洒落にならない銀魂シリーズ | ナノ

 きさらぎ駅

今日の依頼は引越しの手伝い作業。人手が欲しいのに神楽は定春の具合が悪いからって動物病院、新八に至ってはアイドルの追っかけと来たもんだ。重い荷物を運んだせいで身体中がぎしぎし軋む。帰りの電車の中、席に座ったら足を伸ばしてゆったりと背もたれに背中を預けて最寄り駅までひと眠りする事に。

その間高杉から貰った(料金は向こう持ち。総督様愛してる)スマートフォンを手にLINEのグループチャットへ飛ぶ。

『今日は引越し依頼。でっかくて重い荷物運びまくって肩凝った(;´Д`A』

そう打ち込んで送信すれば既読マークの早いこと。

『こっち来いよ。揉んでやる』(高杉)
『乙。温泉行かないか』(桂)
『肩こりに効く入浴剤あるよ( ^ω^)つ入浴剤』(辰馬)
『むしろ銀時のソーセージ揉んでやる』(高杉)
『キモいんですけどー』(銀時)
『(´;ω;`)』(高杉)

アホな会話して定期的な揺れに身をゆだねるとドンドン眠くなる。あぁ、早く帰って風呂入りたい。だが寝るのはもうしばし我慢しよう。寝過ごして必要ない駅に降りて、はたまた電車賃を必要以上に持っていかれるのはごめんだ。金に対しては俺はシビアなのでこれはなんとしてでも寝てはいけないのだ。俺頑張れ。

さてどれ位経っただろうか、まだ最寄り駅に着かないようだ。そんなに遠い地区へ来た訳ではないので眠いがなんとか我慢してアナウンスを待っているというのに。いくら経っても最寄り駅には着かない。せいぜい5〜7分程度ですぐに着く程度だというのに20分程経過しても電車は止まる気配がない。
再びスマートフォンを手に取り、数十分前のやり取りを再開する事に。

『気のせいかもしれないんだけどいい?』(銀時)
『何が起こってるんだい』(桂)

心なしか少し不安になってきた。乗る電車を間違えたのか、快速や特急にでも乗り間違いしてしまったのだろうか。既読と返信があり妙に安堵したのを皮切りに、返信と現在状況の実況を進めた。

『さっきから電車に乗ってるんだけど様子がおかしい』(銀時)
『ふんふん』(辰馬)
『いつも使ってる電車なんだが、大体5分、長くても7〜8分程度で最寄り駅にいけるのに20分近く経っても電車が停まらない。俺の他に5人位客いるんだけど皆寝ちゃってる。俺だけパニック??(・A・)』(銀時)

2人の返信の中、高杉が遅れて既読と返信。

『電車もう降りたりしてるか?』(高杉)
『特急とか間違えて乗っちゃった系?』(辰馬)
『うーん、もうちょっと様子見てみる。疲れてたから眠気とかで意識曖昧だったかもしんないし。自信ないけど駅と乗る予定の電車は身体で覚えてるからこんなヘマいつもしないんだけどなぁ』(銀時)
『身体で覚えてる・・・だと・・・?』(高杉)
『お前ってそういうエッチな単語にしか反応しねーのか』(銀時)
『とりあえず一番端っこの車両に行って車掌の様子見に行ってみろ』(高杉)
『運転手がてんかんでも起こしていたら大変だ!様子を見に行って来い!』(桂)
『まだ停まる気配がないんでちょっと移動してみる』(銀時)

指示通り、端っこへ赴き車掌を確認してみる。ヅラの言う通り何か発作でも起こしていれば一大事だし、そうでなかったとしてもこの電車が何処へ向かうのか聞く事も出来る。行って損はない。
しかし運転席の窓?がブラインドみたいに真っ黒で中の様子を伺うことも出来ないし、ノックしてみたが応答はない。窓から外を眺めてみれば、外は真っ暗。トンネルなんて通らない筈なのに知らない町へでも来てしまったのだろうか。神楽と新八に連絡しておかないと心配をかけてしまうし。

