掻き集めて、もう一度

――突如起こった謎の超局所的パンデミックは、
―――並盛町全域で……とみられるウイルスが……
――恐るべきことに、並盛町の区画外へ出ると感染者が全く……
―――厚労省は、一種のバイオテロでは……

 都内某所のホテルの一室で、テレビが忙しなくある事件について語っている。適当にザッピングしながらどこも一様に流すその報道を眺める少年こと内藤ロンシャン君は、あまりにも非現実的で異常な現象を、実に楽しそうに画面から取り入れ、整理し、理解していく。含み笑いはどんどん大きくなり、最終的には奇声を上げてしまう始末だ。

「うひゃーー!あーんな小さな町だけピンポイントのバイオテロだって!まさかのホントに一日で『ポンッ!』だぜ!?なーなーどう思うよパンテーラ、ってうおっ!?」

 鋭く風を切る音がしたかと思えば、彼の顔ギリギリを掠めて風車が飛んで行った。追撃に備えてクッションを盾にしながら投擲した少女・パンテーラの方を窺う。相変わらずの無表情かと思いきや、どことなく表情が柔らかい。そう見ることのない笑みの形を描く彼女の口元に気付き、彼も笑みを深めた。

「いーねいーね楽しそうねパンテーラ!奇野ちゃんの《最終課題》上手くいったみたいだし、ついでにライバルファミリーまで潰してもらっちゃって。一挙両得万々歳って感じ!」

 ピースピース!元気よく叫ぶ様子を微笑ましげに見守っていると、フロントからコールが入る。電話口で告げられた内容に、思ったより早かったなと思いつつ了承する。

「ロンシャン君、奇野さんたちがいらっしゃいましたよ!」
「おっマジで!?よっしゃ通しちゃって通しちゃって!あっ、奇野ちゃん紅茶好きっつってたから用意頼むわマングスタ!」
「了〜解です!」
「パンテーラも、奇野ちゃんと食べるって買い集めたお菓子、出さなくていいの?」
「!」

 私ことマングスタは、主であるロンシャン君の言葉に従い、簡易キッチンにて我々の友人たる客人のため美味しい紅茶を用意する。後ろからパンテーラがやってきて、奇野さんが好きだと言ってきた焼き菓子の詰め合わせをいそいそと準備し始めた。

「さあて、ようやく《種明かし》してもらえちゃうワケか――ワクワクすんな!」

 相変わらずの笑顔ながら、マフィアのボスらしい力を秘めた瞳をしたロンシャン君は、ノックもされないうちに扉の前へ向かう。ロンシャン君が開いた扉の外には、ルンガに伴われてやってきた少女・奇野真知さんと、闇医者にして天才殺し屋と呼ばれる男・Dr.シャマルが立っていた。



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