可愛いものは愛でるものでしょう

(※アルばかりあると読み辛いと思いますので、劉の語尾は会話のときだけ出ることにします。たまにアルが入ってくるときもあります)


その人物と会ったのは合宿場所だった


ワタシの通う学校陽泉を含めた6校の学校が集まっていた


キセキの世代の主将だったという赤髪が合同合宿を行うと宣言してから実行されるのにそう時間はかからなかった


そこで一人の選手に目がいった


それはワタシのような高身長ではなく丁度福井くらいの大きさだった


キセキの世代のように目立つ風貌をしていないが、なぜか目線がそちらへ引き寄せられた


特に接点のない学校の選手になぜここまで惹かれるのか不思議に思ったが、その人物の弾けるような笑顔を見た瞬間心を鷲掴みにされたように感じ、疑問は全部吹っ飛んだ


…可愛いアル


この陽泉にはそんな癒しの存在がなく、いるのは大きい子供や色気垂れ流しの同級生、口の悪い小さい副主将にアゴリラだけだ


そんな存在ばかりの環境にいたせいであんなに真っ直ぐに笑顔を向けている存在にとても癒される


他校生でなおかつ全然接点のない癒しの対象と触れあえるのは今だけだ


そんなことを考えていると丁度相手が一人になった


そうなれば行動あるのみと思い、交流目的として近付いた


「こんにちはアル」


最初相手は自分が声をかけられたことに気付いていなかったのかキョロキョロと周りを見渡していた


そんな姿も可愛いアル


「こっちアル」


そうしてまた声をかけるとようやく気付いたようである


「あっ、えっとー…こんにちは?」


なぜ話しかけられたのか分からないという顔をしていた


当然の反応だろう。初対面で話しかけられると誰でもそういう反応になるだろう


「うーん…あれ?俺とあんたって会ったことあったっすか?」


「いや、初対面アル」


「やっぱ、そうだよなー…」


とりあえず自己紹介をしないと駄目だろうな


「ワタシは陽泉の劉偉アル。よろしくアル」


「俺は秀徳の高尾和成。よろしくなーって、年上?」


「2年アル」


「まじか。つかその語尾wwwアルってなんすかwwww」


どうやら笑いの沸点が低いようだ


「これは日本人は語尾にアルを付けるって教えてもらったアル」


「wwwえっwwww誰に?wwwwww」


「副主将の福井アル」


「ブフォwwwwwwその人wwwwまじうけるwwwwww」


そんなに面白かったのだろうか


目尻に涙が浮かんでいた


それにしてもコミュニケーションが高いようでもう打ち解けてきている


笑い過ぎではないかと思っているといきなり噎せたため背中を擦ってやった


「ゲホッwwwwうぇwwwありがとうwwwござい、ますっwwww」


「早く笑いを止めるアル」


その一言がいけなかったのか余計に笑いだした


「wwwwwwwwwwww」


仕方ないアル


「wwwwえ?」


相手を抱っこしてやると驚いたのだろう笑いが収まった


「え?え?何、つか高っ!!」


今度は暴れ始めたため大人しく下ろした


「ビックリしたー…」


「笑いが止まらないからやったアル」


「おっ!収まった。あざまーす!」


そう言ってあの笑顔を向けてきた


その笑顔を見た瞬間目の前にある頭を撫でていた


「え?…あ、あの!」


「何アルか?」


「いや、そのー…何で撫でられてるんでしょうか?って」


「可愛いからアル」


「へ?」


あぁ、その呆けた顔も可愛いアル


「癒されるアル」


「えっ、あの…あぅ」


戸惑いながらもワタシが先輩だからか、手を振り払わなかった


そのままワタシが満足するまで撫でていると目を閉じていた


「どうしたアルか?」


「ふぇ?あっ、なんか気持ちよくて…ずっと撫でててもらいたいなって、思って…」


そんな様子が可愛らしくとても癒された


「高尾」


「…んー?何すかー?」


「陽泉に来るアル。ワタシを癒してほしいアル」


「ん。…へ?今何て言いました?」


「陽泉に来るアル」


そう言いながら高尾をまた抱っこした


「ふみゃっ!」


猫みたいな声が聞こえたが今は高尾を陽泉の所へ連れて行かなければ


「しっかり捕まるアル」


「ちょっ、劉さん!?」


「走るアルよ」


「え!?ちょっ、怖い!高い!!」


高尾が耳元で騒いでいたが気にしている暇はなかった


走っているときも高尾はずっと騒いでいたが服をぎゅっと握って落ちないようにがんばっている姿は可愛かった


そうして陽泉メンバーのいる場所に着いた


「高尾を飼いたいアル!」


「元の場所に戻して来い!!」


着いた途端、福井の目線は高尾にいきその服装を見て答えてきた


その後高尾を探しに来た秀徳メンバーに文句を言われ一気に気分がガタ落ちした


そんなワタシの所に高尾がやって来た


他の秀徳メンバーは陽泉メンバーと各々話しているようだった


「あのー劉さん!」


「何アルか?」


「メルアド交換しませんか?」


そういって高尾は携帯をワタシの方へ差し出してきた


「する!するアル!!」


ワタシは飛びつくように携帯を取り出しメルアドを交換した


自分の携帯の画面に高尾という文字が浮かんでいるのを見て喜んでいると


「今日はビックリしたけど、面白かったです!そだ!パンダとか好きっすか?」


「可愛いから好きアルよ」


「俺も妹ちゃんいるから影響されたのか可愛いもの好きなんすよー!同じっすね」


「合宿中いっぱい話しましょーね!」


高尾はワタシの好きな笑顔を浮かべながら嬉しいことを言ってきてくれた


そんな高尾を思わず抱きしめた


また高尾がいないことに気付いた秀徳に引き剥がされたが、それでも高尾はワタシの方を見て笑っていた


そんな高尾のいる秀徳が羨ましく思ったのはワタシだけ秘密アル


(癒しを求めて350m)



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