しかも知らない駅に到着してしまったし。さてさてどうするか。降りた方がいいか。このまま乗り続けるにしても電車賃無駄に使いたくねぇから、俺は思い切って降りてみる事に。

駅名には「きさらぎ駅」と記されている。なんだそれ。

『駅名きさらぎ駅、って書いてある。降りてしまった。しかも無人駅。乗った時10時だったのにもう11時過ぎorz』(銀時)
『検索しても出てこないな。てか金時一時間も乗ってたのか』(辰馬)
『きさらぎ駅。ひらがなか?漢字はないのか?検索しても出てこないぞ』(桂)
『うーん。行った道を戻りたいから時刻表探してるんだけど何処にもない』(銀時)
『近くに建物とかないのか』(高杉)
『もったいねぇけど今日もらった報酬使ってタクシーに乗るわ』(銀時)
『無難だ、そうした方がいい』(桂)

ヅラの後押しでタクシーを捜すが、果たして11時までずっと待機してくれているものだろうか。重ねて無人駅である。しかも高杉のアドバイスに習って建物を探すが何もねぇ。こうなったら駅員探しだ。あ、いや無人駅だってさっき言った。無人駅は駅員がいねぇから無人駅なんだ。もうこうなったら大人だろうが関係なく迷子だと行って交番へ行くしかねぇ。あれ、だけど交番もねぇ。さっき俺なにもねぇって悟ったのに。
やべぇ。怖くなってきた。どうしよう。

『高杉。迎えに来て』(銀時)
『行きたいが「きさらぎ駅」がどこにあるのか分からない。さっきから地図とかググってんのにヒットしない。マジでお前どこにいるんだ』(高杉)
『そういえば他の人は?乗ってた人はどうなの』(辰馬)
『俺一人だけ降りた。駅名はひらがなで「きさらぎ駅」』(銀時)
『今調べてみたら「鬼」って書いて「きさらぎ」って読めるんだね』(辰馬)
『鬼駅・・・』(高杉)
『駅なんだから民家位あるだろ』(辰馬)
『線路に沿って歩いて帰ってみる。自分の居場所をGPSで表示させてここにうpしようと思ったんだが、何度やってもエラーになる。自分の居場所が示せない。本当に何もない、山とか草原が見えるだけで真っ暗』(銀時)
『こりゃヤバイな』(辰馬)

ヤバイとか言われると不安になるだろ辰馬の馬鹿野郎。とりあえず来た道を引き返せば言い訳だ。レール変更した覚えはないし真っ暗だが足元の感覚で歩けば何とかなると思う。確かに引越しの手伝いで疲れてはいるがそうは言っていられないのだ。疲れていても背に腹は変えられない。体力なら自信がある。問題はこのスマートフォンが充電切れを途中で起こさないか。ぶっちゃけ今俺が平常心を保っていられるのは三人の反応があるからだ。真っ暗だろうが知らない町だろうが金がかかろうが、兎に角早く帰っていつもの風景の中に溶け込み安心したい。俺を動かしているのは只それだけであり、それ以外何もない。果たして「きさらぎ駅」なんて場所初めてきたものだが、大江戸は大きな街だ。天人が往来し技術発展を向かえた俺の街は決して小さくないし、規模もでかい。そんな所から一時間程度離れただけでこんな何もない場所へたどり着くだろうか。色々おかしい点が多すぎる。たかだ一時間程度だ、人の足で何日もかかる訳ではない、早く帰りたい。

『銀時。一人で無茶してヘマしたらどうすんだ。最終手段だ、110番しろ』(高杉)
『明るくなってから行動した方がいいと思う』(辰馬)
『うえーん。高杉の言う通り110番してみたんだけど、こっちの状況がおかしいからって悪戯は止めなさいって怒られた』(銀時)
『そいつらぶっ殺す』(高杉)

