青天の霹靂とばかりに狼狽えるなまえに、俺は本当に衝撃を受けた。

 よもや彼女が何も知らないなんて、考えてもみなかったのだ。

 実は彼女は味方になってくれたFBIや公安の特殊メンバーなのでは。
 彼らとは別ルートで組織の壊滅を目指すため、情報を集めていたのでは。
 はたまた飛躍して、未来予知の力でもあるのか、なんて考えていたくらいだ。

 そうだ。
 彼女は、あくまでただの小学生。
 幾分か他の児童より聡くとも、ただの少女なのだ。

「本当に、知らなかった、のか」
「…………だから言ったじゃない。知らないことだって、あるんだよ」

 いくらでもね。
 自嘲の色を孕んだ声で、静かに彼女は言った。

 俺は続ける言葉を見失う。
 『ようやく、工藤新一に戻るんだね』なんて言葉が、いつもの微笑みと共に、当たり前のように返ってくるものだとばかり思っていたんだから。
 事実は小説よりも奇なり。
 そんな言葉が脳裏を過る。――全くもって、笑えない。

 なまえは口元だけでも弧を描き、笑顔に似せていた表情を、次第に暗くしていく。
 そして最後には、一粒だけ涙が溢れ落ちた。
 自然と手が伸びて、伝う雫をそっと払う。
 するとはっとしたように、少々不格好ながら再び笑みを作ってなまえは口を開く。

「ごめんなさい、喜ばないとね。おめでとう、――工藤さん」

 その言葉は。その響きは。
 その名前で呼ばれることは、確かに求めていたもののはずだった。
 はず、なのに。

「どうして」
「…………え?」

 どうして、こんなに胸が苦しいんだ。

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