ジグノイド・ワールドエンド


「八重ッ!!!」
「ひ、じかた、さ――――!」

 完全に建物の崩落に巻き込まれた私の身体は、重力に伴って落ちていく。
 土方さんの後ろで底意地の悪そうな笑みを浮かべた研究員は、既に何とかいう機械のレバーに手をかけていた。
 見えはしなかったけれど、機械は起動されたのだろう。
 私の身体をこの世のものとは思えないほど眩しく明るい光が包み込む。
 彼らより遅く現場に辿り着いた私は、結局その機械が何だったのか知ることはなかった。
 けれど、こんなぞっとするほど美しい光景に包まれて、最期に愛した人の顔を見られて――少しは救いのある人生だった、そんな風に思いながら、全てを委ねて目を閉じた。


ジグノイド・ワールドエンド



 人生とは、そう上手くいくものではない。
 それを私は知っていたはずなのだが、まさかこんな展開を迎えるとは思いもしなかった。
 目を閉じ、意識を手放しつつあった私は、あまりに唐突すぎる衝撃に悲鳴を上げる暇もなかった。
 私の身体はいつの間にやら光の道を抜け、何故か――ばきばきと酷い音を立てて林へと落下していったのだ。

 枝にがりがりと身体を引っ掻けながら落ちる。必死で目を開け、落ちていく方向を一瞬視認すると、自分のいる位置は意外と高いことがわかった。
 無理矢理体勢を変え、太めの枝を足場に跳躍。
 ただ落下するのではなく、枝から枝へ飛び移りながら下を目指した。
 顔見知りの忍者ほど安定感のある動きではないが、なんとかなるものである。
 軽業師として研鑽を積まされた幼少時代を本気で有難がりながら、なんとか久方ぶりに地面に降り立ったのだった。

「あ、んた……!」

 声がした。酷く怨嗟の籠った低く唸るような女の声だ。それを向けられているのは、私?
 声の主を見る。

 そこには一時私達の世界を掻き回した、あの少女がいた。



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