「あづい……」
「まぁ、夏だしね」
たらりと汗を浮かべる私の隣で、月くんはさらりと平静に告げた。「夏だから暑いのは当然」だ、そうだ。汗一つ無い状態で言われても説得力がない。
腹いせ、と言うわけではないけど、フル稼働しているエアコンの温度を更に下げてやろう。
「ヒナさん、ちょっと下げすぎじゃないかな。十七度って流石に寒いよ」
「いやいや、これくらいが丁度いいんですよ。あー生き返るー」
「基本体温高いですよね、ヒナ」
「誰のせいだ誰の」
月くんとは別の声。それこそ背後からする声に、これでもかと棘をつけて返答する。
「ヒナ、寒いです」
「なら離れろや、子泣きじじい」
「寒くて離れられません」
「暑くったってくっついてただろ。つか私の体温が高いんじゃなくて、アンタがくっついてるから暑いんだっつーの!」
「ヒナの抱き心地がいいのが悪いんです」
「なんでもかんでも私のせいにすなっ! だーっ、もう重いから圧し掛かるなっ!」
(二人って恋人じゃなくて、双子だよな……?)
( 体温高いよな、お前 )