからずっと、引きずっていくことになるのですよ》

「…………おれ、は……」

《貴方は彼らにそんな想いをさせたかったのですか?》

「それは違う!!」


俺は、ただ……



《…貴方が彼らの事を想うように、彼らもまた銀時の事を想っているのです。
銀時が彼らに笑っていてほしいと願うように、彼らもまた銀時に笑っていてほしいのですよ。
あのような哀しい笑みじゃなく…》


「せんせ……おれ…」

《ふふ…もう間違えないですね。
それでは、目を閉じて…》


先生に言われて目を閉じる。
すると頬の辺りがほのかに暖かくなるのを感じる。



《人間とは間違える生き物です。
でもその間違いを悔やみ、正す力も持っているのです。

たくさん迷いなさい銀時。
迷いながら己を強くしていくのです。
間違えた時は、貴方の仲間達が道を正してくれますから…
そしていつか貴方も…仲間が道を間違えた時に正してあげるのです。

強くなりなさい銀時。
弱き己を守るのではなく、仲間を護るために強くなるのですよ…あなたならきっと、強くなれますから……》


そう言うと頬の暖かなものは離れていった。


「先生…!!」

叫んでも、もう声は聞こえない。

「ありがとう、松陽先生………」


貴方のおかげで、俺はまた間違えずにすみそうです。
俺の大切な家族や仲間を護るために…

(今度はもう間違えない!!―――)


己の胸に誓を立てたその時、辺りが真っ白に輝き始めた。

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