小説 | ナノ

 光明の月

月が大きい。そして眩しい程に爛々と照らす光の強さは今までにない程の強さ。隣にいる銀髪はそんな事もお構い無しに「お月見饅頭」をパクパクと口に入れている。まるでムードというものを分かっちゃいない。自分は煙草を吹かしながら時折横を向いて食欲旺盛な天パを見やったり、月を見上げたりを繰り返し、この空気も糞もないムードさに溜息を吐くのだ。

「何土方君。便秘ですか?そんなに溜息吐いて。それとも彼女に振られたの?大丈夫だって、新しい出会いなら嫌と言う程あると思うから」
「うるせーよ。便秘でも失恋でもねーよ。スーパームーンだぞ、ちったあ月見て酔いしれろよ。つーかお月見饅頭なんか喰ってんじゃねーよ。それ十五夜だろ喰うの」
「いいじゃねーか。セーラームーンでも十五夜でも。月見るならお月見饅頭ってのが昔からの決まりなの。法律なの。食べなきゃいけないの。つか食べなきゃ始まらないのっ」
「セーラームーンじゃなくてスーパームーンだっつーの!!ムーンしか合ってねぇじゃねーか!つーかどういう法律!?ねーよ!」

ムードがない。さっきから食べてばかりで。こっちはそのストレスで煙草何本目だと思ってるんだ。これしか持ってきてなくて無くなったら買いにいかなくてはならなくなる。控えたいのにそれさえも出来やしない。
大人二人。男同士でこうして今に至るのは別に約束でも、お互いそうしようと決めた訳ではない。銀時はテレビでこの月について話題だったので夜、急遽食べたくなり購入してきた。土方は見回りの最中、勤務中だというのに職務をサボってまでして見えやすい場所まで来ている。

「あの月はな、スーパームーンつって滅多に見れない月なんだぞ。ちったあ見上げてこの貴重な時間を満喫しろや」
「それよりも月見饅頭が大事だし。むしろ饅頭が大事だし。てかこの饅頭売ってる店の饅頭、こしあんが甘さ控えめでむっちゃ美味いし」
「結局は饅頭なら何でもいいんじゃねーか!!」

残りの本数がヤバイ。土方は足元に短くなった煙草を捨て、靴で踏み潰し白けた、と言ってその場を離れてしまった。

「何土方くん。もういいの?饅頭食べられないから拗ねたの?」
「うるせー。残りの見回りに行くんだよ」
「ねえねえ土方くん、夜道怖いから一緒に来てよ。銀ちゃん送ってよ」
「幼女か!一人で帰れ!」

足元にあった小さな石ころを蹴って悪態をつきそそくさと歩き出すと、何故か銀時もついてくる。手の月見饅頭は決して手放さない。

・・・・なんだこいつ。そのモグモグしながらついてくんの。マジ可愛い生き物なんですけど。マジ止めてくんない、そのモグモグしながらの上目遣いとか。マジ止めてくんない、超可愛いから。

「ねえねえ土方くん。饅頭あげるからもうちょっと一緒に歩こうよ」
「歩いてるだろ」
「ねえねえ土方くん。饅頭ここらへんならあげるからさ」
「いらねーよ。つかここらへんってあんこまで到達しない場所じゃねーか。何で一口しかくれねーの!?」
「饅頭大好き」
「知ってるよ」
「土方君も大好き」
「・・・・知ってるよ」

夜道は時折人とすれ違う。皆、上で輝く見事な光明の月を見上げ、堪能していた。暫く歩いて、視線を感じて振り向けば可愛い生き物は自分を見てパクリとまた月見饅頭を食う。
煙草の本数も危ういので、残りは駐屯所に戻ってから堪能したいので我慢する。
嗚呼、口寂しい。

仕方がないので、口寂しそうな銀時と同じ速度まで落とし、横に並んだ所でキスしてやった。相変わらず甘い。あんこは銀時が言っていた通り、甘さ控えめでまた味わいたくなる舐めやすさだった。

「タバコくさい」





+++++あとがき+++++
わかさいも製菓の「おいしいまんじゅう」美味しいよ。
++++++++++
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