彼女が生まれて10年の月日が流れた

今日は彼女の10歳の誕生日だが彼女は1人海辺に佇み、歌を歌っていた


切ないメロディが辺りを包み込むと空からポツリと滴が落ちてきた
彼女は人間からは嫌われているが、自然には愛されているのだ

彼女以外の“異端児”も自然と共に生きている


彼女の歌声が大きくなるにつれ、雨音も強まっていった
いつしか波も高くなりまるで台風のようだ

そんな中、レイはまだ佇んでいた


(この化物っ!)
(我らの神子よ)

(大っ嫌い!)
(愛しているよ)

(死になさい!)
(生きておくれ)

頭の中で2つの言葉が駆け巡る

相反する2つの言葉にレイはどうすればいいのか解らなくなっていた

だがレイが心から信じているのは自然だけ
人間を信じる事なんか出来ない
最初はただの切ないメロディーだった彼女の歌声が雨雲にまで届くくらいの歌になった時、それは起こった

目の前の海が大きく波打ったかと思うと波が目の前まで迫っていた

レイの目の前まで波が来ると波はとまり扉の形をとった


“神子、我らの神子よ”

声が、聞こえた
とても優しげな、声が……


“お行きなさい
神子にはまだ世界がある

――生きる事を、未来を諦めてはいけない”


その声が聞こえなくなると目の前につくられた扉が開いた

扉の中は向こうが全く見えない程の、闇


“――恐れてはいけない”


(――向こうに何があるっていうのよ?どうせどの世界に行っても私は異端なんだから……)


“神子よ……全ては神子次第なのだよ

――神子は何を望む”


(――何を、望む…?
異端な私の望みなんて…
……私に、望みなんて…)


“神子、我らの神子よ

どうか幸せに生きなさい
世界に絶望してはいけない

希望を、もちなさい”


「…わ……私…は……」


涙を流しながら呟くレイを優しく海は包んだ
しだいにレイの意識は薄れていった

が、レイは薄れいく意識の中で聞いた


“神子にはまだ未来がある
……精一杯生きなさい”

という優しい声を






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