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あれから始まったお兄さんとの稽古。
お兄さんが家に来るときしか行われないと思っていたが、多くて月2くらいの来訪頻度だったのが三日間泊まってくとかザラな感じに増えた…。
暇なのかと問えば天元様の一件で金を貰った為、しばらくは困らないとの事。しばらくって…数年は遊んで暮らせるような額だろうが、どうせお兄さんの事なのでギャンブルですって、もって三ヶ月とかだろう。てかそれなら焼肉奢らせるなよ。私も生活費は十分なほどあるからいいけどさぁ…。
かくゆう私の星漿体護衛任務の報酬はほぼゼロ。そりゃそうだよね、任務成功とは言えないし。加茂家から何か嫌味が飛んでくるかと思ったが、五条さんと夏油さんのお陰か今のところ特に連絡はないし、斎藤も何も言ってこない。ラッキーって感じ。

「ただいまぁ」
「おかえりー」

ドアを開けると斎藤の声。でも靴は二足あるからお兄さんはまだウチに居るらしい。

「学校お疲れさ…え」

キッチンで夕食を作っていたであろう斎藤が、こちらを見て驚いた顔をする。

「え?それ、誰にやられたんですか」
「こわいこわい包丁包丁包丁!!!」

動揺のあまりか包丁を握りしめたまま此方に詰め寄ってくる斎藤。斎藤と距離をとりながら包丁を指摘すると、包丁をキッチンに戻しに行った。
両手が空いた斎藤さん、再度私の方に寄ってきて私の両肩を掴む。

時期はもう7月終わり。合服からうっすら透けて見える青いアザや膝小僧のバンドエイドを見た後視線は私の首元に集中している。なんだか視線を向けられてる首元が痒くて、思わずさすってしまう。

「誰に…やられたんですか……」
「え、お兄さんに…」

私の返答を聞くが早いか、斎藤は私の肩から手を離してお兄さんが寝てるであろう客室に向かっていった。

「オマエッッッ!!!!!ついに!!!!ついに手を出しやがったな!!!!」
「うるせぇ!なんの話だ!」
「なまえちゃんに乱暴しただろ!」
「はぁ?稽古だ稽古」
「何が稽古だ!!!!!体中アザだらけじゃないか!!!」

二人の怒声をバックサウンドに自室に向かい制服から着替える。

「仕方ねぇだろ、近接が弱いんだからどうしてもアザは出来る」
「近接〜〜!?本当に稽古してるみたいなこと言って…!」
「だからしてんだよ」
「じゃあ首元の、キ、キスマークは何だ!!!!」
「は?」

は?キスマーク?ちょうど着替えの最中、ワイシャツのボタンを外していたのでそのまま姿見の前に立つ。
あ、ほんとだ。首元にキスマークみたいなのがある。でもキスマークつけられたような覚えはないし相手もいない。となると、あ、分かった。

「なまえ!ちょっと斎藤止めてくれ!」
「はいはい」

お兄さんに呼ばれたのでサッサと着替えて客室に向かう。ベットの上でだるそうにしてるお兄さんと、ドア付近でカンカンの斎藤。なんだこれ、親子か。

「斎藤、これ多分虫刺され」
「え?」

斎藤がキスマークだと思った首元の赤いやつはただの虫刺されである。だってされた記憶ないし。山で鍛錬してるし。昨日刺されたのか赤くなってるそこは、たしかに今思うとちょっと今日は首が痒かった気がする。
稽古も本当にしてもらってるし、アザだらけにはなるけど弱い私に問題があるし、腕はほとんど合服で隠すことができるから大丈夫だと伝える。
さっきまでの勢いはなんだったのか、数秒黙り込んだ斎藤はお兄さんに向かって一言

「勘違いして申し訳ありません」

と謝って客室から出ていった。一方お兄さんは肩をすくめた後眠そうに欠伸してまた寝る体制に入った。いや私んち…、いいけど……。
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