意識が戻ったのは、街の外れまで流されて来た時だった
空は赤く染まり、時刻が夕暮れだという事を示している
ぼーっとした頭でそう理解した時、少女は焦った
「寝る場所、無いや」
呟くと余計に今の現状の厳しさを理解するだけだった
言葉が分からないので街の中に戻る訳にもいかず、少女は一度街を出る事にした
街の中から森があるのを見つけていたからだ
早速歩き出し、森に着いたは良いが、森に入る事が出来なかった
「………空気が違う」
ツカサが呟く通り、森には街中にいた時とは違う、不思議な空気が流れていた
「…なんだろう」
森を見上げ呟くが、分かるわけもなく、時間だけが過ぎていく
まばらながらも人が通るが、セーラー服を着ているツカサを奇異の瞳で見つめるだけだ
この時代に日本人は珍しく、着ているものも見慣れない為だろう
突き刺さるような視線に気付きながらも、ツカサは森の中に入る事を躊躇していた
―――この不思議な空気が恐ろしかったのだ
平凡な自分ですら気付く事のできる“異常”
既に異常な事を経験したが、これは全くの別物だ
だがそんな少女をよそに、時間は刻々と過ぎていく
空を見上げれば、夕暮れもすぎ、夜に差し掛かっていた
「はぁ……」
溜め息をつくツカサには1つしか取る行動がない
選択肢すら少女には無いのだ
「よし!ここには何にも無い、だから大丈夫!」
少女は自分で自分を励まし、森に足を踏み入れた
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