新郎と新婦の姿を見ようと集まる人、人。 そして偽りの無い、笑顔。
……今から交わされるふたりの愛の誓いを心から祝福する笑顔の中に、私も溶け込めているかのかな。 私はたくさんの芸能人、著名人らが集まる会場を抜けて、新郎の控え室へと歩いていった。
そこいたのは。 私の大好きだった人。 …今日の、主役。
……タキシードを着て、少し緊張している彼の面持ちは今まで見た彼の表情のどれよりもかっこよくて、つい言葉をなくすほどに、見とれた。
『一磨…さん……』 「…詩乃ちゃん…」 『おめでとうございます、本当に』 「詩乃、ちゃん…」
『…これで私たちとも、お揃いだね?』 私を見つけてしまって複雑な表情で少し俯いた彼に、かざす私の左の手のひら。 私の薬指に輝く指輪は、この後に交換される予定の一磨さんの指にはまるものとも、その新婦さんのものとも違う。
『って言うより…私たちよりは後輩、かな?』 そう言って、私はいたずらっぽく笑って見せた。 大好きだった彼に、余計な事を考えずに幸せになってもらうために。
…そんな顔はしないで。 私はそんな顔をさせるためにここに来たんじゃないの。 …その思いが伝わったのか、彼は顔を上げて、笑う私をまっすぐに見つめた。
「……ありがとう」 私は最後に大好きだった彼の笑顔を瞳の奥に焼き付けて、その場を後にした。
いつも喧嘩しててもメンバーの事、リーダーの事を気にかけている私の彼。 彼がもし、『大切な仕事を控えているから』と言った私の言葉が嘘だと気づいたら怒るかな。 ……それとも、まだ引きずってるって思っちゃうかな。 私はそっと滲む涙を左手で拭って、空を見上げた。
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