馬鹿、とっくに好きだよ




相葉は、いつもそう。
アイツのことなんてもう忘れろ、別れろ、行くなよ、別れて俺のものになれ…なんてきっと言わない。
私が辛かった頃のことを知ってるし、誰よりも人の気持ちに敏感だから。
優しい優しい相葉。
きっと、もし他に私を無理矢理にでも奪ってくれる人が現れたとしたら、「良かったな」って言って身を引く相葉。

…優しい優しい、バカな相葉。
だから私は彼に甘えてしまう。
すがってしまう。

『じゃあ…私、帰るね』
「…おお。気をつけて帰れよ」

ドアに手をかけても、彼が私を引き止めることはない。
『…じゃあ』
そう言って、パタンとドアを閉める。
このドアがもう一度開けばいいのに、そんな気配はない。
「…やっぱりアイツのところになんか帰るなよ」って、無理矢理にでも引き止めてくれればいいのに。

家へと走りながらそう思った時、ふと相葉の言葉がよみがえる。
「そりゃあ別れて欲しいって思うけど…別れろ、なんて言わないから。俺、柚月には誰よりも幸せになって欲しいんだ」
「柚月…俺の前では強がらなくていーんだから、な?」
「こんな俺でよければ…隣にいるから…」
「寂しくなったら相葉翔平まで」

…相葉は、いつでも優しくて、ちゃんと人の気持ちを分かってる。
私を傷つけないように、自分を傷つけて笑って見せてくれる。
いつだって、私の言葉をくれる相葉。

……でも、今、一番欲しい言葉は違うの。

私のことを想ってくれるのなら、優しい相葉に甘えてしまうこんな私でもいいって言ってくれるのなら、今すぐ強引にでも攫ってよ。
優しい優しい、バカな相葉。
私の幸せを願うって言うのなら、「俺のものになれ」って、言ってよ。
自分だけ、辛い思いしないでよ。


馬鹿、とっくに好きだよ
(そんな事を言えない私は、きっとこれからも彼の優しさに甘えてしまう、から。)


title:affirmation 


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