「ハァッハァッ!!」


瓦礫の山、というかゴミの山を幼い少女が駆け抜けている

息は上がり服は薄汚れてはいるが、瞳は輝きを失ってはいない


それがここでは
異質だった



「ハッハッ……!」


物陰に幼い体を押し込み、背後から迫る人間から身を隠す

荒い息を精一杯整えるが、長い距離を走った後では難しい


「チッ、見失ったか……」


「仕方無い、他のを探そう」


そう会話をすると、人間達は少女を諦めどこかへ向かった


「た、助かった……!」


少女はそう呟くと額や顔の汗を腕で拭い、立ち上がった


腕の中にはまだ綺麗な服とパンが少しだけ大切そうにあった


――世界に捨てられた少女は、生きる事を諦めはしなかったのだ


「よし!休んだし帰ろう」


少女は震える手を握りしめると、自分に渇をいれ、立ち上がり走り出した


幼い体を使って少女は走る


――死にたくないから

――殺されたくないから

――何よりも


生きたいから




少女は何よりも『死』を恐れた

なぜなら『死』の先に何も見出す事が出来なかったからだ


――未知ゆえに恐怖した


少女には日々『死』の恐怖が付きまとい、精神を削っていく

平和で豊かな日本にいた時は全てがゆったりとしていて幸せに暮らせていた

それがここには無いのだ

あるのは自身の存在と死の恐怖、空腹、疲れ

豊かに暮らしてきた少女には
厳しい世界だった


「りゅうせいがい、か」


ゆったりとした足取りの少女が、子供らしくそう呟く

少女の瞳は、深い闇色に染まっていた






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