高杉ぃ〜〜〜。迎えに来て〜〜〜。ヘルプミー。折角おっさんが勇気出して110番してみたのに何なの。不安でいっぱいなのにさぁ。勇気出したのに見返りお叱り?ふざけんなよマジで。
電話が通じるって事は異世界でもないんだよな。こんな山に囲まれた場所なのに電波はいいし。あ、アレか?今白い犬とか他の電話会社が電波拡張頑張ってくれているからどんな田舎でも通じるんだな。すげえ。電話会社さまさま。ありがとうございます。

あれ。何だろう。何か音がする。遠くから、何か聞こえてくる。気のせいじゃない、確かに何かが聞こえてくる。

『遠くから太鼓の音と鈴の音が聞こえる』(銀時)
『銀時いいから戻れ!』(桂)
『迷ったら現場に戻るのが一番だろ』(高杉)
『こんな時になんだけど、怖くて後ろ振り向けない・・てかマジ高杉迎えに来てってば』(銀時)
『あっ』(銀時)
『さっき声かけられた。人いると思って横向いたら片足のおっさんで、すぐ消えちゃった。怖い』(銀時)
『銀時電話出ろ』(高杉)
『疲れた、もう歩けない。眠い』(銀時)
『だから電話出ろって』(高杉)
『銀ー』(辰馬)
『おーい』(辰馬)
『ちょっと待ってて、高杉と電話する』(銀時)

***

『まだ生きてる。足痛い、木刀が松葉杖代わり。多分豆潰れてる。怖い、俺まだ死にたくない』(銀時)
『銀時を迎えに行く為に今大江戸の空を旋回中。レールにそって偵察してるんだが銀時はおろかきさらぎ駅さえ見つからない。トンネルや周りが山、草原の条件で絞っても結果は変わらない。借りは作りたくないが真選組に通報して銀時の保護を頼んだ。変声機と逆探知不可電波利用済みなんで身バレの心配はない』(高杉)
『通報と保護要請はこの際仕方ない、気をつけて。駅周辺は真選組の巡回コースだから』(桂)
『ういっす。余裕だ任せとけb』(高杉)
『辰馬さんも出発なう』(辰馬)
『宇宙から遥々ご苦労様』(銀時)
『銀ちゃん迎えに行くよ』(辰馬)
『ありがと。今トンネルの前に来たんだけど。伊佐貫って書いてる。なんて読むのかわかんない。トンネル入って抜けてみようと思う。音が近づいてきてるんで余りゆっくりできない』(銀時)
『トンネル見当たらなねぇ』(高杉)

『あ、人がいる!!!来てくれたの?』(銀時)
『俺はまだトンネル見つけられてねぇ』(高杉)
『じゃああれは誰?ヅラや辰馬でもないの?真選組が俺を見つけてくれたの?』(銀時)
『待て銀時少し考えろ、早まるな。行ったら駄目な気がする』(桂)
『おい銀時何処だ』(高杉)
『大丈夫、俺生きてる。親切なおっさんが近くの駅まで車で送ってくれるって。助かった』(銀時)
『それ本当に親切なおっさんか?不審者じゃねぇのか?』(高杉)
『今地名を聞いてみた。比奈って言うんだけどそれはあり得ないと思う』(銀時)
『無茶振りかも知れないが車から降りた方がいい』(桂)
『銀時見つからない』(高杉)
『山の方に向かってる』(銀時)
『山?』(高杉)
『なんかおっさんが話しかけても答えてくれなくなった』(銀時)
『バッテリーもうそろそろヤバイ。隙見て逃げ出そうとしたらブツブツ独り言言い出してる。最後の通信になりそう、高杉今ど』(銀時)
『電話かけろ電話!銀時に電話かけろ!』(桂)

『応答なし』(高杉)
『応答なし』(桂)
『応答なし』(坂本)
『応答なし』(高杉)
『応答なし』(高杉)

(銀さん、これ最後どうなったんですか?)
(悪い。言いたくねぇ。)


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