不意に何かが肩へと圧し掛かった。
 軽くは無いが辛くもない重み。一緒に安らかな吐息が聞こえてきた事もあり、指先の資料から視線を上げる。案の定、肩に寝顔が寄り添っていた。
 しなやかな髪、長い睫、柔らかい唇、あどけない顔。自分に誰よりも近く、誰よりも異なっている女性。
ヒナ
 軽く肩を揺らす。が、返答はない。寝入ってしまったのだろう。どうしたものかと溜息が口をついた。
 一方で、しかし、と思う。
 あらためて見ると、やはり自分と彼女は全く似つかない。自分でさえそう思うのだ、回りからすれば双子と言ったところで"冗談"としか思えないだろう。
 ――ああ、でも、こういう癖は同じようだ。
 白魚のような指が服の裾を掴んでいる。無意識に温もりを求めているのだろう。いや、一人になる事を恐れていると言うべきか。こうなっては離れる事もできまい。
 再び資料へと視線を落とし、一呼吸思考をめぐらせる。仕事は……ここ二.三日徹夜したお陰でほぼ片付いている。少しなら休息しても問題はない。欲を言えば毛布でも取りに行きたがったが、まあ仕方ない。
「暖かい季節なのが幸いですね」
 再び溜息を落とし、視線を上げる。窓の外で、穏やかな日差しと共に薄桃色の花びらが舞っていた。
 
( 眠る姿はそっくりなのに )

 
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