12月24日、クリスマスイブ。
今日は、バレンタイン、誕生日、ホワイトデー、記念日……そんな恋人たちのイベントに負けず劣らずの一大イベント。

普通だったら、恋人とクリスマスらしく過ごすんだろうけれど、私は悩んでいた。
なぜなら、私の彼の誕生日は12月24日――まさにクリスマスイブだからだ。

彼の誕生日とクリスマスイブ。
どちらも大切な日だからこそ、前に彼が「クリスマスと誕生日を一緒にされるのが嫌だ」と言っていたのを知っているからこそ。
私は、彼が忘れられないような日をプレゼントしてあげたいと思っていた。

でも何をしてあげれば彼は喜ぶのか、どうすればよいか、悩んでいるうちにいよいよ迎えてしまった12月24日。
今年は、私がディナーを作ってお祝いすると決めた。

そして私は仕事を終え、来れるなら少しでも見に来てよ、と彼からもらったチケット片手に、Waveのライブ会場へと来ていた。
(やっぱりすごい人だなぁ…)
会場に向かうたくさんの女の子に紛れながら、私もそこへたどり着いた。

スタッフさんを通し、一番前の関係者席へとつくと、たくさんのざわめきが聞こえた。
しばらく待っていると照明が落とされ――次の瞬間、Waveのみんながステージへと登場した。
一斉に会場が黄色い悲鳴で包まれる。

「「メリークリスマス!」」
マイクを持ったWaveが叫ぶと、ファンからもメリークリスマス!と声があがる。
鳴り止まない悲鳴の中…翔くんが口を開いた。

「今日は来てくれてありがとう!」
それだけで会場はヒートアップする。
「今日はクリスマスイブだけど……」
と京介くんが言うと、今度は物静かな義人くんが口を開く。
「それ以上に、大切な日でもある…」

最後にリーダーである一磨さんが、「亮太、誕生日おめでとう!」と言うと、Waveの皆もおめでとう!と声をかけた。
客席からも、「亮太くーん!おめでとー!」という声が飛び交っている。

「じゃあ、せっかくの亮太の誕生日だし…みんなで歌おうよ、ハッピーバースデー!」
翔くんがそう言い、「せーの」という声に合わせ、ステージと客席での“ハッピーバースデー”の歌の大合唱が始まる。

「「ハッピバースデー、トゥー、ユー!」」
歌い終わりと同時に拍手と歓声が贈られ、マイクを手にした亮太くんが一歩前へ出た。

「みんな…本当にありがとう!僕も一歳年をとった訳だけど……これからも応援よろしくね!みんな大好きだよ!」
モニターに、亮太くんのウインクした姿が映ると客席の熱は急上昇。


…Waveのクリスマスライブは、そんな亮太くんのお祝いから始まった。
私は、MCを終え、ステージで歌うWaveのみんなを見つめ、ファンの一人として楽しんだ。
時々亮太くんと目が合うのを感じながら。

そして、ライブも中盤に差し掛かった頃──
私は腕時計を確認し、こっそりと会場から抜け出した。

亮太くんには、『途中で抜け出す事になっちゃうけど、亮太くんの家で待ってるから』と言っておいたし、途中で抜けられるようスタッフさんに頼んである。
私は苦労もなく抜け出す事ができた。




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