「悔しい」
服の裾を握り締めて、彼女は呟いた。
「もう少しはやく動いていれば」
「どうしようもなかったんです」
感情を露にする彼女を前に、感情を押し殺しながら淡々と告げる。自分たちには、どうする事もできなかった。どうあがいても、結果には逆らえなかったのだ、と。
「でもっ」
「ヒナ」
伏せていた顔を上げる。まっすぐに前を見据え、正面に座る彼女の名を呼んだ。
「もういいんです」
クシャリと、ヒナの顔が歪む。必死に涙を堪えて、現状を受け入れようともがき続けている。可哀想だと思う反面、愛しいとさえ思ってしまうのは、罪、なんだろうか。
「もう終わりにしましょう」
その気持ちを押し殺して、もう一度名を呼ぶ。ゆっくりと、ヒナの顔が頷いた。
「……あの、ただのチェスだよね、これ」
「うわぁぁあんっ! Lに負けたぁああっ!!」
「守りに入るのが一歩遅かった自分を恨むんですね」
「くやしぃぃっ!」
( もう終わりにしよう )