「この少年、沢田綱吉が――俺達のターゲットだ」
なんて写真を手にする大将の重々しいお言葉に、そんな大層な仕事だったろうか、なんて内心苦笑しつつ、仕事に巻き込まれることになったあの日のことを思い出す。
*
「やあ、人間失格」
「――よお、欠陥製品」
テキサスのハンバーガーショップにて再び邂逅した自分の対偶は、いつぞやと全く変わらないテンションだった。
向かいに座るかぱっと口を開けたまま対偶を眺める伊織ちゃんと、半笑いでコーラを啜る俺。どっちの隣に腰を下ろすべきか逡巡したらしい結果、俺の隣の椅子が引かれた。
「なんでお前がこんなところにいるんだ?」
「君達を探してほしいって言われたんだよ」
「『テキサスには行かねえ』って言ってたのたまたま思い出して来てみただけだってのに、よく分かったな」
「まあぼくも請負人の端くれだから、必死で伝手を辿ってね」
なんやかんや今の俺は伊織ちゃん――零崎舞織という新米の零崎を放っておくわけにもいかず、日本をふらふら外国をふらふらと一緒に放浪している根無し草状態だし、俺がこいつと連絡を取り合っているという事実もない。会う機会がそれなりにあった時期の携帯はぶっ壊れ、教えたかどうかすら定かでない連絡先もとうの昔に変わってしまっている。
そんな状況でよく見つけたもんだ、とポテトを摘まんだ。
「わー……聞いてはいましたが、ほんとになんかすごいですね。お二人とも」
「似てる?」
「似てるというかなんというか、うーん『すごい』って感じです」
「ぜんっぜん伝わんねえな、それ」
伊織ちゃんが俺達を見比べてそう言うのを適当に捌く。
まあ、すごいとは思うが。普通『こういう相手』は見つかるものじゃあない。
「で?」
「うん?」
勝手に俺のポテトを摘まむ対偶は、相変わらずどことなく淀んだ視線を向けてくる。
うん?じゃないだろ。言うことがあるだろ。
「結局何の用なんだよ」
「ああ。ちょっと仕事を頼まれてほしいんだけど」
「却下」
「あう」
マジかよーヤベえわーみたいなテンションで謎の擬音を発したが、こいつの表情はぴくりとも変わらなかった。その切り出し方で一体どう罷り間違ったら俺がOKすると思うんだ。
「ダメ?」
「ダメ」
「零崎にしか頼めないんだけど」
「俺はもう殺しはやんねーの」
「ぼくは殺しの仲介なんかしないけど」
「は?」
は?
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